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「こころ」と「からだ」。語られない福祉現場の実情。

「こころ」と「からだ」は繋がっている。

「こころ」が疲れれば風邪もひきやすくなるし、「からだ」が疲れればこころは憂うつになる。

福祉、とりわけ精神的な症状や障害に対応する私が感じる新型コロナについて書こうと思う。

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新型コロナに関連して私たち福祉業界に出された要請は、現場の「こころ」も「からだ」も疲弊させた。

利用者さんと呼ばれる障害福祉サービスを必要とする方が、事業所に来て様々な活動を行う形式を「通所型」と称したりする。

要請を要約すると「原則サービス提供の継続をしつつ、利用者の自粛協力を求めること。孤立防止のための支援と連絡体制を確保して、在宅などの代替支援に移行してほしい」という内容だ。

つまり、「通所を希望する方には事業所を開放して通常サービスを行った上で、自粛を希望する方へは在宅訪問してください」と言うことだ。

会社としては職員の健康を守るための、時短や在宅勤務なども検討されるなか、通常開所に加えて家庭訪問も行って隙間なく福祉サービスを提供せよ!との通達。

当然、利用者さんの権利利益を守ることに異論はない。感染リスクとのバランスを考えて出勤することにも異論はない。

実際、職員には出勤をお願いし、感染リスクと闘いながらも出勤してくれた。ただ突然の業務形態の変更は「こころ」も「からだ」もついていかないのが現実だ。

結局、私たちの事業所では午前中を開所し、午後を訪問支援に充てることにし、作業提供やプログラムの見直しを行った。

職員は連日、午前中のサービス提供を行い、昼食もそこそこに自転車で家庭訪問に出かける。2~3時間かけて市内中を移動する。帰所後はすべてのケース記録を書き、事業所を消毒して、感染リスクの高い公共交通機関で帰宅する。

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福祉職や医療、介護職の人間は、自分が「最も有力な感染源になる」ということを知っている。職務上、不特定多数の場に出入りし、不特定多数の人と接する。特に不調の方に対応する。

自分が罹患すれば、全ての同僚、全ての利用者、家族もろとも濃厚接触者となることを知っている。そして、自分が一線から離脱すれば、全ての同僚、全ての利用者に不利益をもたらすと知っている。この緊張感たるや、筆舌に尽くしがたい。

加えて嫌味を言うならば、頻繁に送られてくるマスク・アルコールの在庫調査メールや臨時的に在宅支援を認めるための申請書、報告書の提出。大変な時期、創意工夫を凝らして対応している現場に、さらなる業務を追加してくるとはどういう配慮だろうか?

マスクに至っては在庫調査はするが、配布が目的ではありませんなどと書いている。だったら何のために在庫調査をするんだろうか?!

全事業所に優先的に配布できないための釘差しだろうが、「こころ」と「からだ」が疲弊し、自分たちに余裕のないこの時期、感じることはただ一つ。

「聞くなら配れ、配らぬなら聞くな!」

これが緊急事態宣言が解除されてなお続く、福祉現場の実情だ。もちろん、余裕をもって上手く立ち回れている事業所も多いのだろう。知ってほしいのは、こういう事業所もあるということ。

福祉には、おもしろいこと、嬉しいこと、楽しいことも溢れているけれど、「こころ」と「からだ」は繋がっている。利用者さんの権利利益と同等に、職員の権利利益も重要だ。今は、疲れを癒す時間が必要なのだ。「こころ」だけでもいい。「からだ」だけでもいい。疲れを癒す時間。

「こころ」と「からだ」は繋がっている。

心の健康を支援対象とする私たち精神保健福祉士。

利用者さんのメンタルケアには常に目を向けるが、自分や働く同僚のメンタルケアはいつもお座なり。何とかできないか。これからもアイディアを探ろうと思う。

テレビや新聞では報道されない現実が山のようにある。

次回は、利用者さんの状況について書こうと思う。


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