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密室から黒猫を取り出す方法|感想・レビュー|★3.0

読了したので、軽く感想です。

概要

北山猛邦氏によるライトな短編ミステリ『踊るジョーカー 名探偵音野順の事件簿』の2作目です。

来年には3作目が数年ぶりに出版されるとかどうとかで、その流れがあって本作も文庫化されたのかもしれません(文庫化は2021/1/29)。

引き続き、気弱な名探偵である音野順が事件を解決するというのがメインストーリーになっており、前作と同様に5作の短編が収録されています。

  • 密室から黒猫を取り出す方法

  • 人喰いテレビ

  • 音楽は凶器じゃない

  • 停電から夜明けまで

  • クローズド・キャンドル

昔読んだことがあった!

1つめの話『密室から黒猫を取り出す方法』のトリックが明かされたタイミングで、ずっと昔に単行本で読んでいたことを思い出しました(笑)。

なんか表紙の雰囲気が少し違ったので、まだ読んでいないと勘違いして買ってしまいました(単行本の時はもっとシンプルだったような記憶です……青と白と黒の3色くらいの構成の)。

まぁしかし、読み進めてもトリックを全然思い出さないので、結局最後まで読むことにしました。

前作よりも厳しめなトリック

北山猛邦氏のミステリ小説について、個人的にはアニメ……というか名探偵コナンのトリックのような、”現実的には厳しいトリックでもわりと成立しちゃう世界観”として読み進めるのですが、それでも本作はわりと厳しいものが多かったように感じます。

”ネタとしては面白いけれど、流石に無理がありすぎない?”

と感じる話が多かったように思います。

そのためか、トリックが明かされても「なるほど!」と素直に感嘆することができず、「あー、なるほどね」みたいにちょっと冷めた感じになってしまいました。

キャラクター劇

キャラクター達は前回と同じように描かれていた為、前作に登場したキャラクター達が気に入った人は本作も大丈夫かと思います。

  • 気弱な名探偵である音野順

  • ワトソン役の私

  • 傲慢な警部

  • 明晰な音野順の兄

読んでいて楽しいキャラクターが描かれていると思います。

気に入った話

個人的には表題作の『密室から黒猫を取り出す方法』が一番気に入ったかもしれません。

完璧な密室を作り上げようとしていたのに、ドアを締める直前に隙間から黒猫が入ってしまい、その結果としてトリックの証拠を残してしまう……いやはや、設定からして面白い話だと思います。

そして、被害者が猫アレルギーであるため部屋に猫がいるのは不自然だという理由からなんとかしようとする犯人。そして、部屋からいつの間にか脱出している黒猫。うーん、ミステリしてます。

他だと『停電から夜明けまで』もコメディのような雰囲気もあって面白かったです。

総評

再読にも関わらず、ほとんど話を覚えていなかったこともあって、やはり個人的にあまり刺さらなかったミステリ短編だったかもしれません。決して面白くないわけではないのですけれどね……。

個人的には前作の『踊るジョーカー』のほうがミステリ短編としては面白かったという印象です。そのため前作は★3.5としていましたが、本作については★3.0としました。

前作に登場したキャラクター達が気に入った方であれば、もっと評価は高くなるかも知れません。

他のおすすめ短編

本格なミステリとは少しずれますが、北山猛邦氏の短編では以下の2冊が気に入っています。

北山猛邦氏は”物理の北山”という異名を持つくらいに物理トリックの名手として知られていますが、個人的には幻想的な世界観を描き出すのも得意な作家だと感じています。

この2作は著者の(広義の)ミステリとしての側面と、そうした幻想的な世界観の両方を味わえる短編小説だと感じており、個人的にはわりと推したい短編小説です。

なお、とくに話のつながりは無いので、気に入ったほうから読めますが、個人的には『千年図書館』のほうがおすすめ度が高いです。

あとがき

少年検閲官シリーズの続編(3作目)はもう出ないのかなあ……

―了―


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