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井上智公
2021年4月15日 18:25
都会の喧噪を離れたリゾート地たけのこの里に、ルヴァンという名の王子がいた。ルヴァンはことあるごとにパーティーを催すことでお馴染みのリッツ家の跡取り息子で、顔にあばたが多くその皮膚はところどころ塩を吹いている。 かつて隆盛を極めたリッツ家も、ルヴァンの代になるとすっかり勢いを失っていたが、そんなときに限って危機は訪れるものだ。 先ごろ、海の向こうの無人島に聳え立つきのこの山に暗黒の帝王ダー
2021年4月13日 15:09
新部署に配属されたばかりの越智裕三が、スーパーのおやつ売り場でお菓子のパッケージをひとつひとつ手に取りながらひとりごとを言っている。「『ポッキー』か……これはやっぱり、食べたとき鳴る音からそう名づけられたんだろうな……だとすれば確実にアウト、と。えーっと『ポテトチップス』は……ポテトのチップス……って以外に理由はないだろうから、これもアウト。ああ、『じゃがりこ』ね。もちろん原料がじゃがいもだ
2021年4月7日 17:57
竜は素直じゃない男だ。彼は産道の中ですらも、「産むなよ、産むなよ」と心の中で念じていたという。もちろん産まれたくないわけではなかった。だが本当に産まれたかったのかどうかは、物心ついていないのでよくわからない。 竜の少年時代には苦い思い出が多い。ある日、昼休みのドッヂボールに夢中になりすぎた小学五年生の竜とクラスメイトたちは、遅れて教室へ突入すると廊下に並ばされ、担任の男性教師に説教を喰ら