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映画『メッセージ』が問いかける人生の選択と言葉の力

この作品が描く世界は、まるで詩のように美しい。そして、その美しさは単なる視覚的なものではない。言葉という概念そのものが持つ力、その神秘性を見事に描き出しているからだと思う。

冒頭から、私たちは言語学者ルイーズの視点を通して、“謎の知的生命体”との遭遇という非日常的な出来事に巻き込まれていく。彼女の使命は、彼らの言語を解読して、地球へ来た目的を探ること。そして、その過程で明らかになっていくのは、言葉が単なるコミュニケーションツールではなく、時間や文化、そして存在そのものを紐解く鍵だということだ。

特に印象的だったのは、言葉を通じて時間の概念さえも変容させうるという発想だ。私は物語の半分くらいまで、ルイーズの見ている映像が過去の記憶だと思い込んでいた。しかし、それが未来の出来事だったという驚きの展開。この瞬間、観客である私たちの時間感覚も、まるで“彼ら”が主張するようにぐるぐると捻じれていく。

そして、この作品が投げかける最大の問いがある。未来を知ったとき、私たちはその運命を変えるべきなのか、それともそのまま受け入れるべきなのか。

ラストシーンで描かれる祝賀会。そこでルイーズが交わす会話が、物語の始まりと繋がっていく。この円環構造が、彼女の決断を暗示しているようで胸が締め付けられる。

おそらく、ルイーズは未来を変えないのだろう。そして、私もまた、彼女と同じ選択をしてしまいそうだ。未来を変える勇気も、変えない勇気も持てず、ただ流れに身を任せてしまう。

しかし、それでいいのかもしれない。なぜなら、この映画が教えてくれたのは、未来を知ることの恐ろしさではなく、むしろ希望だからだ。

言葉を紐解くことで、文化を理解できる。そして、時間という概念すら解き明かせる。この考え方には、人類の可能性への大きな希望が込められているのではないだろうか。

この映画は、SF映画の枠を超えて、私たちに深い問いを投げかける。言葉とは何か。時間とは何か。そして、私たちはどのように未来と向き合うべきなのか。

この作品を観終わった後、世界はより美しく、より神秘的に見えてくる気がしてくるから不思議。それは、言葉という贈り物が、私たちの目の前に広がる「今」を、そして来る未来を、より鮮やかに照らし出してくれるからなのかもしれない。


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