わかっちゃいるけど…なアドバイスは俺らに響かない
同期隊員のKは定期的に「英語が…言いたいことが言えねぇ…」と嘆く。
ぼくは冷たい人間だから、半ばネタのように思っているんだけれど、だんだん本気度が上がってきているような気もする。
彼は自動車整備の先生として専門学校に派遣されているんだけれど、熱心な生徒からの質問に満足に答えてあげられないのが申し訳ないのだそうだ。
もっともな理由だ。
何度目も「どうやって英語べんきょうしたんですか?」とぼくにもAさん(栄養士)にも、たぶんT(コミュニテ開発)にもしている。
今日はKの切実さが通じたのかAさんが「あたしの場合はね…」と長々と彼女の英語学習の歴史を語り始めた。
もともと英語が得意であったこと、青年海外協力隊に応募する前にワーホリ含めてカナダで2年間住んで、一生懸命文法の勉強をやったこと、できるようになることに近道はないこと、それでもまだイディオムはわからないものがあること等、至極まっとうなことを言っていた。
圧倒的に正しい。
誰しもが知ってる。
できるようになるなら勉強しなさい、基礎である文法をしっかりやりなさい…。
でも悲しいかなぁ、Kが求めているのはそういうことじゃない。
そういう当たり前のことはわかってる。Kだって何度も同じ回答を聞いてきたはずだ。
それでも同じ質問を何度も、場合によっては同じ人に繰り返しするのは、王道じゃない別のルート - 人によってはそれを ” 近道 ” と呼ぶもの ーを求めているということだ。
王道の当たり前のルートは、Kにとっては苦難の道のりだと彼は感じているわけだ。
わかりやすくいうとアレだ。
ダイエットに成功した人にその方法を聞いたら「摂取カロリーより消費カロリーを増やす、間食しない、お酒飲まない、脂質の量を減らす、野菜をバランスよく食べる、8時間寝る」みたいな回答がくるやつ。みんな知ってる。
わかっちゃいるけど…なやつ。
それができれば悩んでないし太ってねぇよ、ばーか。
当たり前のことが当たり前にできる人っていうのは自分たちが想像する以上に少ない。みんな近道を求めている。だから毎年のように「〇〇するだけダイエット!」がでてきて消えていく。
できる人にはできない人の気持ちがわからないから、同じ回答ばかりを繰り返す。いつまで経っても分かり合えず、溝は深まる…。
ぼくもどちらかというと、できない側の人間だからその気持ちはわかる。(なんどもダイエットに成功しているけど、なんども成功してるってことは何度も太っているということだ)
当然、Kの気持ちもわかる。ぼくだってそんなに流暢じゃないし、文法の勉強をしないといけないのにこっちに来てから1ページも開いていない(クソ重たいのを3冊も持ってきたのに!)
だから、ぼくは彼に聞かれる度に彼の成長をさりげなく褒め、彼ができること(洋画を観るなど)をすすめ…とポジティブなフィードバックを繰り返している。
ぼくらのような人間は、決してやる気がないわけではない。
やる気はある、意欲もある、けどできない。
できる人からすると、きっと理解できないだろうけれど、MOOCを利用したオンライン講座の修了率が5.5%なのも同じような理由があるんじゃないかと思う(出典:HarvardX and MITx:Four Years of Open Online Courses Fall 2012-Summer 2016)
思うに、最初取り組み始める前の重い腰を上げるブースターと継続するためのブースターが足りないのではないかと思う。
人によっては、悔しい思いをしたから云々という経験がブースターになって一気にいける。見返したいというエネルギー。
これを抽象化すると、やる気がでる仕組みを作ってあげれば人は動くんじゃないかと思うわけだ。
ただ、やる気がでる要因というのは、対象ができない人では標準化が難しいんじゃないかと思う。
ぼくの場合でいうと、基本が呑気で「なんとかなるんじゃないか、別に怒られても死ぬわけじゃないし」というどうしようもなくダメな方に秀でた性格をしているから、なにかしら危機感を煽る方法は効く。だから夏休みの宿題も8月25日過ぎたあたりから取り組むやる気がでてくる。けど、その年にそれが上手くいくと、次の年は「去年が25日まで何もしなくてよかったから、今年は30日まで大丈夫だと思う」という謎の自信が生まれてしまう。
Kの場合はどうだろう、なにが効くのかはまだよくわからない。Kは提出してくだいと言われた書類はきちんと期限内に作れる人だ。(出せと言われるまで作りもしないぼくは大違いだ)
とりあえず、彼の中での文法とか英語学習のハードルの高さを心理的に下げるために、映画をいっぱいみて、気になったフレーズをモノマネすればいいんじゃないかと、何気ないところから、勉強と思わせないレベルのところから英語に慣れさせて、徐々に負荷をかけていく方向が良いんじゃないかと本人に伝えているんだけれど。
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こんなことを言うと、お前は悪い奴だなと思われるけれど、Kは心が綺麗からいろんなことに影響されやすい人なんじゃないかという仮説をぼくは持っている。
それを検証するために、彼の前ではキツめの関西弁をわざと使って沖縄出身のKに関西弁を埋め込もうとしている。
それがようやく日の目をみたのが上のスクショ。
関西人であるぼくは「知らんけど」を多用してすごいてきとーなことを言うのだけど、Kも見事に「知らんけど」を使うようになった。
なんでやねんを聞ける日も近い。
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