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鳴り響いた鈍い銃声!嫌な予感が胸をよぎる!冷静になれよ、ミ・アミーゴ

朝7時過ぎくらいだったかな、そろそろ朝ごはん食べようかもう少しベッドに吸い込まれたままでいようかうだうだやってる時間だった。

バーンッッ!!

デカい音がした。なにかが爆発したみたいな。

そして、堰を切ったように閑静な住宅街にガヤガヤと人の声が溢れた。

銃声にしてはかなり大きかった。近いところならありえるけれど、この国での発砲ってギャング同士の抗争だし特定地区に限るはずだから、このあたりでするわけがない。だいたいギャングの抗争は夜だと決まっている。それに、いつも聞こえるのはパーンという乾いた破裂音のようなものだから、今回のそれは銃声っぽくなかった。少なくともハンドガンの音ではなかった。

ガス爆発?それにしては規模が小さい気がする。パンクにしては音が大きすぎる。嫌な音だ。思い当たるフシがない。

でもどこかで聞いたことあるような気がしないでもない。

外の話声も数分で消えて、もとの閑静な住宅街の朝に戻った。

銃声のような大きな音はその1発だけだったし、外の声も言い争いというより野次馬のそれだった。

切羽詰まった状況の雰囲気をぼくは感じることができなかったので、ぼくもすぐに日常に、気怠い週末の朝に戻った。

昼過ぎ、外を歩いてるとダレンとエミリー(ご近所の若いカナダ人夫妻)に声をかけられた。

ダレン「やぁ、今朝の銃声は聞いたかい?」

ぼく「あれ銃声だったんだ、あの大きなやつ。なにか爆発したのかと思った」

ダ「ははは。あれ実は、俺の叔父さんなんだよ。誰も撃ってないけどね」

え?

どういうこと?しょうもない冗談?なら笑うべき?それとも聞き間違い?なんて思いながら、ぽかーんとしてると、

エミリー「ほら、今朝、泥棒騒ぎがあったでしょ。わたしたちも詳しくは知らないけれど、このあたりをうろついてるって話だったの」

それは知らなかった。ぼくが思っていたより事態は深刻だったようだ。

ダ「そう、それで、叔父が威嚇のためにぶっ放したのさ。だから誰も撃ってないってわけさ」

なるほどね、やたら大きく聞こえたのは発砲場所が我が家の隣だったからかー、納得した。そういえば、どこかで聞いたことあるような音だなって思ってたけど、あれだ。ショットガンというか散弾銃だな。

これは田舎あるあるだけれど、田舎の田畑ってイノシシなんかの害獣から作物守るために電気柵で囲ったり、感知式か時間式かなにかの散弾銃の発砲音鳴らすじゃない。あの音だ。間違いないと思う。

これで疑問はすべて解決したわー、よかった、よかった。



ってならんよ。

いやいや隣人が銃持ってるってどういうことやねん。

しかも撃ってるし。

銃社会だったなんて聞いてないわー。

その前の泥棒がどうのとかよりよっぽど大事な問題やわ。

それってつまりは、夜中とかでも怪しい物音が聞こえたら隣人の叔父さんは発砲しますよということやん?自衛のためにね。

そりゃあね、警察は頼りないかもしれんよ。いつ来るかわからんし。護身用に銃を持つというのは合理的な判断でしょうよ。

でもやね、なにかの間違いでぼくが撃たれる可能性もあるわけじゃない。

例えば、ぼくが窓全開の部屋のスピーカーでかけるJ-popがうるさいとか、なんだで不満が蓄積されてるかもしれないわけじゃない。どうするよ、ある日突然、「もう我慢ならん!」とかってキレて散弾銃片手にやってきたら?身に覚えがなさすぎてびっくりするやん、ぼく。まあどんな人か知らんけど。

そうじゃなくてもやで、ぼくだってたまには夜遅くに帰ることもあるわけじゃない。街灯なんてないから、月明かりがなければほぼ真っ暗なわけ。

でね、そのお隣りさんはトーキョーっていう頭の悪い犬を飼ってるわけ。

ぼくめっちゃ吠えられるわけ。2月からもう何回も顔合わせてるはずなのに。

それがうざくて、ぼくは犬に吠えられないように少し遠回りして自分の家の敷地に入るわけ。

ね、わかるかな。

それまではさ、心に余裕があればそのトーキョーをからかいながら自分の部屋に入っとったんや。お前はほんまにアホやのうと思いながらな。

でもね、もうそんなこともできないわけ。

ルールが変わっちゃったから。いや正確にはとんでもないルールの存在を知ってしまったから。

どうするよ、夜11時くらいにぼくが帰宅してトーキョーがそれに合わせて吠えたら。追いかけてきたら。

家主としてどう思うよ。やっぱり何かおかしなことが起こってると思うやろ。様子を伺いに行くやん。With ショットガンで!

隣人に気を使いながら生活せなあかんやん。

だって、信じられるか?持ってるだけちゃうんやで?撃つんやで、撃ったんやで、そいつ。

そうじゃなくてもさ、実はみんな銃持っとるかもしれん疑惑もでてくるやん。

娯楽用は違法なはずのマリファナも事実上黙認されとるくらい大通りで喫っとるし。銃だって、そういう立ち位置なのかもしれへんやん。みんな言わんだけでさ。

だいたいどうやってカナダ人は銃を仕入れたのよって話やで。ほんまに正規ルートか?そんなもんあるか?って思うわけよ。日本なら狩猟用で免許あればって話やけど、この国狩猟用ってことはないだろうよ。野生の哺乳類なんて野良犬、野良猫以外だとアルマジロ(この国の人は食べます)ぐらいやないか。

やっぱそのあたり治安の悪いカリブなのかなぁ、先日、日本の大使館のあるトリニダード・トバゴの刑務所で脱獄があって8人くらい逃げてたし、JICA事務所のあるセントルシアでは首都のレストランで拳銃強盗があったりで、なんだかんだでたびレジメールが届くし。

もっと治安悪いとこはあるだろうけど、最初聞いてた話と違うことがでてくるって結構しんどいやん。

だって、訓練所のセキュリティ担当のおじさんが、セントビンセントは大丈夫、何も憂うことはないよ、生きて帰ってこれますって言ってたのを信用してたんだよ。

それがどうだよ、着いてみたら沖合でベネズエラ産の銃の取引が行われて結構安く入ってきてるというしさ、きな臭い話ばっかりやないか。

最初から治安はそんなに良くないです、みたいな話だったらその覚悟で来るから全然ええねん。けどな、建物の3階とかでも窓空いてたら泥棒は壁を登ってやってくるよ、来たよ、みたいな話を聞くと、なんだろうな、何の覚悟もないからだろうな、現実感がなくてね、笑っちゃうわけだよ。

何が起こるかわからん感じがほんまおもろいわ。




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