見出し画像

#145 『人生はあなたに絶望していない』 -1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書-

本日は、医師・医学博士であり、公益財団法人 国際全人医療研究所理事長の永田勝太郎さんの「人生はあなたに絶望していない」についてのお話です。

今回のお話は、本にもなっているのですが、永田さんが大病で歩くことも困難な状況から、奇跡的に回復するまでに至る内容となっており、フランクル博士の言葉が紹介されています。


タイトルの通りなのですが、「人生」が主語となって自分のことを諦めていない、絶望していないというメッセージはこれまで聞いたことがなかったです。見方や捉え方を変えるだけで、人の生き方そのものにも影響を及ぼすことが今回のお話で強く印象に残りました。

"ある時大病を患って、突然歩けなくなってしまったんです。何だろうと思っているうちに立つこともできなくなって寝たきりになり、ベッドのそばにあるトイレにすら自分の力では行くことができなくなりました。薬の副作用のため、末梢から筋肉が萎縮し、力が抜けていくという病気でした。そういう状況の中で、頭の中では何を考えていたかというと、人間は死を許容できるのかということでした。自分が間もなく確実に死ぬと思っていましたから、毎日毎日天井を見ながらそのことばかりを考え続けました。ただ、その時に、あの世はあるのかということは思わなかった。自分がもし万が一生きられたらって、いつも思っていましたね。"
"つまり、死んだらどうなるかということよりも、生き延びることができたら、自分の人生を何に使おうかと考えたわけです。だから僕も楽観的だったと思うんですが、散々悶々と考えた揚げ句に出た結論は、俺は死を受容できないということでした。受け入れられないから、もし死んだら化けて出るだろうと。だったら生きるしかないだろうと思うようになったんですね。"
"ところが病状は悪化し、ペン一本すら重たくて持てない。眠るたびに酷い夢に襲われ、全身汗だくになって目が覚める。僕が倒れたのはヴィクトール・E・フランクル先生が亡くなった翌年の1998年だったんですが、僕はとうとう彼の奥さんにこんな手紙を書きました。

「エリーさん、さようなら。僕はいま死ぬような大病を患っているんだ。もう二度とウィーンの街を歩き回ることもないだろう。これから先生の元へ行きますよ」

そしたらエリーさん、慌てて返事をくれましてね。

「あなたがそんな病気でいるなんて、とても信じられない。私は医者ではないから、あなたに何もしてあげることはできない。けれども生前、ヴィクトールが私にいつも言っていた言葉をあなたに贈ろう」"
"この言葉が僕を蘇らせてくれたんですね。

「人生誰しもアウシュビッツ(苦悩)を持っている。しかしあなたが人生に絶望しても、人生はあなたに絶望していない。あなたを待っている誰かや何かがある限り、あなたは生き延びることができるし、自己実現できる」

そうして考えたのは、いまの自分にとっての生きる意味とは何だろうということでした。そして考え続けた結果、「あなたを待っている誰かや何か」の焦点は私にとっては医学教育であり、生きる意味は探せばちゃんとあるんだと感じたんです。そこから私は...2年後には奇跡的に職場復帰まで果たすことができたんです。エリーさんのあの言葉がなかったら僕はいまここにいませんよ。"


============
書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/05/25『人生はあなたに絶望していない』
永田勝太郎 公益財団法人 国際全人医療研究所理事長
============

※Photo by Cristian Palmer on Unsplash