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#156 『働くとは、人にサービスをすること』

本日は、工業デザイナーの水戸岡鋭治さんの「働くとは、人にサービスをすること」についてのお話です。水戸岡さんは、建築、鉄道車両・船舶、プロダクト、グラフィックなど、さまざまなジャンルのデザインを手がけるインダストリアルデザイナーです。

たくさん手がけてきた案件の中でも、今回のお話にも出てくるJR九州の車両や関連施設のデザインは、鉄道ファンのみならず広く世間の注目を集めました。その実績から、ブルネル賞、ブルーリボン賞、日本鉄道賞、毎日デザイン賞、菊池寛賞などを受賞しているデザイナーであります。

今回のお話は、水戸岡さんが考える「働くとは?」が語られており、それは「人にサービスをすること」であると定義しています。その真意は何か。水戸岡さんの話を読むと、物事や仕事の全てに意味があるということを感じます。特に、日々無意識に行っていることの中に価値や、後々役に立つことがあるのだと思います。

絵を描いたりコンピュータを動かしたり、そんなことはいつでもできるよと。新人の時にお茶出しをやったり、弁当を買いに行ったりしたことが、後でどれほど役に立つか。

"問題を一つずつ経済性と文化性に分けて、そのバランスを保つようにしていくと、皆がそこそこ好むものができ上がってくる。それを現場の人とデザイナー、経営者が一緒になってやってきたことで、赤字だったJR九州がインパクトを持ち始め、いまや多くの固定ファンがつくところまで来ています。"
"福沢諭吉も述べているように、哲学と歴史学と経済学の3つが上手くバランスを取れていないと、いいものができないよと。いくら知識がたくさんあっても、それを使えなければ意味がない。そういったことを実践する場として、仕事というものがあるんだと思うんです。私は理想を言い続けてきて、青くさいなどと随分言われてきたんですが、でも理想を言わずに他に言うことなんか何もない。実際にそれを追求することが、最終的に一番いい結果を生む可能性が高いことを、25年間この仕事をやってきて感じますね。"
"働くとは即ち人にサービスをすることだと思うんですね。人のことを考えられるのは能力が高いということであり、幸福になれる基本ではないかと。だから私の事務所では10名ほどスタッフがいるんですが、来客の予定があると「こういう人でこのくらいの年齢だ」とだけ話してお弁当を買いに行かせます。お客様のことを考え、いかによい弁当を買うことができるか。それができない者によいデザインはできません。"
"会議とはどういうものであるかが若い人にはなかなか分からないようですが、いいお茶が出たり、いいお菓子が出るといい会議ができる。だから新人は皆それを1年なり2年なり1日中やるんです。おいしいお茶がはいるとお客様も長居をされますから、豊かなコミュニケーションができて、よい信頼関係が生まれるんですね。"
"だから若い子によく言うんですが、絵を描いたりコンピュータを動かしたり、そんなことはいつでもできるよと。新人の時にお茶出しをやったり、弁当を買いに行ったりしたことが、後でどれほど役に立つか。棚から食器を出して、どれをどう使うか考えているだけでもセンスを磨ける。つまりデザインセンスはテーブルの上だけでほとんど磨けるんですね。最も難しく、かつ最も大事なことが人にサービスをすることですから。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/06/05『働くとは、人にサービスをすること』
水戸岡鋭治 工業デザイナー
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※Image by Wokandapix from Pixabay