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「違法の冷蔵庫」


 冷蔵庫の中で毎晩寝ている。
 小さい頃からそうだったが、もうずいぶんと大きくなったので近頃では体を折り曲げるようにして眠っている。そうすると、なぜだか落ち着く。
「それは母親の腹に居た時と同じ格好だからだ」
 大人がそう言った。
 車が毎日来て大量にごみを捨てていくから島ができて、行くところのない人が来て、街ができたらしい。
 僕が捨てられていたのは壊れた冷蔵庫の中で、住み着いている大人たちに助けられてどうにか生き延びてきた。
「いつかここに居るのは違法になる」
 そんな日はまだ来ていないのに、大人たちは口を揃えて言う。
 どこに居ようと僕は冷蔵庫がベッドだよ。
 僕の言葉に大人は笑った。
 普通、冷蔵庫は寝るところではない。そんなに布団を詰めてはいけないし、そもそも壊れていないものは内側から自力で開けることはできない。何より、寒くて何分と耐えられない、と言う。
 嘘だ。
 今度は僕が笑う番だった。
 冷蔵庫の中はとても暖かいのに。


(空白含め410字)

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