【勝因】『洗練された組織と強烈な個』~セリエA第11節ローマVSナポリ~

試合結果

2022-2023 セリエA 第11節
10/23 @スタディオ・オリンピコ
ローマ(0-1)ナポリ
80分 ビクター・オシムヘン

スタメン

この試合を選んだ理由

セリエAの順位表を見ると、頂点には縦縞のチームではなく、ナポリが君臨していた。しかも、11試合を終えて、9勝2分。無敗でイタリアを席巻するナポリはどんなチームなのか、どんなサッカーをしているのか。とても興味が湧いたため、この試合を選んだ。

組織的なサッカーを仕上げる強烈な個

非常に統率されている。

これがナポリのサッカーを15分ほど見た感想だった。

フォーメーションは[4‐1‐2‐3]。攻撃時は左SBのマティアス・オリベラを高い位置に押し上げ、後方をひし形に変化させてビルドアップを行う。CBのファン・ジェズスとキム・ミンジェ、右SBのジョヴァンニ・ディ・ロレンツォの3選手でパスを回しながら、アンカーのスタニス・ロボツカが中盤の底から左右にパスを散らしていく。

インサイドハーフのタンギ・エンドンベレとピオトル・ジエリンスキがハーフスペースで、ウイングのイルビング・ロサーノとクビチャ・クワラツヘリアが外側に立ち位置を取る。

ルチアーノ・スパレッティ監督が整備した立ち位置をもとに、局面で数的有利を作りながら、ローマのプレスを外して敵陣に入っていく。35分、オリベラとクワラツヘリアのコンビネーションで左サイドを攻略すると、クロスにロサーノが飛び込んだが、シュートは枠を外れた。38分にはディ・ロレンツォのパスを中央で受けたエンドンベレがジエリンスキとのワンツーでPA内に進入していき、相手GKに倒されてPKの判定を受ける。しかし、VARによって取り消しとなった。

しっかりと自陣からパスをつないで前進していく攻撃だけでなく、組織的な守備も披露する。ローマが3バックで行うビルドアップに対して3トップでハメに行く。数的同数でプレスを掛けつつ、中盤の底に入るブライアン・クリスタンテをジエリンスキが監視することで圧力を与えた。ローマはマティ・カマラが左斜めに下りて、4選手でビルドアップを行っても、ナポリはエンドンベレが出ていって対応する。人数をしっかりと合わせてプレスを仕掛けるイメージが共有されていることを感じた。

ビルドアップを封じられたローマがゴールに向かう手段は、右シャドーのニコロー・ザニオーロの推進力のみ。今夏に加入した“ファンタジスタ”パウロ・ディバラが負傷しているため、190cmの背番号22が相手と身体をぶつけながらボールを前に運ぶ重戦車ドリブルで攻めていった。しかし、狙いが絞れているナポリはジェズスがアタックして、ミンジェがカバーする。明確なチャレンジ&カバーの態勢を作りつつ、ときには左SBのオリベラが下がってザニオーロを挟み込んで対応した。そのため、6分のカットインからのミドルシュートくらいしかザニオーロは決定機を作れず、それもシュートは枠を大きく越えた。

攻守において組織的なプレーを高いレベルで展開していく中で、49分にロサーノがPA右から放った強烈なシュートはGKに弾かれ、53分にはクワラツヘリアが切れ込んでシュートを打つも、DFにブロックされた。61分にもディ・ロレンツォのクロスをジエリンスキが折り返して、途中出場のエリフ・エルマスが右足で合わせたが、ここも相手DFのブロックに遭った。70分、カウンターから決定機を迎えると、オシムヘンがPA右からシュートを打つ。しかし、これは枠の左に逸れてしまった。

確実にチャンスを作るも、なかなかこじ開けられない展開が続いていたが、組織的なサッカーを勝利に導いたのは強烈な個だった。

80分、左サイドから右サイドにパスをつないでいき、ディ・ロレンツォからタッチライン沿いに縦パスを出すと、途中出場のマッテオ・ポリターノが1タッチで前線へ。左足での鋭いスルーパスに反応したのは、オシムヘン。背番号9がクリス・スモーリングと身体をぶつけながら前に出ると、PA右で右足を力強く振り抜いた。角度のないところからのシュートだったが、ファーサイドのネットに突き刺さる。目の覚めるような豪快な一撃が決勝点となり、ローマを下したナポリは公式戦11連勝を達成。ディエゴ・マラドーナが所属していた1986年まで遡るクラブ記録に並んだ。

オシムヘンが良いサッカーを勝てるサッカーに変えている。185cm78kgのナイジェリア人FWは、スピードを生かした裏抜けで相手のディフェンスラインを下げ、ウイングやインサイドハーフが使うライン間(MF-DF)を作り出す。また、強靭なフィジカルを使って相手CBを背負ってタメも作る。チームとしてビルドアップが相手のプレスにハマりそうになっても、最前線の背番号9にアバウトなボールを蹴ることもできる。プレスの緊急脱出装置としても機能する中で、しっかりと得点を決めてチームを勝利に導いた。

統率されたサッカーの中で個が生きている。組織と個がマッチして質の高いサッカーを展開している。試合終了後、ナポリの強さに頷くしかなかった。セリエAの首位を走っていることに納得した。


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