With/Afterコロナで観光は今後どうなるのか?
はじめに
Tokyo Creativeという、訪日インバウンド集客をしている会社の取締役COOをしております中川と申します。最近、官公庁・自治体の観光セクション、DMOの方から、今後インバウンドはどうなるのか?今、何をすべきなのか?というご質問、提言を求められてることが多くなりました。話す時間に限りがあったり、あまりにも多くの方にこの件についてご質問いただくことが多いため、自分なりの考えをnoteにまとめることにしました。※あくまで個人の見解になります
国内、インバウンドともに観光産業は大打撃
自治体様、DMO様とオンラインで情報交換をさせていただく機会が増えております。現状についてお伺いすると国内、インバウンドともに旅行者は、おおよそ9割減、インバウンドに至っては9割強の減少率と伺っております。壊滅的な状況で、観光地の飲食店、宿泊施設は非常に厳しい状況とのこと。
JNTOのデータでもインバウンド(入国)、アウトバウンド(出国)ともに壊滅的な状況がわかるかと思います。
https://statistics.jnto.go.jp/graph/#graph--inbound--travelers--transition
経済危機により、さらに観光業は厳しくなる可能性
現状、飲食店、宿泊、観光業などが窮地に立たされているように見えますが、今後はコロナとは縁遠い企業にも波及する可能性が考えられます。倒産する企業が増えると銀行が貸し渋りを始めます。
すると連鎖的に関連する企業の倒産が増え、倒産まではいかなくても賃金カット、ボーナスカットなどが起きて個人の消費が落ち込む可能性ことが予想され、投資も冷え込みます。
つまり、「旅行どころではなく、衣食住を最低限守らないといけない状況が全世界的に起きる可能性」があります。しかしながら、観光業は過去にSARS、9.11、リーマンショックからも立ち直ってきました。過去の歴史から今回、インバウンド需要がいつ戻ってくるか?考えてみたいと思います。
歴史から学ぶインバウンドの回復期
こちらはUNWTOのデータです。コロナ危機とどう向き合うか、長期的に何をすべきかの提言まで書かれているので非常に参考になります。
こちらのデータによると、SARSからのインバウンド需要の回復は5ヶ月、9.11は6ヶ月、リーマンショックは10ヶ月を要したとあります。
では、今回も半年でインバウンド需要が戻ってくるのかというと、非常に楽観的かと思います。SARS、9.11はエリアが限定的であったことが今回のケースとは異なる点です。
つまり、影響を受けなさそうなエリアであれば観光しても大丈夫なのでは?という力学が働いた可能性が高いと推察されます。しかし、今回のようにほぼ全世界的に感染が拡がってる場合は旅行の需要回復は遅れると推察されます。
http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/cumm-0926.pdf
では、あの全世界的に影響を受けたリーマンショックはどうなのか?観光需要が戻るまで10ヶ月を要したとあり、では10ヶ月で戻るかというとそれもまた、懐疑的だと思います。
当時は中国が4兆元政策によってGDPの成長に拍車をかけた時期です。アメリカがマイナス成長に対して、中国は+9.4%を維持しています。国内の成長によって、購買欲の高い人たちが日本にたくさん訪れて爆買ブームを牽引してくれたことにより、インバウンドの需要を戻し、さらに拍車をかけてくれる状況になっていきました。
ですが、今回、中国はGDPが初のマイナス成長。また、コロナウィルスの震源地が中国ということもあって、V次回復は難しいのではないかという見解もあり、リーマンショック時のような爆買を期待することは難しい状況です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200424/k10012403331000.html
いつインバウンド需要は戻ってくるのか?
結局いつになったらインバウンド需要は回復するのか?ということなのですが、1年以上は掛かるのではないかと想定します。
以下は、現状の鎖国状態をいつ頃に戻し始めるのか?というUNWTOのデータになります。ポジティブなシナリオでもプラスマイナスゼロに戻るのは12月以降だというデータです。ワーストシナリオだとより後ろにズレ込むとあります。
なぜインバウンドの復帰は1年以上かかるのか?
