谷春声

(Shunsei TANI)旧:谷水春声 夢の中にいるような変な話が好きです。140~…

谷春声

(Shunsei TANI)旧:谷水春声 夢の中にいるような変な話が好きです。140~10,000字くらいの短いフィクションと随筆。これまで出した本の電子版も置いています。 紙の本https://tnmzsh.booth.pm/ 連絡先tnmzsh@gmail.com

マガジン

  • Twitter300字ss

    Twitter内で行われている企画「Twitter300字ss」に参加した作品をまとめました。気軽に読める長さです。

  • 随筆

    小説のような随筆だったり随筆のような小説だったりもします。随筆という言葉が好きなのでタイトルにしましたがエッセイや日記のほうが語感としては近いかもしれない。

  • 診断メーカー

    診断メーカーに頂いたお題で書いたもののまとめです。 お世話になっております。→ あなたに書いて欲しい物語(https://shindanmaker.com/801664 ) さみしいなにかをかくための題(https://shindanmaker.com/595943 ) 3つの単語お題ったー(https://shindanmaker.com/425958 )

  • #ショートショートnote杯 参加作品

    #ショートショートnote杯 に参加させせいただいている10作品をまとめました。410字以内という規定なのですが、全作品410字で投稿する縛りをなんとなくしています。

  • Text-Revolutions Extra2参加作品

    通販型文芸オンリー・オールジャンル同人誌即売会への参加作品でした。試し読み兼電子版の頒布を行っています。紙版はこちらから→https://tnmzsh.booth.pm/

最近の記事

  • 固定された記事

私事ですが筆名を変えまして、

折角の機会、というよりはかなり今更なのですが、自己紹介の投稿をいたします。 名前 谷春声(旧称 谷水春声) 読み たに しゅんせい 名前の由来 鎌倉時代初期に活躍した、百人一首の歌人でもある藤原家隆の 「谷川のうちいづる波も声たてつ鶯さそへ春の山風」 という歌より漢字をいただきました。春の風景が好きです。 改称したのは字画が良いらしいのと、口に出したときにより明瞭に伝わりそう、という理由からです。 やっていること① 300~10,000字くらいの短いフィクションを投稿し

    • 「たまさか」

      #Twitter300字ss  お題「洗う」  流水に筆を置く。す、と薄緑がシンクに落ちて、見る見る間に広がっていく。  今日も完成しなかった。  コンテストに出す絵画ではない。たかが文化祭のための水彩画だ。学校に生えた樹木を主役にした風景画だ。きっと美術部の展示には校内の暇人や、物好きな近所の老人しか来ない。プレッシャーを感じることはない。  なのに、思うように進まない。  洗い終わった筆を置き、筆洗をシンクにひっくり返した。葉と幹の色が混ざりきらずに文様を作っている。

      • 二〇〇年後迄

        (222字) 「あら!今日って二〇二二年二月二二日よ!」  隣のデスクのIさんが一際大きな声と共にこちらを向いた。 「書類を見ていて気付いたわ。ほら、二がこんなに並んでる」  Iさんは屈託のない微笑みと上品な物言いで、機を狙ってはお喋りをねじ込んでくる大先輩だ。 「こんなことって滅多にないわね、二二二二年じゃ二〇〇年後だから私はもう居ない…ああでも、Tさんはまだ若いから可能性あるわね」  冗談で言っているとは分かるのだが、何だかどぎまぎしてしまった。  まさか、私の正体を。

        • 「或る屋敷憑き魔の実況」

          谷春声さんには「探し物はここにあるのに」で始まり、「そっと立ち去るのです」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば1ツイート(140字程度)でお願いします。 #shindanmaker #書き出しと終わり https://shindanmaker.com/801664  探し物はここにあるのに、彼女は部屋に入ろうとしません。私の仕掛けた罠だと分かっているのでしょう。  一面埃を被った床。その中央に、どこかで落としたはずの自転車の鍵がぽつり。  彼女はもうひと月近くも徒歩で通

