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自分と向き合うための文学(詩&児童文学)

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失敗、失恋、後悔、挫折。生きていく中で誰しもぶつかるその時に、何を振り返り、次にどうやって進むかを考える機会となる詩や文学(児童向け)です。 #詩 #児童文学 #立ち直り #振り …
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おつかれさん、とりあえず終わったね。

人は生きている上でなにかしら「苦しさ」を経験しています。 私自身も「普通に生きてきた」と思いつつも、細かく思い出せば苦しいことがいくつかありました。 その経験は唯一無二のものだからと、言葉にすることを選んでみました。 一見すると苦しさや挫折を表現しただけの文章もありますが、 その上で どうやったら乗り越えられるか? 自分ならどうするか? という、読んだ人に考える余地を残して書いたつもりです。 伝わりきらないモノばかりかもしれない。 それでも、自分の「苦しかった経

いつもはしっこにいるキミ。

いつもはしっこにいるキミ。 放課時間になっても、 写真をとるときも、 みんなで帰るときも、 いつもはしっこにいる。 体育の時間の長距離走。 キミは一番遅かった。 走る時もはしっこだって、みんなから笑われて。 でも、真剣な顔をしていたから、だんだん応援されて。 すっごい笑顔でゴールした。 学芸会の演奏で楽器を決める時。 みんながはしっこのトライアングルを勧めるなか、 キミは指揮者を選んだ。 おどろいたけど、真剣な顔をしていたから、みんなが認めた。 ど

こわした砂時計。

先生の、トレードマークの砂時計。 帰りの会でも、給食の時間でも、みんなが前を向くまで使ってた。 音が出るわけじゃないけど、声が出るわけじゃないけど、みんなが砂時計に従った。 そんなトレードマークだから、みんなが触りたがる。 でも、先生はそれを許さなかった。 先生しか触れない、神秘的な砂時計だった。 だけど、ボクがちょっと触っただけで、砂時計は壊れてしまった。 砂は床にサラサラと風に乗って、散ってしまった。 くびれたガラスが収められた底板が簡単に抜けてしまったのだ。 そ

燃え尽きた灰の塊を抱いて。

小学校の低学年の頃から何事にも意見を持ち、学級委員とか立候補。 間違ったことやズルいことに嫌悪感を抱き、常に正しい方向へ導こうとする。 正義感が強かったから、いじめに合うことも多々あった。 友達は、いわゆるクラスの中心人物よりも、どこか輪に入れない日陰者のような子が多かった。 社会人になっても、それを続けていた。 自信を失っている人に、気力を与え。 新人には現実の厳しさと、その乗り越え方を教え。 苛立っている人の愚痴を聞き、心を鎮めた。 そんな「お日様」のような人

涙の使い方。

無知をさらけ出したくなかったから。 なんとなく知っているという、曖昧なニュアンスだけで返事をした。 決して誰もボクを試しているわけじゃなかったはずだ。 でも、眼前に広がる聴衆を前にして、浅はかだった返事が突きつけた問に答えられなかった。 静まり返る講堂に押し返された両足が、細かく震える。 そもそも、だ。 誰もやりたがらなかったから、誰も責任を持とうとしなかったから。 誰かのために、を、誰もやらなかったから。 首から上が沸騰して、口元が勝手に麻痺しながら、 自分

二度と会えない、あの日の僕へ。

誰だって一度は「チーム」の為に努力をした経験があると思う。 運動会や部活動、クラス一丸でもあるだろうし、社会人になってからの仕事のプロジェクトだって当てはまる。 そして、結果はどうであれ、終わった時の達成感は次なる目標へ大きく前進するための糧になっただろう。 そうして人は成長していく。 だから、終わったあとはチーム全員で労う。 そこには、個人の努力や貢献量の差はあれど、平等に労うべきだ。 それこそが、「チーム」の意味だから。 ーー たかだか2年ちょっとの間の数合

返されたラブレター。

青空にたなびく青いリボン。 見慣れたいつもの校庭で、見慣れないポニーテールのキミの姿を、今でもハッキリ覚えている。 自転車で通うようになっても、目指す校舎は同じだった。 11年の月日が流れても、距離感なんて変わらなかった。 だからこそ、気になっていた。 特別に会話しないけど。 特別に知り合いだからと言わないけど。 特別にお互いを知っているわけでもないけど。 その時の気持ちを綴った会心作を、キミに届けた。 やりきった充実感と、達成感。 すっかりボクの心の花は

