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ジュニアアスリートの指導で押さえるべき3つの体の特性とは?

はじめに

「この選手はすぐ肘が痛いと言うのですが、痛みに弱いのですか?」
「たくさんボールを投げていないのに、肩に痛みが出るとはどういうことですか?」

これまでにジュニアアスリートの指導に携わる方や保護者から多く頂いた質問の一部です。成長期の体の特性をしっかり理解した上で、ジュニアアスリートの指導に携わることがとても重要です。

しかし現状は成長期の体に対する理解が乏しく、痛みを我慢して競技を続けさせていたり、いつの間にか症状が重症化したりするケースが少なくありません。

子どもは大人の縮小版ではなく、成長の段階に応じて指導する必要があります。今日はケガをしない体作りをテーマに、指導者や保護者の方々にもぜひ知ってほしい成長期の体の特性について書きます。

成長期の体の特性について

1.骨端線

子どもの骨には、「骨端線」と呼ばれる成長軟骨層があり、骨端部に存在します。骨端線が閉じて大人の骨になるまではその成長軟骨層が1番弱い部分となるため、負担がかかりやすいとされています。

特に12歳までの学童期では骨端の障害が多く、靭帯損傷や肉離れなどの軟部組織の障害がほとんどないのは「成長軟骨」の存在があるためです。繰り返し行われるスポーツ動作によって負担がかかりすぎないよう、筋肉の柔軟性を上げたり、正しい体の使い方を習得したりすることが重要です。

また人によって骨端線が閉じる時期が多少異なります。子どもの成長は個人差が大きく、体格や年齢だけで判断できないことが多いため、骨端線の状態で大人の体にどれくらい近づいているか?を判断することが必要になります。

2.筋肉の柔軟性<骨の成長

成長期は骨の成長が著しく、筋肉がとても硬くなりやすいです。筋肉が硬い状態で骨が伸びると、骨端部に付く筋肉に強い張力が加わるため、骨端部の成長軟骨層に負担をかけてしまい、炎症を起こしやすくなります。

成長期によく起こる代表的な障害として、

野球肘(肘の内側が痛くなる)
シーバー病(踵の骨端障害)
オスグッド・シュラッター病(膝の前面にある脛骨粗面の骨端障害)

といったものが挙げられ、繰り返し行われるスポーツ動作が原因で起こります。

どの障害も共通して、「予防」が大事となります。ストレッチで筋肉を柔らかくしたり、特定の箇所ばかりに負担がかからないように股関節や肩甲骨の動きを柔軟にしたりすることが必要です。

3.体の使い方

骨端部に負担がかかる原因は筋肉の硬さだけではなく、体の使い方も大きく関わります。体の使い方によって筋肉に張力が加わり、関節に大きな負担をかけてしまうのです。

特に子どもは体の動かし方があまり上手ではありません。正しい形でスクワット動作を行い、お尻の筋肉を使えるようにしたり、背骨や骨盤、肩甲骨の動きを高めたりして、体への負担を少なくすることが重要です。

中学硬式野球チームの現場にて

これから私が中学の硬式野球チームの現場に携わっていたときに経験した症例をご紹介します。その症例を通じて、成長期の体の特性を踏まえて指導する重要性を痛感し、私自身とても勉強になりました。

肘の内側の痛みを訴える14歳の左投手、肩甲骨が安定しないことや右股関節の柔軟性や筋力が落ちていることなどが原因で、肘に大きな負担をかけていました。

幸い、軽症のうちに対応できたので、軟骨の状態がひどくなく、リハビリで症状の改善が十分見込めるという医師の判断でした。筋肉の柔軟性や関節の安定性を高める運動や投球動作に必要な基本的な動きを正しく、質高く行うためのトレーニングに取り組んだところ、症状が大きく改善されたのです。

チームの指導者や親御さんに体の状態やリハビリの重要性を説明し、継続的なリハビリを行ったところ、その後の症状の再発もありませんでした。

この選手は比較的体が大きく、チームの指導者は「体が出来ている」という認識でいたようです。しかし実際は骨端線がはっきりと残り、骨が成長段階にあったことや骨の成長に伴う筋肉の柔軟性が乏しかったこと、体の動かし方に大きな改善が必要だったことを踏まえると、決して「体が出来ている」という判断は出来ませんでした。

暦年齢ではなく、骨年齢で体の成長がどの程度進んでいるかを判断しなければなりません。体の機能を上げて骨端線にできるだけ負担をかけないようにすることが重要だと学びました。

終わりに
実際に私が指導した現場で経験したことを交えながら、成長期の体の特性について書きました。成長期のスポーツ障害は予防が重要ですし、全ての現場にトレーナーを置くことが難しいからこそ、指導者や保護者の方々に正しい知識を届ける必要性を感じます。
1人でも多く子どもたちがケガをしない体を作り、好きなスポーツを楽しんでくれるとうれしく思います。


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