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        私事ですが筆名を変えまして、

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        記事

          「あさ野球」

          (3,978字)  草野球を始めた。  野球を本格的にやっていたのは高校時代までのことで、大学では比較的ゆるい運動サークルに入った。社会人になってから数年。接待があったり、何かと理由をつけて家で酒を煽ったりして、休日は午後まで寝ている。そんな日々を過ごしていると、体型が気になってきた。  インターネットで調べれば、すぐに近所の草野球チームが出てくる。便利な世の中だ。画面の一番上に表示されたチームにメール一通で入会を申し込んだが、いきなり練習に飛び込んで後悔した。  参

          「あさ野球」

          「1億円の低カロリー」

           甘やかしているという自覚はあった。 「運動をさせなければ、余命は長くないです」  獣医が噛んで含めるように言った。僕は頷いたが、俯いていたので伝わらなかったかもしれない。  愛猫が病気になってしまったのは飼い主の責任だ。欲しいと鳴かれるままにご飯を与え、眠そうな時はいつまでも寝かせ、運動もさせなかった。 「ごめん」  毛並みを撫でると一度瞼を上げたが、それも億劫そうだった。  それから僕は、猫に少しずつダイエットをさせた。運動だけではない、私財を投げうって、猫用の健康食の開

          「1億円の低カロリー」

          「株式会社リストラ」

           早期退職した人が系列の会社などに再就職することを天下りと呼ぶ。そういったものは最近風当たりも強いため、そう沢山天下り用の会社が作れる訳ではない。となると、天下り用の会社もじきに人材が余ってしまう。  そうなると天下った後の天下り用の会社が用意される。だが天下った後の天下り用の会社だって数に限りがあるので。 「天下り先の更に天下り先の更に天下り先の更に会社ができて…と、選りすぐりの天下り人材が集まっているのが、ここ、株式会社リストラだ、通称だが」  先輩の話に、俺はため息しか

          「株式会社リストラ」

          「金持ちジュリエット」

           目を開くと、ロミオは既に冷たくなっていた。  なぜ。  私は従者にお金を握らせてロミオを運んで貰い、一連の計画を立てた修道僧のところへ一緒に向かった。 「なんて事してくれたの」 「ああ、謝っても謝り切れません。伝達がうまくいかず、ロミオは悲しい勘違いを」 「言い訳はいらない」  私は修道僧の前に金貨の入った袋を置いた。彼は戸惑っている。 「人を仮死状態にする変な薬を持ってる位だから、生き返らせる薬だってあるはず。出して」  私は従者に指示して金貨の入った大袋を積んでいった。

          「金持ちジュリエット」

          「アナログバイリンガル」

          「お疲れ様です」  プロジェクトが完了して、彼は私と握手した。  日本語が堪能だが、来日したのは成人してからだという。 「大変だったです、ケイセツでした」  ネイティブでもぴんと来ない語を使ってくる。 「蛍雪とは。苦労して勉強すること。蛍の光、窓の雪」  視界に解説の文字が流れた。 「機械も高くて買えず」  彼は私の眼鏡を指さす。 「ノートに鉛筆でひらがなから書き始めました。呪術に使う文字に見えました。アナログの方法と思いますよね」  そんな勉強風景を、少し羨ましいと思う。日

          「アナログバイリンガル」

          「君に贈る火星の」

          前略 手紙をありがとう。本当ならすぐ返すべきだったが、最近は便箋を使うことも稀で、探し出すのに時間をかけ、遅くなってしまった。  いや、それは言い訳だ。君の言葉にどう返せばいいかをずっと考えていた。  答えは出た。この手紙に、火星の石を磨いて埋め込んだ指輪を同封する。受け取ってくれたら嬉しい。太陽系から離れたところに暮らす君には物珍しいはずだと思うのだが、今どき火星製かと呆れられるのではないかと、実のところ少し不安でもある。  人類が地球から離れなければならなくなった時、我々

