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価格の上昇とインフレの予感

 4月に入って足元の物価は益々上昇してきた感がある。見た目上の価格改定が無い商品でも内容量を減らすことで実質的な値上げが度々敢行かんこうされている。

 この物価の上昇に伴って、問題となるようなインフレになるかは今のところ分からない。つまり、物価上昇が一時的なものであるのか、長期間継続するものであるのかが分からない。
 しかしながら、これが長期間続く物価上昇となった場合、過去最悪のインフレとなって日本社会が最悪の事態を迎えかねない。
 
 一時期、デフレスパイラルという言葉が流行ったが、今度はインフレスパイラルと呼ばれるような負の循環に突入し掛けている。
 一度スパイラルに入ると容易には抜け出せないので、入る前に何とかしておかなければならない。
 現状の物価上昇は外的要因によって起きているから、インフレスパイラルを防ぐには物価上昇要因を内的で能動的なものにシフトしていく必要がある。

 物の値段がどうやって決まるかについて、単純なケースで考えて見よう。
 物の値段が上がるのは供給量に比べて使う量が多い場合だ。
 これには、使う量に比べて供給量が少ない場合と、供給量に比べて使う量が多い場合とがある。市場価格はアンバランスを是正するように動く。市場原理ではこのように説明される。
 ところが、現在の日本では供給量が少ない訳でも、供給力が足りない訳でもない。ではどうして物価が上昇しているのかと言えば、原材料価格が上昇しているからだ。物の量のバランスで価格が決まるのではなく、単純に製造原価が上がっているから価格が上がっている。製造原価が上がっているのは原料価格が上昇しているからで、原料の大半は輸入されている。
 つまり、製造原価が上がっている理由は日本経済の外側にある。

 インフレになるにしても好景気であれば傷は浅くなる。ところが現在は好景気とは違う。
 世界的なコモディティ価格の上昇によって原材料価格が上がっているために、それを使って作られる生活必需品の価格が上昇しているのだ。
 さらに円安が追い打ちを掛ける状態になっている。

 原油や鉄、銅などの金属、小麦などの食品の市場価格はここ1,2年で1.5倍から2倍もしくはそれ以上になっている。それに比べて身の回りの製品価格の上昇が抑えられているのは、コモディティ市場の高騰が一時的なものであると予想してのことだろう。
 もしこの予想が外れて、コモディティ市場価格が上昇を続けるかそのまま横ばいになったとすれば、早晩我々が手にする商品の価格は1年前の倍になることだって有り得る。それは既に秒読み段階だ。

 実売価格上昇を抑えるために現在では販売者側でギリギリの価格設定を行っている。しかしこの方策はいつまでも継続出来るものではない。原料価格が上がっている中で販売価格を据え置くためには賃金を下げなければならないからだ。
 片や労働者側からは最低賃金の上昇圧力が働いているから、販売価格はどこかでグイッと上昇に転じぜるをえなくなるはずだ。

 そうなった時に、賃金上昇幅の方が大きければある意味良いインフレとなる可能性があるが、賃金上昇よりも物価上昇の方が大きければ悪いインフレになる可能性がある。働けども買うことの出来る品数が減っていってしまうことになる。

 インフレによる景気悪化を見越して貯蓄で備えるのは良策ではない。
 なぜなら、インフレ下ではお金の価値が二束三文になるからだ。価値の無いものを溜め込んでいても仕方が無い。
 もしどうしても貯蓄しておきたいというのなら、せめて日本円ではなく外貨で貯蓄した方がまだ良いかも知れない。だがこれも何の保証もないが。

 今言えるのは、現在の我々が置かれているのは、結構な綱渡り状態であるということだ。薄氷を踏むような状況下で我々は歩いているが、それを皆が認識していないようにも思える。
 ガソリンが高いと愚痴る人もいつか下がると思っている。電気代がまた値上げだという人も、野菜が高いという人も、皆これは一時的に高いだけだと思っている。
 けれども、インフレになればそうは行かない。
 物の値段は上がり続けることになるからだ。

 悪い物事ほど現状認識が出来ないのが人間のさが
 最悪の事態を想定しつつも、何とか最善の策を模索していきたいものだ。

おわり


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