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途上国と先進国の差はなんですか?

ちょくちょく協力隊の出前講座というものに行かせてもらっている。

出前講座というのは、主に学校の依頼を受けて、学校に訪問したりして協力隊の体験談を授業1コマ分ほど語り、学生のみなさんには異文化理解を促したり、SDGsや社会課題や国際協力に興味を持ってもらおうとする取り組みで、任期が終わったりして帰国してきた隊員に声がかかる。

ぼくの話は基本的に難しいとよく言われるし、社会人ウケは良いんだけど働いた経験のない人たちにはいまいちピンと来ないらしくって(そもそも資料を使いまわしてるのがなんとも…)、なかなか苦労しながら、最近の10代はどんなことに興味あるのかを探りながら(ぼくの目的はこれで、今の若い子たちがどんな考えを持っていて何に興味があるのか感覚的に知りたい)、スライドを入れ替えたり新しく作ったりしながら、最適解を探してる。

自分が学生のときは、おもしろくない人の話は容赦なく寝ていたりしたんだけど、同じことを自分がやられると結構ヘコむ。あぁ、ぼくの話おもしろくないのか…って。

余談はさておき、本題。タイトルの通り。

ぼくはインタラクティブな方が良いので、オーディエンスの反応を見ながら話す内容は変えるし、質問を気軽にしてもらって座持ちさせようとしてるんだけど、なかには鋭い質問をする子もいて回答に窮してしまう。

今日のタイトルはその典型でうまく答えられなかったので、そのリベンジをこのnoteでしておきたい。

ぼく的には、この「途上国と先進国の違いはなんですか?」という質問は嬉しかった。

このときのプレゼンでぼくは自分のセントビンセントで住んでいた部屋をスライドで見せていて、驚きと羨望の反応をありありと感じていたから。

この時の生徒は事前に国際問題とか経済格差、貧困について学んでいて、「途上国=貧しい」という先入観があったように思う。

件の質問は、その先入観に疑義が生じたから発露したんじゃないかと思う。

だから余計に、うまく答えることができなかったのが悔やまれる。

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ぼくが思う「途上国と先進国の差」というのは、選択肢の多さではないかと思う。多くを望まないとか、その土地にあるものが、欲しかったもののすべてだから他のことはいらない、というのであれば問題ないけれど、先進国で、ネットで注文すればなんでもすぐ届くという環境が当たり前だと思っている人には、想像する以上にしんどいことではないかと思う。

簡単なイメージとして、先進国での生活があらゆる面でそこそこだとすると、途上国ではそんなバランスよくパラメータが整っていない。自然が豊かですばらしい!けどインフラ最悪…みたいな。

前提として、過去30年で世界は劇的に改善してる。極度の貧困は半減したし、乳幼児死亡率も大きく低下、長く外国の援助に頼っていた国も自立し始めている。それはファクトフルネスなどの本を読めば書いてる。

けれど、局所的には、例えばイエメンやアフリカの一部などでは主に紛争起因でかなり苦しい状況が続いていたりする。

まだまだ課題は多いけれど、着実に前には進んでいるわけです。紛争や災害がない限り。それに途上国にもお金持ちの人たちというのはいて、その人たちはなんだったらぼくたちよりはるかに良い生活を送っていたりする。

ということを踏まえて、途上国でも生活の質は劇的に改善してきてる。たいてい、鶏肉なら、冷凍であれば手に入ると思う。調味料も、日本人が住んでないところでも醤油が手に入ったりする。スーパーで売ってたりする。もちろん、お金払えば結構安定したWi-Fiが手に入る。

だから、たぶん、暮らそうと思えば暮らせると思う。

けど、選択肢が少ないというのは、例えば、新しいスマホ欲しいとかラップトップ欲しいとかってなったら型落ちのものしか売ってないし、それも日本の倍の価格だったりする。あるいは恐ろしく低スペックのデバイス。

