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「お前、ホモ動画観てたん?」その日、僕は、たぶん死んだ『しまなみ誰そ彼』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/堀江貴文

私は10年程前に選挙に出たことがある。その舞台になったのが広島6区。広島県尾道市や三原市が選挙区だった。相手は強敵亀井静香。完全アウェーでの闘いだったが、善戦したものの落選することになった。

その時の縁で、地元の造船会社の人達と仲良くなり、尾道の町おこしに協力している。

瀬戸内海のちょうど真ん中に位置する尾道は、隣の鞆港がちょうど満潮干潮時に中心になることから、豊後水道や紀伊水道から満ち潮に乗って鞆まで来た船が引き潮にのって逆方向に進むために、ちょうど潮待ちの停泊地であり、瀬戸内海の交易の中心都市として発展した。住友銀行も最初は尾道に本店があったらしい。

その後の鉄道やモータリゼーションの発展で、交易の中心都市としての役割を終えたため、昭和初期までに作られた町家は空き家となり、風光明媚な坂の途中に点在している。

その空き家の再生がここ数年のトレンドだ。

私もその一つのプロジェクトを応援していたりする。そういう坂は、映画監督の大林宣彦の尾道三部作によく登場する素敵な場所だ。その尾道の空き家再生プロジェクトが、この漫画の舞台である。

本作の主人公はゲイの男の子。密かに同級生のイケメン男子に恋をしているが、カミングアウトできていない。

偶然立ち寄った謎の女性「誰かさん」になんとなく惹きつけられ、謎の世界に足を踏み入れていく。

空き家再生プロジェクトに関わるレズビアンのカップルなども登場し、少しずつ主人公がその性的指向を露わにしていく感じで展開は進んでいく。

歴史ある街なので当然ながら保守的な人たちが多い土地柄で、あのとき、かなりの知名度があった私が落選するような土地柄である。

だからこそ自分がマイノリティであることをカミングアウトすることは相当にハードルが高いのではないか。そんな物語的な面白さと、よく知っている尾道の街並みが出てくるのもこの漫画の魅力だ。

この漫画に人気がでると、尾道に旅行しにくる人も増えてくるのではないだろうか。