空気の境目
私達が生活する地上では、風を感じることはあっても空気を感じることはほぼ無い。
空気は軽そうに見えて重さもある。そのおかげで生命活動が維持されている。この重さのことを天気予報などでは気圧と呼ぶ。
気圧は地球の重力によるものだ。上空に行けば行くほど気圧は低くなって、つまり空気は軽くなって自由になる。地球を離れて宇宙空間に到達すれば空気はもはや何処かへ行ってしまう。
地上から上空に向けて登って行き気圧が低くなってくると空気の中に含まれている水分が出てくる。それは雲になる。
だから雲が出来る高さは空気の質が変化している地点だと言える。
雲には、もくもくしたものもあれば、層になっているようなものもある。それは雲の出来方によって変わる。そして雲の出来方は高度によって変わる。低いところの雲はもくもく、高いところの雲は薄っぺらい層のようになる。
さらに空をどんどん昇って行くと、やがて雲の出来ない高さに到達する。そこから周囲を見ると、空気の境界線が見えることがある。まるで水平線のように。
そうした境界線は、空気があたかもギュッと大切なものを押し込めて世界を暖かく覆ってくれているようにも感じる。
そして遥か下の方の地表にいる小さなちいさな私達の上にある膨大な量の空気の存在を気付かせてくれる。
飛行機の窓から雲や地上を眺めることが出来るのは窓側席の特権だ。しかしビジネスパーソン達は降りる時のことを考えて通路側を選ぶ人が多い。かく言う私もその口だった。しかし最近では窓側を選ぶことが少しずつ増えている。上空から眺める景色が物珍しいというのではないものの、普段とは別の視点で世界を眺めるのは良いものだ。何かの気づきがあるわけではないが癒やしになる。視点を変えてみることで、別の視点があることを再確認できる。
地上に降り立つと、さっきまで上から見ていた世界と同じとは思えない世界が広がっている。同じはずの世界が違って見える。どこか重苦しく現実じみていて、息苦しい。人間の視点の世界観はそんなものだ。
私はさっき見た空気の境界線を想像しながら思い切り息を吸った。
見上げると低い雲から落ちてきた雨粒が頬を濡らした。
おわり
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