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デジタル通貨と社会システムのブレイクスルー

 電子マネーの普及は一気に進み、今では給与さえ電子マネーで受け取れるようになった。しかし電子マネーは国が発行する通貨とは異なり、言ってみれば事業者が発行するポイントに過ぎない。だから、電子マネーの信用は発行している事業者の信用と重なる。要するに電子マネーの価値は円と連動しているのではないということになる。

 通常、電子マネーは1ポイント1円換算で利用されている。私たちはここに何の疑いも抱かずに利用している。ポイントカードのポイントであれば、おまけに貰ったようなものだから万が一無くなってしまってもダメージは無い。しかし、個人にとって電子マネーは現金と同じだから、万が一無くなってしまったとすると、直接的なダメージを被る。各電子マネーが、無くならないようにどんな保全がなされているのか私たちは良く知らないままに財布代わりに使用していることになる。

 電子データとしてのポイントが無くなる無くならない以前に、もし仮に電子マネーの事業者が急に、今から1ポイント0.5円にしますと言い出したら、私達の電子マネーの価値は半減することになるのだ。そんなことは起こらないと、私たちは信用して利用しているに過ぎない。

 世界各国では政府公認のデジタル通貨導入を検討している。中国やスウェーデンのように、既に試験的に導入している国もある。デジタル通貨は電子マネーとは異なり、その国の通貨と同等であることが各国の中央銀行によって保証されているから、その価値は発行国の信用と連動している。
 デジタル通貨が出来て流通するようになった暁には、私達の生活はどうなるだろうか。そして、デジタル通貨は本当に導入されるのか。

 人にデジタル通貨の話をすると、そんなものは少なくともこの日本では導入される訳がないと言う人がいる。しかし、銀行から電子マネーに入金した際に、それが通貨として認識されるということだと説明すると、それなら実現可能だとなる。現在でも、銀行から入金した電子マネーは一定の条件下で銀行口座に戻すことが出来る。そこに事業者ではなく政府の認証が紐付けば良いだけだ。
 もちろんセキュリティ上の難点があるから導入へのハードルは低くはないだろう。しかし、社会の要請は決して低くは無い。現金主義の人には分からないと思うが、お金の価値や意味は20年前とは全く違うものになっているのだ。

 反対派からすれば、マイナンバーカードですら情報管理がちゃんと出来ていないじゃないか、という論調だろうが、火は危ないから使わない方が言っているのと同様、目に見えない情報の世界を怖がるばかりで、その扱いに慣れていないから様々な問題に直面しているだけだ。
 安全に、かつ、便利な仕組みとして導入を目指すなら、試験的にでもいち早く取り入れて、試行錯誤を繰り返していかなければならない。完璧なものを作り上げてからリリースするといったこれまでのやり方は逆に通用しないからだ。
 やってみないことにはブレイクスルーは起こせない。
 人口が減っていく社会でもこれまで同様の社会システムが継続出来るという幻想はそろそろ捨て去った方が良い。

おわり
 

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