⑥ 1個目と2個目=帰納的論理を強くする

まずは1個目である「『なか』を数多くしていく」ことについてその意義を考えていきます。

「10個の方法」とは、基準となる『ぼくのお父さん』に照らして導かれたもの(『ぼくのお父さん』との違いから考察されたもの)であると述べました。
この基準となる『ぼくのお父さん』の「なか」と「おわり(まとめ)」は以下の通りです。複数の具体的な事実からそれらに共通する抽象的な概念を導く帰納的思考の最低限のものであると言えます(複数の最少はふたつであるので)。

「な か」①昨日は遠くまででかけたので帰ってきたのは夜遅くでした。
「な か」②今日は荷物の積み込みがあるので朝早く出かけました。
「おわり」毎日毎日とてもよく働きます。
(まとめ)

ここに、以下のようにもうひとつの「なか」を追加してみます。
(追加したところは強調文字で示します)

「な か」①昨日は遠くまででかけたので帰ってきたのは夜遅くでした。
「な か」②今日は荷物の積み込みがあるので朝早く出かけました。
「な か」③明日はいろいろなところへ行くので泊りとなり帰ってきません。
「おわり」毎日毎日とてもよく働きます。

「なか」が3個となって帰納的に強くなります。マガジン『小学校の国語科の授業④ 説明文編(何を教えるのか 構造面)』の記事③で示したルービックキューブの動画(以下参照)で言えば、黄色いキューブがひとつ増えたことによって全体がより黄色く見えることになったということになります。

③ 動画「説明文の指導の原理」|小次郎|note

このことを、3年上『こまを楽しむ』の教材を使って指導していくことになります。

次に2個目である「『なか』をいろいろなところから持ってくる」ことについてその意義を考えていきます。
1個目として「①『なか』を数多くしていく」ことを指導しました。では、より帰納的論理に強めていくためには、「『なか』を数多くして」行くだけでよいのでしょうか。
例えば、続けて以下のような「なか」を追加していけばよいのでしょうか。

「な か」④おとといは ~
「な か」⑤明後日の予定は ~

確かにこのようにしていっても帰納的論理は強まることでしょう。しかし、これではルービックキューブの面のある部分のみ(一面中の偏った部分のみ)を集めたのに過ぎません。一面のある部分だけが濃くなり他の部分はスカスカで色がないようなものとなります。
もう一つの例を出せば、「おわり(まとめ)」で鳥の概念をイメージさせるために「なか」で「すずめ」と「つばめ」などの近い種別ばかりを例として挙げるようなものとなります。これでは鳥一般としての概念はイメージできません。

よって、キューブの面の全体から「なか」を持ってくるようにする必要があるのです。偏らずいろいろなところから持ってくれば全体がより明確に色づいてくることになります(鳥の例であれば「ダチョウ」や「ペンギン」などを位置づけていくように)。
具体的には以下のようにしていくことになります(「なか」④⑤を追加・強調文字にしました)。

「な か」①昨日は遠くまででかけたので帰ってきたのは夜遅くでした。
「な か」②今日は荷物の積み込みがあるので朝早く出かけました。
「な か」③明日はいろいろなところへ行くので泊りとなり帰ってきません。
「な か」④先月は土曜日と日曜日も仕事に行って3日しか休みがありませんでした。
「な か」⑤たまの休みは家の壊れたところや車の修理などをしています。

「おわり」毎日毎日とてもよく働きます。

④は一日単位のことではなく月全体に視野を広げたものとなります。
⑤は「働く」という概念を「職業(仕事)」だけではなく「家のこと」まで広げたものとなります。
このようにいろいろなところから「なか」を持ってくれば「おわり(まとめ)」は帰納的により強くなり説得力が高まることになるのです。

以上のことを、3年上『すがたをかえる大豆』の教材を使って指導していくことになります。3年生の前半は論理的思考力育成に関してとても重要な時期であることがわかります。

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