理由①:経済が悪化し海外旅行どころではなくなる
これまで書いてきたように、今回の問題は局地的な問題ではなくほぼ全世界的な問題であり、経済の悪化により旅行に行くよりも優先順位が高い衣食住、貯蓄に時間とお金を集中させと見込まれるからです。
理由②:感染のリスクを避けられない
コロナに感染するリスクはゼロにはできません。そのため、お金に余裕があっても海外から遠出をして日本にやってくることは難しいと想定されます。日本人の人気の海外旅行先である、アメリカ、韓国、中国、イタリア、フランスなどに好んで行こうとする人は少ないと見込まれるのと同様、外国人からすると日本もリスクのある国と見込まれる可能性があります。
理由③:ワクチンの開発に時間がかかる
最終的にコロナが収束し、旅行へ行こうという機運が高まるにはワクチンができた状況がゴールだと考えられます。これは星野リゾートの星野さん、堀江さんの対談でも語られています。
ワクチンができる前の段階では、どうしても感染のリスクが頭をよぎるため積極的に外に出ていこうという機運が高まりにくいことが予想されます。
※クローズアップ現代でも星野さんがお話しされていたようですのでシェアします(5/18更新)
短期、長期でやるべき観光施策とは?
やるべきは、短期施策「県内→地域ブロック→全国へと需要を回帰させる経済施策」長期的施策「観光資産の形成」です。それぞれ説明していきます。
短期施策:県内→地域ブロック→全国へと観光需要を回帰させる経済施策
こちらも先程の動画で星野さんが言っていることですが、以下のイメージで観光需要は回復していくと想定されます。
なぜ、市町村、県で施策をやるべきなのかというと、成果が出やすいからです。
まず、移動のハードルが格段に違います。30分で行ける場所と飛行機で1日かけていく場所では、来訪の確率が大きく変わります。
また、非常事態宣言が出たことで、県をまたいだ移動も制限されていることから、県外の人お断りプレッシャーの問題も今後しばらく残っていくと想定されます。そのため、まずは、近郊の市町村、県単位で経済の活性化を行うべきだと考えます。
別府では「別府エール飯」という美味しいご飯のお持ち帰りプロジェクトをやっています。キャッチコピーも「#別府エール飯」うまいはコロナに負けない。と、秀逸!こういったローカルを盛り上げる面白いプロジェクトをガンガン攻めてやるべきではと思います。地域経済の活性化はもちろん、横の連携も深まり、ゆくゆくは受け入れ体制構築の際にも役に立つと想定されます。
コロナの非常事態宣言解除後、収束段階で県、地域ブロック・全国での観光内需を換気する大体的なキャンペーンを実施を検討すべきだと考えます。キャンペーンを実施し、観光の内需を喚起していかなければ、経済が止まっている観光地はさらに厳しい状況に追いやられてしまいます。
プロモーションに関してはアクションにつながりやすい近郊の国内中心に実施。インバウンドは、後述しますが今後の資産となるデジタル施策を行っていくのが重要と考えます。
今後も官公庁・自治体の観光セクションの方、DMOの方と解決策について議論をしてまた、アップデートしたいと思います。
長期:観光資産の形成
観光資産の形成とは、具体的に4つあります。①デジタル資産の形成、②デジタル人材の育成、③観光コンテンツの磨き上げ、④新しいビジネスモデルの考案
①デジタル資産の形成
こちらはアメリカのデータになりますが、コロナ後にソーシャルメディア視聴の割合が増えているというデータです。
私たちの運用しているYouTubeアカウント(Tokyo Creative PLAY)も流入が増えてきている傾向です。
このように世界的にStay homeとなったことで、ソーシャルメディアへの接触率が上がってきている傾向が見受けられます。ソーシャルメディアへの接触も高まっており投稿は有効だと考えられますが、意識すべきは資産となる投稿です。
例えば、YouTubeの関連動画や検索でヒットする記事のようにデジタル上で資産になるコンテンツを作っていくことで、今すぐではないが今後旅に行きたい需要を喚起していくこと。
また、日本に行きたい!と、具体的な需要になった際に、YouTubeの関連動画や記事の検索の網を貼っておくことは、今からでもやって意味があることだと考えます。需要が回復してきた際に、広告素材として活用することも可能です。即効性は無くても資産となるデジタルコンテンツに投資していくことは、需要回復のタイミングで意味を持ちます。
反対にいくらソーシャルメディアにユーザーが接触しているとはいえ、やるべきでないのは資産にならないデジタルプロモーションです。具体的には、今すぐ来てね!というようなキャンページへ誘引する広告、リーチ・認知を促すだけの広告などです。こういった施策は今おこなっても、すぐに顧客から忘れられてしまうので砂漠に水をまくような行為になってしまいます。
②デジタル人材の育成