切れ味の悪い包丁とか、なぜかガタガタするまな板とか。とにかく良いものをそろえようとしても徒労に終わることが多い。高いのにクソみたいなクオリティか、安くてクソみたいなのとか。そんなのばっかり。

日本なら、今日は何食べようかな、○○のイタリアン行こうか、寿司行こうか、たまにはインドカレーもいいんじゃない?とか選択肢があるけれど、途上国の場合はそれがない。ローカル料理+よくて中華レストランくらい。

教育にしたって、ほんとに限られた人しか大学に行けない。それも奨学金(無返済)を得て。だから大学に行けるのは奨学金獲得できた少数の優等生か、金持ちの子供だけだったりする。ぼくらなら、高校までそこそこ勉強してれば大学に行ける(どのランクとか、返済ありの奨学金≒学生ローンはあるけれど)。

ぼくだって、そんなに優秀じゃないけれど、それなりに勉強しただけで大学に進学できたし、今度はなんど海外の大学院に行こうとしてる。こんなこと、途上国の普通の家庭に生まれたらできなかったろうと思う。もちろん海外旅行はおろか、国内旅行もほとんどできなかったろうと思う。

そして、進学するっては要するに、良い仕事にありつくためなんだけど、途上国の場合、進学してもそもそも労働市場があってないようなものだったりする。大学出ても仕事がないとか、専門学校でても仕事がないとか。

日本でも同じじゃんと思うだろうけれど、日本だとたぶん9割くらいは就職できるんじゃないかと思うけれど、途上国なら半分くらいじゃないかと思ったりする(かなり主観的で申し訳ないが…)。たとえば、ぼくがいたセントビンセントで、自動車整備の専門学校があるんだけど、卒業後すぐ就職できるのは良くて4割とかそんなレベル。20代の失業率は25%とかそんな感じだった。

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そして、政府の車の修理依頼して修理完了でもこんなレベル。冗談ではなくほんとに。うかうか事故できない。

あと、医療。

たとえば、日本なら肺炎って死ぬ病気じゃないと思う(高齢者の死因としては多いが)。けど、途上国なら特に低所得国なら子供の主な死因になっている。新生児の死因の3分の1が肺炎と言われている。しかもこの半分の肺炎はワクチンで予防可能だったりする。言い換えれば、先進国に生まれてさえいれば亡くなることはなかった可能性が高い。

実際、ぼくがセントビンセントにいたときでも40歳くらいの現地の知人が肺炎で亡くなった。ほんの数日前にいっしょにお酒を飲んで「明日から検査入院なんだよね、たいしたことないと思うけど」と言っていたのに。

日本に住んでいると、人間ってなかなか死なないんだなと感じると思うんだけれど、途上国にいると、想像以上に簡単に人が亡くなっていくので驚く。

あとはなんだろう。ビザだろうか。

ぼくら日本含む先進国の人間が持ってるパスポートは信用度が高いからたいていの国にビザなしで旅行できるし、ビザ申請しないといけないような国でも1週間とかその程度でビザが手に入る。

けれど、途上国に住む彼らは、例えば先進国に旅行しようとすると数か月前から申請しないといけなかったり、それも許可が下りるかどうかわからなかったりする。これは、もちろんその国に、そこの国民に信用がないから(不法移民になるんじゃないかとか)なんだけど、そうやって途上国の人は基本的に先進国で常に疑われることになる。

長々と書いてきたけれど、やっぱりあんまりうまく説明できないな…。

※いまどきの途上国でも首都や商業都市であれば、先進国並みにいろんなものが手に入ったりするけれど、それはあくまで外国人や富裕層向けの価格だったりして、現地の平均的な人が行けるようなレベルで選択肢があるとは言えないんじゃないかと思う。

※異論は認めます。途上国とか先進国って主語が大きいし、それぞれの国や都市によって文化や経済状況などは異なるので。


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