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Making Coffee Black (again)

STANDARTより

 今回の記事の題名は、コーヒー誌『STANDART』の記事の一つから引用しています。本誌については先日記事にしておりますので、よければご覧ください。

本誌の最新号にて、これまで深く考えたことのなかった興味深い記事がありました。今回はその記事を読んで感じたことを書いてみたいと思います。


コーヒーと人種

 コーヒーの知識をそれほど必要としない人々にとって、コーヒーと黒人の関係はどのようなイメージがあるのでしょうか。コーヒーを生産している国の人種、というのが一般的ではないかと思います。実際に、コーヒー需要者のほとんどが白人であり、供給者(生産者)のほとんどが非白人であるということに間違いはありません。しかし、おかしなことに、生産国のコーヒー業界の参加者のほとんどが白人の国もあるそうです。この状況は、白人が利権を獲得していることや、生産者が過小評価されていることなどを表していると言えます。本誌によると、非白人への過小評価は、奴隷制度が関係しているとのことです。


奴隷制度から見えるもの

 世界最大級のコーヒー生産国であるブラジルは、その規模に発展する過程で、大量のアフリカ人奴隷が強制移住させられた国でもあります。つまり、コーヒーの発展には奴隷となってしまったアフリカ人の貢献が不可欠であったということです。にもかかわらず、コーヒーの発展に奴隷制度が大きく関わっていることはそれほど多くの人に認知されていません。それどころか、現在のブラジルのコーヒー業界にアフリカ系ブラジル人はほとんどいないようです。これほどコーヒー産業の発展に貢献したアフリカ人が現在ほとんど見かけられないのは、”歴史の記憶を剥ぎ取”ったからだと本誌では述べられています。奴隷制度という歴史を見えなくするために、コーヒー業界からアフリカ系を排除しているのでしょうか。


行動する人々

 この”剥ぎ取られた歴史”に対抗する人々がいるようです。数少ないアフリカ系ブラジル人家族が栽培する豆に、奴隷制度に関する年数を冠した名前をつける人がいます。豆の販売に際して、商品説明に正しい歴史を伝える意味を含ませています。また、コーヒー業界に黒人要素を再導入し、歴史を正すことを目標にプロジェクトを進める人もいます。プロジェクトの中には、ヒップホップアーティストとコラボし挑戦的なメッセージを込めた商品などを売り出しているようです。このような活動を通して、私にもコーヒー業界の現状が伝わったことは、彼らの行動に実績が伴っていることを示しているのではないでしょうか。


記事を読んで

 私自身コーヒーと奴隷制度の関係はほとんど知らず、過去、奴隷となった人々がコーヒー産業を盛り上げた、という程度の知識でした。つまり、”剥ぎ取られた”歴史しかみていなかったということです。奴隷制度の悪影響は、当時だけでなく、現在にも潜在的に存在するということがわかりました。コーヒー業界は、現在までも生産国の発言力が非常に弱いです。そのため、生活水準の低さや、歴史の改ざんにたいして声を上げることができません。現在注目されているトレーサビリティやダイレクトトレードなども、消費国が安定して高品質のコーヒーを飲めるように、という意志のもと考えられたものなのかもしれません。生産国が伝えるべきことを発信できる業界に変わらなければ、業界の衰退は早まるばかりでしょう。世界でも上位のコーヒー消費国日本、その消費者の一人である私にできること。まずは、正しい知識を認識し、潜在的な問題を捉えることだと思います。表面的に見えているものが全てではないということを念頭に置き、さまざまな事情が複雑に絡み合っていることを理解して知識を深めなければいけません。


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