と〜かいりん

小説を出す機械と化してもつまらない。 あるいは感情を吐露してしまうのも臆病な私には難しい

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最近の記事

読むと呪われる!?呪いの本3選

まずは1冊目!ジョセフ・K・フィリップの『限りある命』。こちらの作品は実際に30年前アメリカで起きた幼児誘拐殺人事件がモデルとなっています。なんとこの事件、未だに犯人不明で、この作品を書いた後フィリップは行方不明となってしまいます。また、出版社にも送り主不明の脅迫文が届くなど、一部マニアの間では事件の真相が書かれており、フィリップは口封じされてしまったのではないかといわれております。  次は、赤尾(あかお)二辻(につじ)の『ポラリス殺人事件』です。宇宙ステーション“ポラリス”

    • 合わせ鏡

       滞りなく公演は終わった。ぽつぽつとまばらに散らばる客たちからわずかではあるが拍手が送られる。私もそれにつられて、少しだけ手を鳴らす。カーテンコールまで見届け、席を立つ。 「どのように感ぜられましたか、この劇は」 いつの間にか横にいた年老いた男に話しかけられる。劇を見ている間、近くに誰かいただろうか。 「ええ、それなりには面白かったですよ。しかし最後のシーンはもう少し明るく終わらせてやってもいいのではないかと思いました。所詮は素人の意見なので、本当は高尚な意味合いが備わってい

      • 生きた証

        分娩室。新たな命が一つ、産まれる場所。 だが、赤子の鳴き声ではなく、妊娠6ヶ月で破水してしまった女があげる悲鳴が響き渡る。 「これは……手術室に移りましょう」 医師が淡々と呟く。赤子はまだ母親の中で息をしている。看護師が血だらけになった下半身を持ち上げ担架に載せ、手術室へと向かった。 鳴き声にもならない声を上げ、一つの命が生まれた。しかし、流産ということもあり、体重は500gにも満たない。低出生体重児というものだ。産まれた途端、専用の機械に管を繋がれ無理やり生かされて

        • 千切る、赤い糸

           運命の赤い糸の話を聞いたことがあるだろうか。ある男女が、見えない、けれど赤い糸で結ばれていて、最終的にはその二人が文字通り結ばれる。そんな子供が考えたような話。だと思っていた。 最初に”それ”に気が付いたのは小学生の頃だった。蜘蛛の糸が太陽の光に宛てると、その輪郭が綺麗に見えるように、”それ”は人の左手薬指からどこかへ伸びていき、その軌道が太陽の光に照らされて見えたのだ。最初は何の糸なのかわからず、母親に聞いてもそのような糸はないと一蹴されてしまった。  けれども母の薬指

        読むと呪われる!?呪いの本3選

          桜の木の下の百合

          昔、かの梶井基次郎は桜の木の下に死体が埋まっていると言った。  曰く、桜があんなにも美しいのは、地中にある死体から栄養を吸い取ってピンクの花弁を作り出しているのだと。  どこか薄気味悪いそれは、確かに私の心に残り続けていた。  泣きじゃくる彼女を横目に、いつか読んだ本のことを思い出した。まだ着込まないと耐えられないような寒空の夜に、2人の女が穴を掘っていた。  「巻き込んじゃって、本当にごめん……でも、頼れるのがあなたしかいなくて……」 枯れた声でそう言いながら、桜の木

          桜の木の下の百合

          失われたもの

          「お前がやったんやろ!はよ白状せえや!」 刑事さんが鬼の形相で詰め寄ってくる。 「だから何もやってへんって言ってるでしょ!」 負けじと私も返すが、手応えはない。 「証拠は出揃ってんねん!」「ええ加減認めたらどうや!」「今更何言っても無駄なんじゃボケ!」 ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられ、もう私は限界だった。なんで、こんなことになってしまったのだろう。  小さな田舎街の小さな夏祭り。そこで私はボランティアでカレーを作ることとなった。何人かと分担して作り、祭りもそこ

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