マガジンのカバー画像

noteの宝物

37
記事を話題にしていただいたあの喜びを再び✨忘れてはいけない感謝の気持ちをアーカイブに☺︎…でも思い出しながら遡るので、漏れていたらご容赦くださいませ汗
運営しているクリエイター

#生命

連載SF小説『少年トマと氷の惑星』Ⅸ.再生(最終話)

連載SF小説『少年トマと氷の惑星』Ⅸ.再生(最終話)

Ⅸ.再生

 まだトマが暖炉の側ですやすやと眠っている中、旅立つカイムを見送るためにティエラは小屋の外に出てきた。

「お前さんの魂は、連れてかなくていいんだな?」
「ええ。可愛いトマがいるもの。命が尽きるまで、あの子といるわ」
 ティエラは、カイムに向かってにっこりと微笑んだ。

「そうかい。俺がここからいなくなれば、トマの『鍵』も外れて、すぐに大人になるだろう。きっと、これからも延々とお前さ

もっとみる
連載SF小説『少年トマと氷の惑星』Ⅷ.夜更け

連載SF小説『少年トマと氷の惑星』Ⅷ.夜更け

Ⅷ.夜更け

 トマが泣き疲れて深い眠りについた頃、ティエラとカイムは食卓につき、向かあって座っている。
 ふたりは、声を潜めてゆっくりと話し始めた。

「ティエラ、お前さんは、あとどれくらい生きられそうなんだ。あいつに会って、『鍵』を外してもらったんだろう?」
 カイムにそう言われ、ティエラは口に含もうとしたホットミルクの入ったカップをテーブルに置く。

「カイムは、何でも知っているのね。私

もっとみる
連載SF小説『少年トマと氷の惑星』Ⅶ.トマの願望

連載SF小説『少年トマと氷の惑星』Ⅶ.トマの願望

Ⅶ.トマの願望

 あれから、半年が経とうとしている。
 トマは、空を流れる星々を目で追うこともなく、ただただ毎日、地平線を黙って眺めるようになった。

「どうしたんだ、トマ。今日のスープをまだ食べてないじゃないか」
 すっかり口数が減ったのを心配して、カイムは窓辺のトマの元にやって来た。

「カイム、僕は待ってるんだ。また、この惑星が緑の記憶を思い出すんじゃないかって。あの暖かい世界に、僕は

もっとみる