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20年間一切ブレずにボケ続ける増田こうすけ、じつはAI説『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』

2000年から連載が始まり、タイトル変更後を含め19巻のコミックスが出版されている『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和(以下:ギャグマンガ日和)』。11/4に待望の新刊が発売されました。私は中学生の頃から大好きな漫画なのですが、周りからはこんな声を耳にします。

「え?ギャグマンガ日和ってまだやってるの?」
「名前は知ってるけど読んだことない」
「絵が個性的でちょっと無理・・」
「ギャグマンガ日和の"GB"って何?何が変わったの?」

そんなあなたに捧げる、今更聞けない『ギャグマンガ日和』の魅力を、今日はお伝えしたいと思います!!

まず、2015年からタイトルに「GB」が加わりましたが、以前の面画の内容と何も変わりません。「知らないうちにGBがついちゃって、なんだか遠い存在になってしまった・・」と感じていたあなた、ご安心ください。安定の歴史上の偉人キャラ、安定の不条理ギャグ、安定の増田こうすけ劇場のステレオタイプが展開されています。このレビューでは、たくさんある魅力のうち厳選した3つをご紹介していきます。

魅力その1:歴史の勉強ができる!賢くなれる!

「松尾芭蕉の俳句で好きな俳句は?」「好きな印象派の画家は?」と聞かれてあなたは答えられますか?

「私は断然最上川。”五月雨を集めてはやし最上川”・・ってね。」
「印象派といえばルノワール、セザンヌ、ピサロ、モネ、ドガだね。うーん、私は特にドガが好きかな。パンチ効いてて。」

『ギャグマンガ日和』を読んでいれば、こっそりググることなく、こんな風にスマートに答えることができるんです。

増田こうすけ先生の手にかかれば、歴史上の偉人もデフォルメと脚色を加えに加えられ、全く鼻につかないけれど、人としてダメダメすぎる描き方をされます。ダメな人はいつの時代も愛される。キャラクターへの愛しさからいつの間にか歴史・人物名を覚えてしまう、恐ろしいまでの刷り込み学習効果があるのです。増田先生が題材に扱う時代、国の範囲はとても広いので、網羅的に学ぶことも可能です。

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『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』(増田こうすけ/集英社)3巻より引用

ギャグマンガ日和は、日本財団主催の「これも学習マンガだ!」でも取り上げられています。つまり私が勝手に提唱しているわけではありません。学べるのです。

魅力その2:増田こうすけ先生AI疑惑に馳せる近未来へのワクワク

「ギャグマンガ日和の絵が苦手」という声もたまに耳にしますが、私は20年以上連載を続けて、ここまで絵が変わらない漫画家さんを知りません。

さらに絵が変わらないことに加え、「増田こうすけ劇場」のステレオタイプというものがあります。読んだことない設定、新しいキャラクターのはずなのに、「これ知ってる」と感じさせるブレることのない「増田こうすけ劇場」の軸があるのです。

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『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』(増田こうすけ/集英社)13巻より引用

TEZUKA2020」という手塚治虫先生の全キャラクター、ストーリーをAIに学習させ、新作を描くというプロジェクトが話題になりましたが、私はたまに「増田こうすけ先生はAIなのではないか?」と思うことがあります。

AI化をしやすくするための、あの決して上手とは言えない独特のタッチの絵、尖ったキャラクター設定だったとしたら…? 突然『ギャグマンガ日和』のSF感、近未来へのワクワク感が高まってきますね。是非1巻から一気読みをして検証してみてください。

魅力その3:『ギャグマンガ日和』の「現実逃避させ力」がもたらす精神安定効果

最後にお伝えしたい、この漫画の最大の魅力は、何の負荷もなく、一瞬で読者を現実から遠い世界に誘ってくれる、「現実逃避させ力」です。

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『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』(増田こうすけ/集英社)10巻より引用

『ギャグマンガ日和』のキャラクターは、歴史もの、パロディもの、増田先生オリジナルのものなどジャンル問わず、異様に卑屈で、理不尽な目にあっている、モラルレベルが底辺なひとたちです。1ミリもキラキラしていない彼らが、超非日常な世界で全力で生きているのが『ギャグマンガ日和です。読み手は現実と全く異なる遠い世界に連れて行かれながらも、キャラクターの心の機微に振り回されることはなく、疲れない。下ネタや汚いネタもなく、さらに「増田こうすけ劇場」のステレオタイプがあることで、新巻を読んでいても、世界観に入る込むためのパワーを要しません。

この「現実逃避させ力」は、忙しい現代人の精神を安定させる効果があります。どうしても学校に行くのが嫌だった中学時代の通学電車の中、就活の最終面接で緊張して眠れなかった夜、心が疲れすぎて何もする気力がわかなかった新卒時代の週末、どんなときも私と一緒にいてくれたのは、他でもない『ギャグマンガ日和』でした。

なかなか遠くにいけない閉塞感と、不安なニュースだらけの日々。今の日本人が必要としているのは、『ギャグマンガ日和』であることは間違いないですね。

WRITTEN by 本村もも
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