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#208 『断ったらプロじゃない』

本日は、日本空港テクノ所属環境マイスターの新津春子さんの「断ったらプロじゃない」についてのお話です。新津さんは、1970年に中国残留日本人孤児二世として、中国瀋陽に生まれます。中国残留日本人孤児であった父の薦めによって、一家で渡日し、言葉がわからなくてもできるという理由で清掃の仕事を始めました。

1995年に日本空港技術サービス(現:日本空港テクノ)に入社し、今回のお話にも出てきますが、1997年に当時最年少で全国ビルクリーニング技能競技会で1位に輝きます。それ以降も指導者としても活躍し、羽田空港国際線ターミナル、第一ターミナル、第二ターミナル清掃の実技指導者に加え、「環境マイスター」として、羽田空港全体の環境整備に貢献するとともに、次代のマイスターを育てる活動を行っています。


今回のお話は、全国大会で最年少で1位を獲得するまでの変化が語られています。「自己満足の掃除ではなく、お客様のためにする掃除に転換した」という変化からプロとしての姿勢や心構えについて学ぶことができるお話です。

"入社から3年経った時、私は全国ビルクリーニング技能競技会に会社の代表として出場することになりました。全国大会の前に予選大会があって、私としては100%出し尽くしたんですけど、2位だったんです。その結果に納得いかなくて、常務に「何がいけないの?」ってぶつけると、ひと言「気持ちを込めていない」って。私が「どうやって気持ちを込めるの?」と聞くと、「急ぎあまり道具を使ったらポンポン投げるように置いているでしょう。それが気持ちがないってことだよ。道具をつくった人が見たらどう思う?」。もう返す言葉がありませんでした。"
"「気持ちを込めるにはどうしたらいいか」って毎日考えていました。ある日、お客様の動きをずっと見ていると、答えが分かったんです。空港を利用する人は年齢層も職業も当然バラバラですよね。会社員、主婦、障碍者、子供、ご年配の方・・・。それぞれのタイプによって動きが違うんですよ。ということは、例えば同じテーブルを使うにしても汚れる場所、汚れ方はそれぞれ違ってくる。そうやって考えていくと、子供が使うとこう汚れるのか、ご年配の方の場合はこうだ、ということが分かってきて、使う人のことを見据えて掃除のやり方を工夫できるようになったんですよ。その結果、2ヶ月後の全国大会では日本一を獲得することができました。27歳での優勝は最年少記録だったと聞いています。それからですね、自己満足の掃除ではなく、お客様のためにする掃除に転換したのは。"
"「気持ちを込める」という自分に欠けていたものに気づいてから、清掃技術向上だけに留まらず、もっともっと自分を高めていこうという意識に拍車がかかりました。一つずつ目標を立てて、努力して、達成して、また新たな目標を立てる。その喜びがやみつきになって、いつしか清掃の仕事が自分の居場所だと感じるようになりました。"
"私たち空港の清掃員はお客様からいろんなことを頼まれるんです。だから、清掃とは関係ないことであっても、お客様から言われたことは断らないで全部やっていく。そういうことは意識しています。断ること自体が自分には許せないというか、断ったらプロじゃないと思うんですね。もちろん、私にはできないようなことも中にはあるわけですから、それを断らないでやるためにはどうすればいいかって考えて、やっぱり日々プラスアルファの努力を積み重ねる。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/07/27『断ったらプロじゃない』
新津春子 日本空港テクノ所属環境マイスター
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※Image by Rudy and Peter Skitterians from Pixabay