邦題:ニンゲンスレイヤー・聖都炎上(原題:“ユースレス”・ザ・ゴブリン)
巣穴が。炎上している。
◆◆◆
私が生まれた時、兄弟達は笑い、燥ぎ、顔を顰めていた。
私は兄弟達から見て異形だった。
私の腕は兄弟達の様に器用に道具を使う事も、剣を持つ事も出来なかった。しかも兄弟より腕が二本多く、その二本はこの巣穴では何の役にも立たなかった。
だから私は“役立たず”と名付けられ、鎖で繋がれるのも、食事が兄弟の残飯で有ることも当然だと思った。
ただ私にも兄弟より長けているモノが一つだけあった。
魔法だ。
巣穴にも魔導師の兄弟は居たが、私のソレは詠唱すら必要なかった。
いつしか私は兄弟達より大きく育っていた。
群れの略奪してきた財宝を守護るのが私の仕事だ。
私はこれらを見ていると心の平穏を感じた。
◆◆◆
ある日巣穴が騒がしくなった。
ヒトの集団が攻め込んで来たのだ。
…奴らは私の部屋まで辿り着いた。おそらく多くの兄弟の屍を越えて。
「…!? 何故ゴブリンの巣穴にドラゴンが!!!」
灰になる直前、ヒトはそう言った気がした。
【続く】