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#177 『人生を切り開く「ダブルゴール」』

本日は、帝京大学ラグビー部監督の岩出雅之さんの「人生を切り開くダブルゴール」についてのお話です。

"帝京ラグビー部の監督に就任後、まず普通のことをしっかりしようということで、練習を休まないとか挨拶をするとか、そういうチームの規律を育てていくことから始めました。帝京ラグビー部に限らず、学生スポーツは自由気ままな活動が罷り通っていた時代です。...学生たちも未熟でしたけど、僕自身も未熟で、学生たちの心を掴むようなアプローチの仕方が分からず、もがき苦しんでいたように思います。"
"そんな中、就任から2年後の平成10(1998)年に、数名の部員が不祥事を起こして逮捕され、1年間の公式戦出場停止処分を受けるという大きな試練に直面しました。非常に辛い出来事ではありましたけど、その時に本当の意味で覚悟を定めることができました。足場がどれだけ悪くても、学生たちがどれだけ自分についてこれなくても、何があっても絶対に逃げない。信念を持って根気強く挑戦し続けていこうと。"
"この思いはいまも全く変わっていませんし、辛い体験を学生たちにさせないためにも、指導は妥協しないように努めてきました。ただ、世の中の変化に伴ってアプローチの仕方はもちろん変わっていきますけど。僕も最初はトップダウン型の指導をしていました。ところが、監督になって5年くらい経った時、勝ったら全国大会に出場できる、負ければ敗退してしまうという瀬戸際の試合で、ベンチに入れなかった1年生が「負ければいいのに」と言って相手チームを応援するような残念な光景を目にしたんです。きっと試合に出られないから自分とは関係ない、と思ってそう口にしたんでしょう。帝京ラグビー部という組織自体に魅力がないことを痛感しました。"
"まず組織自体を好きにさせるためには、環境づくりが大切だなと思いまして、本人の心を育てていくと共に、上級生と下級生の関係性を育てていこうと。そこで試行錯誤の末、「上級生が下級生に伴走する」ことや「ダブルゴール」を設定するようにしたんです。"
"4年間の短期的な目標と、卒業した後の長期的な目標を考えさせています。高校を出たばかりの1年生というのは、ラグビーをしたいとかレギュラーになりたいとか優勝したいとか、目の前のことだけにターゲットを置いて入部してきます。そういう夢があるからこそ、彼らは体の中からワクワクするエネルギーが湧き起こってくる。ですから、4年間の短期的な目標を立てることは大事です。ただ、卒業後もラグビーを続ける学生ばかりではありませんし、続けたとしてもラグビーというのは比較的選手寿命の短いスポーツですよね。その後の人生のほうが長いわけなので、社会人としてどういう活躍をしたいかってことも学生の時から意識させるんです。目の前のゴールと未来のゴールを同時に考えて設定することで、彼ら自身の力で人生を切り開いていってほしいと思っています。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/06/26『人生を切り開く「ダブルゴール」』
岩出雅之 帝京大学ラグビー部監督
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※Image by Monica Volpin from Pixabay