むくろ人形の怖い話18【庭のきれいな空き家】
『庭のきれいな空き地』
2020年1月5日にした話です。
期せずしてお正月中に禍DMをいただきまして。詳細変えつつお話しできればと思います。
私にDMをくれた方、仮にAさんとしますが、そのAさんが中学の時に体験した話だそうです。
割と地方に住んでいたAさん。遊びたい盛りにも関わらず、必死に高校受験に向けて塾通いの日々を続けていたそうなんです。
その通っている塾、割と家に近かったそうで、学校帰りはそのまま直で塾まで行くのが常だったそうです。
そんなAさんには、同じ塾に通うYさんというクラスメイトの女性がいたそうです。
同じ仲良しグループにはいるけれど、一対一で仲良くするには少し距離がある、そんな関係だったとか。
Aさんとしても、Yさんのことあまり得意ではなかったんだそう。
というのも、時折周りがうろたえるほど物をはっきり言う性格だったそうで、突然怒り出すけどその理由が周りに伝わりきらず困惑する…なんてことが一回や二回ではなかったそうなんです。
Aさん曰く「自分は気の弱い性格」だったそうで、Yさんと相対する時は緊張してしまうことが多かったと言います。
が、同じ塾ゆえ帰り道が一緒になることもしばしば。そんなときは少し気が重かったそうです。
そんなある日。AさんとYさんが学校の係で共に遅くなってしまい、日も暮れ、塾に間に合うか否か…という切羽詰まった状況になったそう。
その日の塾の先生は怖い人だったそうで、遅刻するといびられるのでなんとしてでも間に合わなければ、という気持ちで、Aさんが先導して走ったんだそうです。
「近道しよっか」
途中、AさんがYさんにそう伝えると、「え、うん」と、まるで緊迫感のない返事。
Aさん的にはYさんのうろたえなさと、自分の焦りとの解離に少しイライラしたそうです。
Aさんたちの塾は学校から続く道で見ると、学校のある丘を下った先を横切る大通りに出て、その大通りをしばらく左手に進み、その先の十字路をさらに左に曲がった先ある、いわばかなり大きな回り道をしないとたどり着けない位置にあったんだそうです。
しかし、実はそんなふうに大きく迂回せずとも良いルートが実はあったそう。それは正規ルートの間にある住宅街を抜けるルート。
ここを通ればかなりのショートカットになるんだそうです。
小走りの2人。
その住宅街を抜ける路地に差し掛かったところで、Aさんが携帯の時計をパッと見ると、学校からここまで急いだこともあり、割と間に合う時間。
「あ、大丈夫そうかも…!」
そうAさんが歩みを緩めながら振り返ると、一緒に小走りしていたはずのYさんは、すでに少し後ろをボーッと歩いており、Aさんの声も届いていない様子だったそう。
近づきながらもう一度「間に合いそうだよ!」と声をかけるも、Yさん「うん…」とそぞろな返事。
さっきまで間に合うか否かを走りながら話していたのに、路地に入ってから様子がおかしいんだそうです。
というか、横歩いてるのにこちらを向かず、反対側の家々、特に4つ続く空き家を眺めていたそう。
「え、またなんか怒らせたか…」と内心ドキリとしたものの、そうではない様子。こういう妙に気を使ってしまう波長なのが肌に合わないんだよなぁ…なんて考えつつ、気まずい沈黙のなか歩いていると、
「ここよく通ってたの?」
と突然Yさんが。
「え、初めてだけど…」
「もう通らんほうがいい」
「え、なんで…? なに…?」
Aさんが色々聞き返してもYさん答えてくれず、不審に思っていたときふと嫌な予感がしたそうです。
というのもYさん、割とそういう気配をよく察知する・してることを周りに言うタイプだったそうなんです。
中学という多感な時期は、いわゆる“霊感持ち”をアピールする人も少なくないですが、Yさんの場合は割と周りの冗談のノリを超えて反応することも多く、正直気味悪がってあまり触れないようにしていたそうです。
基本学校では送迎禁止なのに、彼女だけよく秋口に親が車で迎えに来る、それを学校が許可しているのも、そうした空気に拍車をかけていたそうです。
Aさん、そのこと思い出して口をつぐみ、ソロソロと歩いていると、突然目線をこちらに向けたYさんが「本当にもう通らんほうがいい」と念押ししてきたそうです。
そうこうしている間に2人は路地を抜けたものの、結局塾には遅れてしまい、先生にネチネチと怒られる羽目になったそうです。
翌日。
学校も塾も休みだったAさんは、仲の良い友人と遊ぶため、隣町まで電車に乗って移動していたそうです。
休日の昼頃。地方なこともあり車内にはカップルやお婆さんがポツリポツリといるだけで、人影はまばら。
Aさん、縦向きシートの窓側、カップルの座る座席の反対側にスッと座ったそうです。
隣町までは30分ほどかかるそうで、Aさん、流れゆく田んぼや川、山々を、なにするでもなくボーッと眺めていたそうです。
と、電車が山を抜ける長いトンネルに差し掛かり、ゴーッという音と共に景色は遮られ、窓がパッと鏡のように切り替わる。
肘をついた自分と、後ろのカップルが映る。
