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観光のデジタルシフトはどう進むのか?

こんにちは、外国人目線の訪日デジタルマーケティング事業を手掛けるTokyo CreativeでCOOをしております中川(Twitterはこちら)です。ここ最近、「観光においてデジタルシフトが重要だ!」「観光のDXが来るぞ!」みたいな話が良く出てきます。もちろんデジタルは重要と考えているのですが、そもそも、「デジタルシフトってどういう意味?」「なぜ観光においてデジタルシフトって重要なの?」という明確な答えが無いままに「デジタルシフト」って大事だよね。という議論が多いなぁ...と感じている今日この頃です。

自分の思考を整理するうえでも、「観光のデジタルシフトはどう進んでいくのか?」をテーマにnoteを書いてみようと思います。

正直、デジタルってどうでもいい

デジタルマーケティングをやっている身としては、逆説的な話になってしまうのですが、正直デジタルってどうでもいいのです。デジタルは枝葉です。重要なのは結果を出すことであって、企業であれば売上が上がること自治体であれば地域に集客できて、地域経済が活性化することが重要なのです。

売上、地域が活性化するのであれば別に手法は何だっていいわけです。開口一番「デジタルが素晴らしい」「全てデジタルにすべき」という論調も多いことは事実なので、あくまでデジタルは枝葉であり、結果を出すための手法であることを強調したいです。

まずやるべきは売上に近い場所からの整理

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まずやるべきは、売上に直結することです。観光でいうと、まずは何よりも大事なのは地域の観光資源であり、磨き上げに他なりません。売るものが無くてどうやってプロモーションするのでしょうという話です。この順番を間違えてしまうといくらプロモーションしたとしても集客につながらない、もしくは集客できたけども満足度が低くてもう二度と行きたくない!という顧客体験になってしまいます。

ですので、地域の観光資源はどのような人たちに魅力に映るのか?実際に訪れてもらっている人はどんな人たちなのか?その人たちは何に満足しているのか?この整理が非常に重要です。結局、観光も突き詰めると問題解決です。「誰を」「どんな観光資源で喜ばせているのか?」この明確な解が前提として重要だと考えます。

BtoBの例になりますが、BtoCでも非常に参考になりますので、大好きな小島さんの記事をシェアします。

リアル(オフライン)よりも、デジタルを重要視すべきはウソ

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サービスの整備ができたらいよいよ情報発信をして集客をしていくフェーズになります。今の時代はデジタルだ!みんなデジタルを使っている!在宅勤務でデジタルを使わないといけない状況になった!だから、デジタルシフトすべきだ!みたいな話の文脈で、「デジタルシフト=リアルをデジタルに置き換えよう」「デジタルがとにかく今の正義で潮流なんだ、オフラインよりもデジタルだ!」というニュアンスを感じることが多々あります。

結論、上記は間違っていると考えます。リアルはリアルの良さがあるし、何よりも今回の自粛によってリアルの良さ、尊さをみんな再認識したはずです。それと同時に、わざわざリアルじゃなくても良いことにも気づきました。わかりやすいのは、会議です。今まで会議室を予約して、足を運んで、実施していたことがウェブ会議でも「できるじゃん」と実感できたことは大きな変化でしょう。みなさんも今まで移動に往復1時間、打ち合わせに1時間かかっていたものが、1時間で終わって業務効率が上がったことを体感されているはずです。

デジタルシフト=デジタルを使って効率化すること

私はデジタルシフトとは、「デジタルを使って効率化すること」だと考えています。例えば、先ほどの会議の例でいうと、移動時間の短縮により提案の数が増えたり、新しいアイデアを考える時間が増えることが売上の向上につながります。また、無駄な残業も減ってコストダウンにつながります。つまり、デジタルを使って効率化できていると言えます。

注目すべきは「効率化」という視点です。先程の会議の例でも、ウェブ会議の良いところは移動時間の短縮、口頭、資料を使った打ち合わせには秀でていると考えられます。一方で、アイデア出しであったり、今までホワイトボードに可視化して進めていた会議は今のところ不向きだと感じています。ですので、会議はデジタル化するのが良い!ではなく、目的に応じてデジタル化の向き不向きも整理していくことが重要になってきます。

このように「デジタルで効率化できる」ものをデジタル化していくことがデジタルシフトの本質だと捉えています。

コロナ危機で、観光はどうデジタルシフトするのか?

