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スポーツで競われているもの

 スポーツは身体能力や技能を極限まで高めた選手同士が戦うことで、その技能の優劣によって勝敗が分かれるのだと思いがちだ。
 しかし、スポーツの試合では身体の技能ばかりではなく、メンタルが競われている。
 ここで言うメンタルというのは強気とか弱気というようなことではなく、無意識下で起こる心の動き全てを指す。それは試合開始より前から始まり試合中も続く。

 悟りを開いた僧侶でもない限り人間は心の動きから逃れられない。それは不安や恐怖といったことから、瞬時に選択を迫られる時の様に表面には表れない心の動きまで、ありとあらゆる場面で襲ってくる。
 そういった心の動きを上手く手懐てなずけて良い方向に持っていかない限り勝ちは見えて来ない。

 試合前に一流選手たちが殊更に強気の発言をしたり、メンタルを強く保とうと振る舞うのは、放っておけばネガティブな心理に飲まれてしまいそうになるからだろう。
 世界一を決めるようなトップレベルの大会では身体能力や技能が極めて接近している為、メンタルが勝負を左右するようになる。

 意識下でメンタルを左右するのは脳細胞の回路と脳内物質だ。そして意識上ではメンタルは言葉によって左右される。
 意識下で起こることは訓練や習慣の積み重ねが必要だから、昨日の今日で出来るものではない。だから受験会場でスラスラ回答出来ているイメージ・トレーニングはなるべく早く始めたほうが良い。それと同じようにアスリート達も日々良いイメージを想像するトレーニングをしている。これをしていない選手は少なくともメンタルではどこかに弱点が残る。
 意識してメンタルを鍛える際には、ポジティブな言葉を口にすることで言わば自分自身を良い方向に洗脳することが有効だ。

 例えば、サッカー日本代表選手の言葉を見ると分かる。
 気持ちを切り替える、まずは目の前のことを考える、批判はガソリン、自分が一番うまいと思ってピッチに立つ、信じている、そしてブラボー!
 こうした言葉を口にし続けることが大切だ。

 同時に、自分のメンタルの状態を常に監視し続けることも重要だ。
 いつの間にかネガティブな思考になりがちな自分を常時観察することで、ネガティブになりそうな時を逃さずにすかさずポジティブな言葉で封印する。こうした言葉によるメンタル・コントロールは欠かせない。

 試合中に選手同士で声を出せというのも言葉によって思考をコントロールするためだ。ピッチサイドの監督やボクシングのセコンドが声を掛け続けるのも、今意識を向けるべきことに言葉で誘導すること、ネガティブなメンタルが顔を出さないようにすること、士気を高めて前向きに取り組むようにすること。つまり、スポーツでは言葉によってメンタルを飼いならしている。

 サッカー日本代表の堂安律選手も言っている。
「海外で成功するために必要なものは、メンタルでしょ。」

 ただし、素人がメンタルだけ鍛えてもスポーツは上達しない。
 根性だけでは勝てないので地道な練習にもしっかり取り組むことを忘れないように。

おわり

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