          「君に贈る火星の」

          「しゃべるピアノ」

           祖父母の家、庭に面した応接間には古めかしいピアノがあった。正月に帰省するたびに、私は好んでピアノの椅子にずっと腰掛けていたらしい。それまで楽器に触れたこともなかったのに。  記憶と違う。  覚えている限りではその部屋にピアノはなく、私は同じ年頃の女の子と遊んでいた。きらびやかな服を着た、歌うように喋る子だった。  親戚だと決め込んでいたが、そういえば同世代の女の親戚はいない。それに今思えば、あれはピアノの発表会で子どもが着るようなドレスだった、かもしれない。 「あ」  その

          「しゃべるピアノ」

          「空飛ぶストレート」

           彼氏と別れた。  別れ際に放たれた、負け惜しみのような言葉が私の心に刺さり続けた。  思い出す度に苛々するので、ストレス発散のためにボクシングを習い始めた。無我夢中で打ち込んでいたら周りに認められ、なんと試合に出ることになった。 「―!」  リングに入場しようとすると、どこからか私の名前を必死に叫ぶ声が聞こえる。観客の歓声に紛れているが、あれは間違えようもない。  元彼の声だ。  そういえば連絡が大量に入っていた。練習に集中するため全部無視していたけど。あんな言葉を吐き捨て

          「空飛ぶストレート」

          「鯉館の主」

          #Twitter300字ss  お題「救う」  祭りの縁日、作業のように淡々と金魚を掬う少女がいるので目に留まった。  それが鯉館の主との出会いだ。  少女と共に居たばあやに声をかけたのは、後から思えば正解だった。  案内された屋敷の池や水槽には鯉が沢山泳いでいて朱、白、金、黒と目まぐるしい。 「鯉に見えますが全て金魚です。お嬢様の取った金魚は慎重に管理しておりますので数年以上持ち、体も大きくなります」  説明してくれたばあやも年をとり、今では私が少女、いや、主にかしずいて

          「鯉館の主」

          「コロコロ変わる名探偵」

          「分かりましたわ」  全ての道筋が繋がった時パチンと音がして、私は瞼を上げました。 「事件を起こした犯人と、その方法が」  皆さんがどよめいて、私に注目しています。重要参考人、警察関係者、今日は記者の方々も居るようです。 「今日はお嬢様だ」  記者の方々が囁き合うのを聞き流しながら、真相を話します。私は多少のことでは動揺いたしません。 「探偵さん、少しお話を」  自供した犯人が乗せられたパトカーを見送っていると、記者の方が笑顔を作りながら歩み寄ってきました。 「今日こそは秘

          「コロコロ変わる名探偵」

          「数学ギョウザ」

          「ABCスープだ、小学校の給食で出ただろ。何?出ていない?地方特有の物なのかな」  先生の話を聞くところによると、アルファベット型のマカロニが入ったスープがあるらしい。 「そこから私は着想を得た」  したり顔の先生は、数学記号の鋳型造りを助手である私に手伝わせている。  プラス、マイナス、ルート、インテグラル、ファイ。  何でこんな事をしているのかというと。 「それにしても聞いたか?子ども達の言葉を…『数学なんか将来何の役に立つんですかー』だと。君達の周りにある全ての物は数学

          「数学ギョウザ」

          「違法の冷蔵庫」

           冷蔵庫の中で毎晩寝ている。  小さい頃からそうだったが、もうずいぶんと大きくなったので近頃では体を折り曲げるようにして眠っている。そうすると、なぜだか落ち着く。 「それは母親の腹に居た時と同じ格好だからだ」  大人がそう言った。  車が毎日来て大量にごみを捨てていくから島ができて、行くところのない人が来て、街ができたらしい。  僕が捨てられていたのは壊れた冷蔵庫の中で、住み着いている大人たちに助けられてどうにか生き延びてきた。 「いつかここに居るのは違法になる」  そんな日

          「違法の冷蔵庫」