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変異体

君は変わり者だねって
何回言われたか覚えてないや
そうだよ 僕は変わり者だ
僕でさえ不可解な生き物だ

君は変わり者だねという反応は
良い意味と悪い意味があると知った
良いほうの意味ばかり信じて笑ったな
脆い白骨を誤魔化すように

僕はふつうに生きられない
何がふつうかわからない
何が善で 何が悪か定まらない
だから大人になれないまま
秋が深まってしまったんだ

人間のレースに出遅れた
みんなの成長が速すぎて
いつも眩しい夕陽を羨んだ
独り臙脂色の部屋に籠って
名前さえ知らない膿の言葉が
夜に溶けて暴れ出したから

覚えているのは孤独な音楽ミュージック
伴奏者もいない 観客もいない
寒さや段差だらけの舞台裏で
ひとつ浮かんだ歌詞を叫んでいく

変わり者の文学的な変異体ミュータント
現実と まぼろしを往復する
挫折や勘違いだらけの世界で
ひとつ愛した物語を紡いでいく

君は変わり者だねって
何回言われたか覚えてないや
そうか 僕は変わり者か
じゃあ貴方の海辺は正しいのだね

大人になれない僕は変わり者か
教科書には一言も書いてないのに
どうしてみんな大人になれるんだ
いつから大人の感覚に慣れたんだ

大人になるって何なんだ
余裕で酒を飲めること
器用に車を運転できること
恋人と裸で眠ること
お金のために夢を断てること

それが大人になることだって
あの世間は背中で冷たく教えたから
そんなことだけで満足するために
僕は大人になりたくないんだよ
愛も時間も 運命もたましいも
浪費するなんて御免だから

足掻き始めたのは鼓動の音楽ミュージック
指揮者もいない 楽譜もない
後悔や間違いだらけの人生に
ひとつ信じた本音を奏でていく

変わり者の文学的な変異体ミュータント
南北にも 東西にもいない
妄想や懊悩だらけの脳髄で
ひとつ産まれた虚像を抱きしめる

君は変わり者だねって
何回言われたって構わないよ
哀の歌に涙せず 愛の花さえ枯らす
薄い大人ばかり目撃したものだから

でも奇跡のように面白いと思えた大人達は
瞳の奥に宝石を宿していたから
大人にも色々あるんだな
だからもう僕は迷いたくないんだ

みだれ狂う波動の音楽ミュージック
影もない かたちもない
正解や不正解に悩む人々と
ひとつ共有した記憶を奏でたい

変わり者の文学的な変異体ミュータント
子どもと 大人を往復する
境界線に抗いつづける人々と
ひとつ創った物語を邪魔しないでくれ





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