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ずっとそばにいた僕の神様
ハッ、ハッ、と息を短く切らす音。それと同時に、ザッ、と地面の土や砂利が靴底と擦れる音。その音たちは、一人の少年によってどんどん上方へと連れ去られてゆく。周囲の美しい緑を広げる木々も、真上に広がる飲み込まれそうな青い空も、少年はお構いなしに上へ上へと走ってゆく。
彼がひたすらに目指している場所は、ただ一つ。
「着いた……っ!」
膝に手をつき、彼は叫ぶようにそう独り言ちた。そんな少年が立っている
許されざるあの人へ(前編)
「……そろそろ見回りでもするかな」
村紗はそう独り言ちてから、命蓮寺の縁側からぴょんと飛び降りる。普段はナズーリンが見回りを担当してくれているが、現在は星の宝塔を探しに出ていて留守だ。まったく仕方のないやつだ、後でナズーリンにめちゃくちゃ文句を言われることだろう。
真っ青な空が広がる下で、村紗は寺の内外の見回りを開始する。人間も妖怪も分け隔てなく受け入れるこの寺は、人(人間も妖怪もひっくるめて
許されざるあの人へ(後編)
「――ありがとう、小傘。いい時間になりました」
小傘の過去の話を聞いていた村紗は、横にいる小傘にそうお礼を伝えた。それに対して小傘は「いいえー」と答えたが、直後に「あれ?」という表情になる。
「話を聞いてもらったのは私だから、お礼を言うのは私の方なんじゃ……? あれ?」
「あはは。まぁ話させた発端は私にありますし、細かいことは気にしなくていいんじゃないですか」
「うーん……そっか、それならそうい
僕らはずっと子どものままで
――「16時に公園集合ね!」って約束してるのに! こんな日に限って先生のバカ!
そんな思いで少女は学校からの帰路を必死に走っていた。本来は二十分くらい前には家に帰れていたはずなのに、急遽先生に呼ばれて帰りが遅くなったのである。教室を出る頃には約束の十五分前。急いで帰ってランドセルを置かなければ遅刻は確定だった。
少女は校門を出るなり、数年間通ってすっかり慣れた道を順番に曲がってゆく。後ろに背
僕は道端の小石に話しかけている
ぼくには、ぼくだけに見えるおともだちがいる。
その子の名前はこいしちゃん。
どこから来たのかも、ふだんどこにいるのかもぼくは知らない。
だけど、ぼくがさびしい時にはいつもちゃんと来てくれるんだ。
*
とある一軒家の六畳間。そこにはおもちゃがたくさん並んでいる。その真ん中に座っている少年は、側にあったおもちゃを一つ取って遊び始めた。特に「これがいい!」といったものもないらしく、ある時
閉じ込めた日々を瘡蓋で綴じて
私には、忘れられない「ある出来事」がある。
それは今まで誰にも言えなくて、自分で思い出すことすら憚られる類のものだ。
意図せず思い出した時は辛かったし、忘れてしまいたいと心の底から思っていた。どうにかして過去の痛みを消せるなら、どんな方法にでも縋ったと思う。
だけどあれから大分時間が経った今では、その傷も少し癒えたのかもしれない。時間が解決してくれるという言葉は、ちょっとだけ本当なのかもし
満月の夜に灯火を(前編)
ここは幻想郷。外の世界で忘れ去られし者が集う場所。妖怪から神まで様々な種族が存在するこの世界だが、ここにも人間という種族は存在している。そんな幻想郷の人間は、主に人間の里で賑やかに暮らしている。
「……えー、じゃあ明日はこの宿題を提出すること! くれぐれも忘れないように!」
そんな里の一角にて、誰かが張りのある声でそう言っているのが聞こえてくる。ここは里の子どもたちが通う寺子屋。この寺子屋で教