With/Afterコロナにより今後さらに重宝されるのがデジタル人材です。三密を避けるためにコンベンションや、団体旅行が避けられるようになり、FIT(個人旅行)へのシフトがさらに加速することが見込まれます。
また、世界的なStay homeにともない、ソーシャルメディア、インターネットへの接触率の向上、今までデジタルを使ってこなかった中高年〜シニア層へもデジタルの波は波及していっていると想定されます。私たちも今までオフラインで対面が基本だった、自治体様との打ち合わせもオンラインのウェブ会議で開催されるようになりました。
上記によってさらに観光×デジタルを理解している人材の価値が高まっていきます。インバウンドであれば、観光×デジタル×外国人に刺さるコンテンツを理解した人の価値がさらに加速すると考えられます。UNWHOの資料でもデジタル人材の育成がキーワードに入っており、今後より一層FITのデジタルマーケティングが注目されていくと見込まれます。
③観光コンテンツの磨き上げ
様々な地域に出張で足を運んで感じることですが、「観光資源が何もない」と担当者がお話される場所でも工夫次第で面白くなりそう!というエリアにたくさん出会ってきました。集客しても呼ぶことが難しい今だからこそ、地域の観光資源を見つめ直し、観光資源を磨き上げるチャンスと捉えると良いのかもしれません。
私たちの会社にも外国人視点で今一度、観光資源の見直しをしたいというお話もあり、在日外国人だからこそできるファムトリップで在日外国人層を狙っていくなどの施策を収束後に計画していたりします。
④新しいビジネスモデルの構築
観光事業者は、国内だけ、インバウンドだけではなく、多様なポートフォリオが必要であることを今回のコロナから学んだと思います。インバウンドと一言で言ってもアジアよりだった戦略からも今後、脱却していく必要があると考えられます。参考になるデービットアトキンソンさんの記事を紹介します。
最近盛り上がりを見せているのがオンライン体験。ただ、注意しないといけないのがリアルをそのままオンラインに置き換えること。これは川那さんがめっちゃいいこと言っているので、こちらの記事を見てみてください。
観光におけるオンライン体験の勝ちパターンはまだ見えていないので、これからオンライン体験を体験しまくろう!と思っております。また、こちらのnoteでシェアしようと思います。
一方、教育の面ではこれは面白い!というオンライン体験をしました。大学時代にお世話になった筒井先生がサポートされている京都工芸繊維大学の授業をZoomで受けました。
一言でいうとZoomの強みを活かしまくっている!オフラインの授業とは異なる価値提供!でした。
Step1:宿題をオンライン(YouTube)で出す
・学生は動画を見て予習をして当日までに課題に回答
Step2:授業の初め、パワポの資料で概要について教授から学生へのインプット
・途中途中で受講者の意見をコメントで拾うスタイルで展開
・この辺もZoomならではの強み、オフラインでは一人ひとりの意見を拾えないがZoomならアウトプットを促せる
・サポートするSAさんがコメントをラジオのパーソナリティ的に拾う
Step3:途中でZoomブレイクアウト機能を使って3名でディスカッション
・周りの雑音もなく議論に集中できる
・時間が表示されるので時間内でアウトプットを促される
Step4:ブレイクアウトから戻ってコメントでアウトプット
・各グループで出た意見をコメントでアウトプット
・サポートするSAさんがコメントをラジオのパーソナリティ的に拾う
発散と収束、インプットとアウトプットをバランス良くやっていて、今までの座学とは違うまったく新しい体験でした。
観光でもデジタルを使って、こういった新しい価値体験の提供をしていくことで収益化できるモデルができるはずと考えています。私たちも新しい取り組みにチャレンジし、またnoteに書きたいと思います。
まとめ
・観光業は壊滅的な状況、金融危機によってさらに状況が悪化する可能性がある
・インバウンドが戻るのは1年以上かかる可能性がある(過去の歴史から)
・短期施策、市町村・県単位での需要喚起、全国へ国内内需の施策を実施
・長期的には、デジタル資産の形成、デジタル人材の育成、観光コンテンツの磨き上げ、新しいビジネスモデルの構築に取り組む
ぜひ、共感されたらシェアいただけますと幸いです。皆さまからのコメントをTwitter、インバウンドのお問い合わせメールtomohiro@tokyocreative.jpでもお待ちしています。
MATCHAの青木さんらが作られた今だからこそできるインバウンド観光対策でも知見が得られると思いますので、Facebookグループをフォローしてみてください。
また新しい知見が得られましたらまたnoteを更新いたします。それでは!
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