さて、今までデジタルシフトの定義をしてきました。では、コロナ危機によって観光はどうデジタルシフトしていくのでしょうか?みなさん気になるポイントかと思います。まずは、データからコロナ危機によって、ユーザーの行動がどう変わるのか?を考えていきます。

以下は、トリップアドバイザーさんのデータです。非常に参考になりますのでみなさん一読してみてください。 参照:https://view.highspot.com/viewer/5ec603a4a2e3a93de613599e

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まとめると、「旅行には近場から行きたい」「行く際には、衛生的に、安全・安心なのか確かめたい」「海外旅行に行くのは長期化する」ということが読み取れます。

これまでの観光におけるステップ

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これまでの観光はざっくりいうと上記のようなイメージで「認知、理解、購買/来訪、ファン化」というステップでした。そのスパンも短く、国内なら数日、海外からの訪日客なら欧米で長くてだいたい1年というスパンでこのステップが完結していました。ですので、情報発信も地域の魅力を伝えていくことで、視聴者は「よし行ってみよう!」というアクションにつながっていました。

これからの観光におけるステップ

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データより、コロナ危機によって、安心・安全を確かめたいニーズが顕著に出ています。また、旅行に行くタイミングも長期化する可能性が高いと想定されます(過去記事もご参考まで)。「安心安全を確かめたい」「旅行に行くタイミングの長期化」ニーズから、購入/来訪の前に新しく出てくるステップがあります。それが「疑似体験」です。

疑似体験とは、自分が行っているかのごとく感じられる体験を指しています。例えば、今新しい潮流になりつつあるオンライン体験、ライブ配信が挙げられます。コロナ危機によって、こういった疑似体験のデジタルシフトが起こる可能性が高まっていると想定しています。

オンライン体験

オンラインで体験してもらうコンテンツがこの自粛期間に出てきています。FUJITAYAさんのオンライン宿泊、私も参加させていただきました!また来週、参加予定の琴平バスさんのオンラインバスツアーは満席御礼!

今後、メジャーどころのairbnbのオンライン体験Why Kumanoさんのオンライン宿泊にも参加させていただこうと思っています。

オンライン体験のメリット

ユーザー目線のメリット:疑似体験で疑問がクリアにできる

トリップアドバイザーからのデータでも「行く際には、衛生的に、安全・安心なのか確かめたい」というニーズが見えてきています。このニーズにデジタルを活用することで応えることができます。例えば、オンライン宿泊では自分が実際に宿泊する部屋、アメニティまわりや、お風呂場などを見ることができますし、その場で質問することもできます。事前に確認できることで、安心だから、ここに宿泊しよう!という流れを促していくことができると考えられます。

事業者目線のメリット:未来の顧客づくりができる

事業者視点でいうと、最終的なゴールはリアルに体験してもらうことです。ただ、今までと違って、来るまでのスパンが非常に長くなることが予想されます。そのため今までのプロモーションをしても、旅に行きたい!となった時には忘却してしまう可能性も考えられます。オンライン体験はその点、実際に五感を使って体験するので、記憶に残りやすいことはもちろんのこと。例えば、宿であれば未来の宿泊券に絡めるなど、最終的なアクションにつながる顧客設計とすることで未来の顧客を作っていくこともできます。

ライブ配信

今後、ライブ配信のニーズも一層高まっていくと考えられます。視聴者がライブ配信を観ながら、衛生面に関するQAをして更に理解度を高めてもらったり、食事しながら通販につなげていく、宿の紹介をしつつ購入を促していくといったイメージです。

安心、安全を表現するには「フェイクじゃないことを担保する必要があります」そのため、「編集を挟まないライブ配信」が主流になっていく可能性があります。ライブ配信プラットフォームのTwitchでも元々はゲーミングが主流でしたが、In Real Lifeという日常生活をライブ配信していくスタイルの人気が高まってきています。

前職のIsobarでも6年前にFiatでLive Storeという取り組みをしていました。世界観がわかりやすい2分程度の動画なので見てみてください。近い将来、こういった時代がやってくるのでは?と推察しています。

まとめ

・デジタルは枝葉、重要なのは売上をどう向上させるか

・売上から逆算して整理していくことが重要、まずはデジタルでの情報発信よりもサービス、地域を見つめ直すべき

・デジタルシフトとは「リアルをデジタルに置き換えることではない」

・デジタルシフトは「デジタルを使って効率化することが本質(リアルよりもデジタルが優れているという話ではない&効率化につながらなければ意味がない)」

・コロナ危機によって、旅行者は「安心・安全」が重要視するようになった

・コロナ危機によって、旅行者が来訪するタイミングが長期化した(こちらの記事もご覧ください)

・「安心・安全」について理解してもらう、「来訪の長期化」の解消は疑似体験がキーになる

・旅行者視点:疑似体験=オンライン体験、ライブ配信によって「安心・安全」に対する不安を解消できる

・事業者視点:疑似体験=オンライン体験、ライブ配信によって未来の顧客づくりができる

私たちもこれから様々な事業者の方々と新しいチャレンジを進めていきます!また、みなさんに有益な情報をシェアしていくので、これからもよろしくお願いします。Twitterもやってますのでつながっていただけますと幸いです。お問い合わせはtomohiro@tokyocreative.jp まで。それでは!



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