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2019年11月の記事一覧
case01-19 :発見
狩尾の家を後にする。
かなりの時間、狩尾の母の愚痴に費やされはした。その中で聞き出せた有益な内容としては、月に数回週末こどもに会いに来ていることからそれほど親子関係は悪くない程度であった。狩尾からこどもへは一定の愛情があるように感じる。
しかしそれを見込んで毎週末家を張り込むことも現実的に難しいし、失うコストも大きすぎる。
ただ狩尾が現れる可能性が高い日を選ぶのは容易だった。今は
case01-20 :確保
着いた駅は、最初に出会った大井町駅であった。
なるほど、ここに別宅があるのか。
初めて会った際は、お互いのアクセスの関係で大井町になったと考えていた。実際は単純に別宅の近くだったということだ。
東口を抜けたあと、狩尾は迷いなくスタスタと歩いていった。紺色のスーツにヒールを履いた始業式用の後ろ姿は、ちょっとしたOL風にも見える。時間にして15分程度だろうか。既に位置関係としては青物横丁駅に近い場
case01-21 :覚悟
「え、なに、なんで」
混乱する狩尾の顔を見ながらドアに手をかける。
「探したよ狩尾さん、また面白いところにいるんだね」
グレーのパジャマ姿の狩尾が、思わず後ろを振り向き彼氏を確認する。
少し大きな声をあげれば届いてしまう程度の広さ…ワンルームに毛が生えた程度というところか。玄関から延びる廊下からリビングへ繋がる扉は閉まっており、中からは何かのバラエティ番組から流れてくる下卑た笑い声が漏れている