③いざパリへ
その後もう一人の女性が加わり、年齢バラバラ謎の女4人衆が出来上がったところで私の出国時間が迫る。あとの皆は全員マルタへということなのでここでお別れとなった。最初の2人とは連絡先を交換していた。年上のお姉さんは一人で行く私のことがよっぽど心配らしく、今夜の宿に着いたら連絡することを強引に約束させられた。させられた、と言ったが内心はとてもとても嬉しかった。どのような場面でも自分を心配してくれる人がいて、連絡を送ってと言ってくれる人がいるのは、幸せなことである。
つかの間のグループ活動を終え一人になると、やはりどうしても寂しい。下がり気味な気持ちと一緒に出発口を探し、いざパリへと旅立った。
午前10時、無事パリの空港に到着。目指すは約800㎞離れたバイヨンヌという町である。バックパッカー初心者の私は、1日でどこまで行けるのかまるで予想ができなかったため(空港での入国審査等で要する時間が見えなかったので)宿の予約もしていなかった。空港では思いのほかすんなりと解放され、とりあえずバイヨンヌ行きの国鉄SNCFがでているモンパルナス駅を目指す。大きすぎる空港で迷う時間ロスを避けたいので案内係の女性に声をかける。拙い英語で話しかけるが返ってくるのはフランス語。ほとんど理解できなかった。何とか青色ラインの電車に乗り5つ目の駅で降りるということだけは分かった。お礼を言い、ホームへ。電車内でも本当にこれであっているのか不安になり、乗客のお兄さんに声をかけたが、少々うっとおしそうだった。へこたれず5番目と思わしい駅で降りる。かなり小さな駅で声をかけられそうな人もいなかったので、とりあえず明るい方へ。地上にあがった。駅とは打って変わって、パリらしい建物と足早に歩く人、人。150㎝の22歳が30Lのバックパックを背負って歩く姿は目立つようで、視線が少しだけ恥ずかしかった。そしてついに、完全なる迷子になってしまった。オフラインでも使える地図アプリで事前に主要な所はチェックしていたし、現在地も分かるのだが迷子。距離感が上手くつかめず徒歩だとしても行き方が全く分からなかった。もしかしたら軽くパニックだったのかもしれない。ただ昔から行動力と直感にだけは自信がある私。何となくの方角だけを頼りに歩くこと15分。なんと、目的のモンパルナス駅に到着したのである。これは本当に運が良かった。これに尽きるとしみじみ思う。ここまで何も指針がない中、行動だけでどうにかなったことは後にも先にもない。しかしこの時しっかりと、私の胸に
事前準備
という2つ目の掟が刻まれたのだった。