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#263 『小売業がうまくいくかの指標はただ一つ』

本日は、成城石井社長の大久保恒夫さんの「小売業がうまくいくかの指標はただ一つ」についてのお話です。大久保さんは大学を卒業後、1979年にイトーヨーカ堂に入社し、流通経済研究所の研究員を経て、1990年にリテイルサイエンスを設立し社長に就任します。

「ユニクロ」や「無印良品」の業務改革、「ドラッグイレブン」の再生を手掛けたことで有名な経営者です。その後、2007年に成城石井の社長、セブン&アイ・フードシステムズの社長、今年に入ってから西友の社長を務めています。

今回のお話は、小売再生のプロである大久保さんが考える「小売業がうまくいくかの指標」が語れているのですが、お客様との向き合い方がどれほど企業の利益に貢献するかがわかるお話です。

"私がなぜこんなに挨拶、挨拶、と言うのかといえば、ドラッグイレブンで挨拶を徹底した時に、苦情の数が減ったんです。それも半端な数字ではなく、半分くらいに減りました。苦情の種はきっと同じようにあると思うんですが、挨拶をすることでお客様が「あの店感じがいいね」とか「一所懸命やってるね」と思ってくださり、結果的に苦情が減っていくわけです。つまり、好感度が上がってきているということだと思うんです。品揃えだの値段だのというよりも、お客様に、あの店が好きだと思ってもらえることが、商売にとって一番重要なことだと思っています。"
"成城石井の場合は、お客様からの「お褒め」"が増えているんです。感じがいいな、と思っても普通は黙っていますから、わざわざ電話を掛けたり、手紙をくださったりしてお褒めをいただけるのはよほどのことだと思うんです。でも、いまの小売業の経営者でそんなことを気にしている人は、すごく少ないと思うんですね。でも私は売り上げや利益を見るのではなく、お客様に本当に喜んでもらえているのかどうかといったことをもっと見るべきだと思います。
"経営評論家の人たちは、経費を削減すると利益が出るように見えるらしいんですが、私には全くそうは思えません。苦心して経費を削減して、その分、利益が出たとする。でも結局、売り場が乱れたり、働く人のモチベーションが下がったりして売り上げと利益は落ちていくんですよ。"
"小売業がうまくいくかどうかの指標はただ一つ。売り場がどれだけお客様に満足されているか。それ以外にありません。売り場がよくなれば、売り上げと利益は上がるというのは、私が何十社もコンサルタントをやって辿り着いた結論なんです。その信念を社長に就任してからもやってみたらやっぱりそうだった。成城石井ではいま営業利益率が6%を超えるという不況下では信じられないような数字を出しています。私はそれを目指してきたわけではありませんが、結果としてそうなっていると。ただしそのためには、人材教育にかなりの投資をしなければいけませんが。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/09/20『小売業がうまくいくかの指標はただ一つ』
大久保恒夫 成城石井社長
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※Photo by Hanson Lu on Unsplash