Aさんここで、ゾッとしたそうです。
反対側のカップル、乗った時は互いに身を寄せ合っていたのに、窓に映った2人の男の方だけが、こちらを凝視していたそうです。
目が合う。慌ててそらす。
なんで見てくるのか。面識もない。乗る時に揉めたわけでもない。
電車が揺れる。視界は反射した窓の景色のみ。嫌でも男に再び目がいく。
男は未だ凝視し続けている。
異様な状況に固まっていると、Aさんはとあることに気付いて、その緊迫は恐怖に変わったそうです。
男の口元、笑い出したと思ったそれがモゾモゾとブレてきて、Aさん曰く「ミミズや回虫が這ってるみたい」に見えたそうです。
とっさに目を瞑り、下を向いて、手をつねって意識を男から逸らす。
ガタン、ガタンガタン、ガタン、ガタンガタン。ガタン、ガタンガタン。
早くこの場から離れたい。そう思っていた時、突然、ムワッと空気が真横に人が近づいたように厚くなり、女の声で
「あそびきてくれたのに おもちゃださずごめんなさいねぇ」
「ちょくせつあえずに ごめんなさいねぇ」
「にわのていれがいそがしいの にわはだいじですからぁ」
「またきてくださいねぇ にわはきれいにしましたからぁ」
サァーっと鳥肌が立ち、手先の血の気が引いていく。
「昨日のだ」
とAさんは直感して、ひたすら目を瞑っていると、ふっと真横の気配が消え、電車はゴォっと音を立ててトンネルを抜け、まぶたの向こうが明るくなった。
目を開けてソッと隣見ると、カップルは乗った時と同じように身を寄せ合って寝ていたそうです。
Aさん、そこからグラグラとした感覚に襲われ、いつの間にか着いた駅のホームで吐いてしまい、友達と遊んだそうですが、その記憶はあやふやだそうです。
ボーッとしたまま家に帰り、ご飯を食べている時にふと“帰ってこれた”感覚がして、慌ててお母さんに「塾行くまでにある路地の、あの、4つ続く空き家って知っとる?」と聞いたそうです。
「なんでそんなこと聞くん?」
と言いながらも、お母さんは「確かに昔から空き家あったね」と答えたそうです。
Aさんがお母さんから聞いたところによると、あの4件続く空き家は昔から空き家、それこそお母さんがこちらに嫁いで来た時から空き家だったそうです。
でも庭だけは綺麗に整備はされている。
一度借家に出されていたこともあったそうですが、あっという間にまた空き家になっていたそうです。
遠回しに人死がなかったかも探ったそうですが「そんなんないわよ」と。
Aさんネットで調べもしたそうですが、お母さんの言う通りこれといった事件もなく、本当に普通の空き家なんだそうです。
「そういえば路地の先の運送会社があそこ潰して倉庫作ろうとしたことあったけど、いつの間にかいつもの状態に戻っていたねぇ」
次の日。
Aさん、そんなこともあって、Yさんにあまり目を合わせたくない気持ちで学校に来たそうです。が、ソッと教室に入ると、Yさんの方からタッと駆け寄ってきて
「やっぱ来たよね? 多分あたしが見たからだと思う。ごめん」
と話しかけられたそうです。
「え、あ、うん…」
戸惑いつつ席に座るAさんを尻目にYさんは
「やっぱあんたの方行くよね、自分でもそうするもん、その方が都合いいし」
「知られてさ、都合がよかったんじゃないかなぁー。なるほどって感じ」
と続けたそうです。
「ねえ、あいつになんて言われた?」
Aさん戸惑いつつ言われたこと伝えると
「やっぱそうやって誘うよねー!! やっぱさぁ、友達誘うのと同じだよ!!」
と満面の笑みで返されたそうです。
「なんで、私なの……意味わかんないよ…」
「いやそんなことわかるわけないじゃん。あんなキモいもんの考えてることあんたじゃあわかるのかよ?」
「まあでれないから大丈夫だよ」
Aさん、もう意味が分からなくて、それ以来口聞くのやめて、疎遠になったそうです。
Aさん、それ以降その家の前は通ってないそうですが、側にある空き地が猫のたまり場だったそうで、猫好きゆえにちょくちょく近づいてはいたそうなんです。
で、ある時、また野良猫に会おうとおもむいたら、野良猫の世話してる近所のおばさんが突然近づいてきて
「ちょっと前、猫突然みんな死んじゃったの!」
と唐突に睨みつけられながら告げられ、そこにも近づかなくなったそうです。
それ以来、Aさん良かった視力が途端に落ちてしまったそうです。
この出来事、Aさん実は最近まで忘れていたそうなんです。
でも思い出したのは、高校の進学先も異なり、完全に疎遠になっていたYさんから
「なんでかわかったから会わん?笑」
とLINEが来たからだそうです。
Aさん、すぐにブロックしたそうですが。
この話、予告もらってから、数日空いてからいただきました。
その理由は、帰省した実家で話をまとめていたら、家の近くで変な人影見たり、カメラが突然押してないモードに切り替わったりと、妙なことが続いて怖くなったからだそうです。
おわり
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