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血と怪奇と美少女に彩られた漫画『死人の声をきくがよい』は、ホラー版『うる星やつら』なのか?

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

本作は、主人公が日々さまざまな猟奇殺人・心霊現象・超常現象に遭遇する連作短編のホラー漫画である。

主人公は生まれながらの霊感体質で、いわゆる「視えてしまう」タイプ。

それゆえに余計な怪事件に巻き込まれがちで、基本的にひどい目に遭う話が多い。にも関わらず、彼が不幸に見えないのは、彼の周りになぜか美少女が次々と集まってくるため。

メインヒロインである涼子(幽霊)を始め、

主人公をトラブルに巻き込む巨乳のオカルト研会長。

霊感体質を売りにしてるダーク系アイドル。

後輩の内気な美少女。

友人の妹でおませな女子小学生等々……。

ホラー漫画としては不自然なほどに、主人公を取り巻く華やかな女性関係図が展開する。

あとがき漫画によると、担当の編集者から「主人公の男の子が幼なじみの幽霊やいろんな女の子に囲まれてキャッキャウフフな内容の作品」をオーダーされたとの事。

要するに本作は、楳図かずおや伊藤潤二など、正統派ホラー美少女の系譜を受け継ぎながら、ラノベ的ラブコメ要素を盛り込んだ新機軸のホラー作品なのである。

かつてギャグとSFを「ラブコメ」という接着剤で結合させた『うる星やつら』のように、本作はこの噛み合わせの新しさが奇妙な心地よさを与えてくれるのだ。

生首ころがり、臓物ぶちまけられた流血の惨状で、ほのかな希望のように浮かび上がる幽霊美少女の姿に「ドキッ」とときめいて欲しい。

WRITTEN by 新里 裕人
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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