見出し画像

実例〜社内情報集約を担当している人が最終的に楽になる方法(製造業編)

こんにちは。株式会社ゼタントでCEOをやっている久保です。

社内の様々な部署から情報を集めてそれをまとめるような業務は、会社の大小を問わずどの会社にもあると思います。恒例行事になっていることもあるのではないでしょうか。そんな情報集約業務で、実はトラブルや心労が重なっていることはないでしょうか。もしかすると問題に気付いていない、目を伏せている、というような状況の方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、なぜそうなるのか、ではどうすればいいのかを、業務改善のお手伝いをさせていただいた実例を交えてお話しします。

製造業の材料の期限管理が破綻気味に・・・

あるメーカーでのお話です。製品を加工するための原材料が多品種に渡るのですが、それぞれの原材料には使用期限があり、それを超えたものを使うことができません。ただ、その使用期限は原材料メーカーから提示されるもので、その形式がバラバラでした。このメーカーさんでは、多くの製品を製造されているのですが、製品ごとに部署があり、部署ごとに原材料の使用期限を管理していました。一方、原材料の仕入れや在庫管理そのものは、購買部門や倉庫管理部門が行なっていました。

どうやって原材料の使用期限を管理していたかというと、部署ごとにそれぞれエクセル表を作り、原材料の様々な情報(スペックなど)とともに使用期限も書き込んでいました。長年このような運用を続けておられたのですが、次のようなことが頻発して苦しい状況になっていました。

  • エクセルファイルがコピーされて、部署ごとにちょっとずつ異なる列が追加される

  • コピーされた別々のファイルに、別々の情報が追記されてしまう

  • 担当者が変更になると、担当者の方が納得がいくように、または自分が管理しやすいように変更するため、微妙に見方が変わってしまう

このせいで、正しい使用期限が管理できていないケースが発生し、製造ロットを破棄することもあったようです。正しく使用期限を管理するために、部署間で情報を共有する会議体を設けて、月に1度、数時間かけて情報の正しさを精査していたそうです。

何がまずいのか

このように文字にして状況を書くと、明らかに改善の余地があり、また問題点も明らかなように感じることでしょう。しかし、長年続けていた業務は、そもそも論を見直す機会も、また疑いを持つ機会もなかったりすることが多いと思います。このようなケースでの大きな問題は次の2つです。

  • マスターデータが管理できていない

  • データ形式を自由に変更できてしまう(列を増やしたり減らしたり、書き方を変えたり)

この問題が発生してしまう原因の一つが、「エクセルが自由すぎる」ことです。エクセルの機能が足りないのではありません。

多くの関係者が利用するデータは、なるべく余分なものを排除して、必要十分な情報だけを含むようにすべきで、それが業務を円滑に進めるコツだと言えます。ですが、エクセルはその自由さゆえに、自分の手元だけで独自情報を管理しようとファイルをコピーできてしまいますし、もしかしたら必要かもしれない情報をどんどん追加できてしまいます。また、知らないうちに誰かがファイルを手元で作っていたり、一時的に作っていたファイルが一人歩きしてしまいます。一人歩きしてしまうのは、そのエクセルファイルがどういう出自なのかわからないからです。

どうすればいいのか

やるべきことは、問題点の数と同じで2つです。

  • データベースを導入し「マスターは必ずここである」ということを社内の共通認識にする

  • データベースのテーブルの項目(列にあたるもの)は、なるべく少なくする

急に技術的な話になってしまいましたが、大事なのは技術ではなく、共通認識を作ることと、精査してシンプルにすることです。データベースを導入すると、これら2つを自動的にやらざるを得なくなるというだけのことです。

どうやって解決したか

このメーカーさんでは、データベースを導入し、簡単なWebアプリでデータを簡単に閲覧したりフィルタしたり、更新したりできるようにしました。あまり色々な機能は入れず、なるべくシンプルにすることを心がけました。あれもこれもとなりがちなので、機能を追加するよりも削ぎ落とす方が大変だったりします。

この取り組みで最も重要なのは、アプリの開発ではなく、エクセルファイルの整理です。まずは、散らばっていたファイルを集めて、マスター情報を作りました。この作業が大変で、色々なエクセルで列が微妙に違ったり、もう使っていない列があったり、重複した行があったりして、その都度関係者に確認をお願いしました。次に、データベースに登録する項目を精査しました。ポイントは「もしかしたら必要かもしれない」という項目は基本的に削除することです。本当に必要なときに対処すれば十分です。それよりも必要十分な項目だけを残すことがとにかく重要です。

最後に、アプリの設計でも「もしかしたら必要かもしれない」という程度の機能は実装しないことです。人情として普通は「なるべく変えたくない」と思うものです。多くの人が利用するアプリであればあるほど、反発も大きくなります。それでもどこかでIT化に踏み切るべきです。導入時のトラブルを減らすには、なるべくシンプル、簡単にして、無用なトラブルが起こる可能性を減らすべきです。慣れてきたら機能を拡張していくのがいいと思います。

最後に

この取り組みで、情報共有の会議体は不要になり、期限切れのトラブルもほとんどなくなったそうです。影響範囲が大きいので実行するのは中々大変ですが、一度実施すれば、そのあとはものすごく楽になります。

こういった取り組みは、社員だけで取り組むと反発が大きいこともあるようなので、そういうときは外部の力を使った方がスムーズに進むかもしれません。エクセルを使っている、たくさんの人がその情報を見る、というような業務があるなら、一度外の人の意見を聞いてみるのはいかがでしょうか。

#社内 #情報集約 #エクセル #データベース #情報共有 #効率化 #DX #事例 #システム #IT #ゼタント #Zettant

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?