かおいろ。

今日のキミは笑顔だった。 だからボクも笑顔で話しかける。 「今度、あのパン屋さんに行こうよ、おいしからさ!」 今日のキミは疲れ顔。 だからボクも疲れ顔で話しかける。 「なにか、手伝えることはある?」 今日のキミは悲しい顔。 だからボクも悲しい顔で話しかける。 「どうしたの?なにか嫌なことあった?」 今日のキミは楽しそう。 だからボクも楽しくなる。 「いいことあったの?教えてよ」 毎日キミに合わせて話しかけた。 キミの気持ちと、生きてきた。 だからいつしか、

あなたに、なりたかった。

なんでもできるあなたが、羨ましかった。 卒業式が終わった後のボーリングでも。 久しぶりに再開した同窓会でのカラオケでも。 口を開けば卓越なお酒の知識や、投資の話でも。 勤め先が一流なのに、独立する話でも。 マイホームに、我が子の写真に、現を抜かしても。 追いつこうと必死に努力をしたけど、あなたはいつも先を行く。 だから、会うたびにムカついた。 だから、一つくらい分けてほしい。 世の中はもっと平等であるべきだから。 そして手に入れたのは、悲劇にまみれたあなた

惨絶の金賞。

薄暗い座席から、満天の光を浴びた壇上に呼ばれる。 拍手の中でも、いつもより早い鼓動が聞こえる。 初対面のおじさんに頭を下げて、手に余るものを二つも渡される。 口元に近づいてきたマイクに、準備していた自分の気持ちを伝える。 「友達に、描いてもらいました」 ランドセルの黄色いカバーが外れた頃、いつも遊んでいた「よー君」を見なくなった。 クラスが変わったせい? ボクは先生に頼まれてお手紙を配達する道すがら、一人で考えた。 だけど、よー君はいつも笑顔でボクに会ってくれた。

秩序が守れない歪なパズル。

4つの蛇口を目指して、無数の児童が猛進する。 自分が一番だと言わんばかりに、無意味な争いが勃発する。 学校で教えるべき秩序は、そこには微塵もない。 だからボクは一人、校庭側の蛇口を目指す。 蛇口が4つだけではないことを、知っているから。 自分一人が得をしたいわけなじゃない。 他の人が少しでもスムーズに、蛇口にたどりつけるように。 けれどもボクは、大声で叱られた。 みんなと同じ行動ができていない、それが理由で。 『秩序を乱さない人間が集まることで、平和な社会が

隠していれば、弱いままだから。

大抵の人と、視線が合うの。 男ウケとかセンスが良いとか、色めいた言葉をたくさん浴びるの。 でも、それは当然なの。 取り柄がないから、スキルがないから、表だけでも美しく。 それが表のわたしだから。 影に隠せば、芽は伸びない。 そんなこと、知ってるはずなのに。 私はいつまでも隠し続けるの? そんなチグハグが綻びを見せた時、 「隠すからずっと弱いままなんだよ」 そうやって言葉にしてくれたあなたの横が、わたしの居場所になった。 不慣れな本と向かい合う日々。 表

もっと自分のために生きていい。

「好意の返報性」という言葉を知った時、私の中では明らかな否定的意見がこみ上げた。 なぜなら、最初から好意が返ってくることをアテにしている人が、世にはいるからだ。 ・・・それが、実の親であろうと。 愛情をかけて育てることは、甘やかすだけじゃない。 時に叱り、時に嘆き、時に鼓舞し。 あらゆる感情を駆使して、人として正しい方向へ導く。 そんな熱意も、愛情だと思う。 私も、それらの感情をぶつけられて、育てられた。 その熱意に応えようと、結果を残すように努力した。 し

越えてはいけない友情。

気が合う、ってことを実感したのは、マックで同じものを頼んでしまった時だった。 それ以来、僕らは昔から一緒に暮らしていたかのように自然な関係を続けられた。 でもそれは、最初から恋愛を通り越した友情だった。 彼女は常に、僕に相談をしてくれた。 「憧れている先輩に嫌われたくないから」 という名目で、ケータイでメールする時間ばかりだった。 いつも真摯に受け止めて答えていたけど、残念ながら僕の気持ちを問われることは一度もなかった。 だけど僕はそれでよかった。 自然な関係でいられ