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『団地ともお』小田扉の新境地。心が小4男子の天才犬が紡ぎ出す、孤独と家族と友情物語『横須賀こずえ』

【レビュアー/本村もも】

こんにちは。今回は16年間の『団地ともお』の連載を終えた、小田扉先生の次の連載作品、『横須賀こずえ』をご紹介したいと思います。

本作も安定の小田扉ワールド全開で、私はこれでともおロスを乗り越えることができました。

主役のこずえは、犬です。推定5才のこずえは、王島家に拾われる前の記憶がありません。

性に合っている。
散歩に出るたびにこずえは思う。
性に合っている街だ。

『横須賀こずえ』は、自分は一体何者なのか自問自答するこずえの視点で進んでいくため、全編を通じてどこか叙情的で哀愁を感じます。

こずえは実はとても知能レベルが高く、人間の小学4年生の男子と同じくらいの知能を持つ、天才犬です。愛しさと切なさにプラスされた、この小学生男子の要素がまさに本作品の醍醐味です。

やっぱり気持ちいい。
ずっとこうしたかった。
これからも一緒に坂を
かけおりて行きたい。
そう思う
こずえだった。

この言葉は、あえて便秘になり、堅くて丸いコロコロのフンを坂道ですることで、転がったフンを飼い主(こずえを拾ってくれた王島家の長男)に追わせて、「一緒に坂を駆け降りたい」という願望を叶えたシーンの言葉。

小4男子並みの知能を、精一杯絞って考えたこずえの、うんこ坂道コロコロ作戦は、おばかで滑稽なのに、心がぎゅっとなる、『横須賀こずえ』の魅力、そして小田扉先生の魅力が最大限に詰まった、大好きなワンシーンです。

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『横須賀こずえ』(小田扉/小学館)1巻より引用

前作の『団地ともお』の主人公・ともおが、小学4年生男子のサンプルとしてカメオ出演していたり、横須賀の実際にある場所が舞台となっていたりと、細かい見どころも満載です。

また、こずえが犬の友だちと過ごすときは、こずえ自身が会話をしていて、人間の家族の前とは少し違った、強気で姉御肌なこずえも、可愛くて愛しいです。

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『横須賀こずえ』(小田扉/小学館)3巻より引用

過去の記憶がないことで、孤独を抱えるこずえが、少しずつ王島家の一員となり、街の犬たちと友情を築き、横須賀という街に馴染んでゆく本作。

読めばあなたも必ず、こずえをたずねて横須賀に遊びに行きたくなる、そんな一作です。