新型コロナが怖くなくなるNHKスペシャル(無料&再放送アリ)
新型コロナが怖くなくなるシリーズ第三弾。
今回は(正しい意味で)新型コロナが怖くなくなるテレビ番組があったので、その紹介です。
テレビの紹介じゃない怖くなくなるシリーズ
➡新型コロナが怖くなくなる話
➡続:新型コロナが怖くなくなる話
クラスター対策班の密着ドキュメンタリー「NHKスペシャル・新型コロナウイルス 瀬戸際の攻防~感染拡大阻止 最前線からの報告~」。
ちまたにあふれる「コロナ報道」ですが、観れば観るほど、迷いや不安や怒りが生まれてきたりきますよね。
最近は、日本のテレビだけじゃなく、海外に住むスポーツ選手やタレントなどの「セレブ」がSNSを通じて、日本のコロナ対策は甘すぎる、海外を見習えと好き勝手言ったり、まるで日本がコロナ対策で大失敗しているかのような報道が目立ちます。
しかし、結果だけ見ると、以前紹介した台湾ほど成功してはいないものの、他の欧米諸国と比較するとはるかに死亡者数が少ない。
今回のNHKスペシャルは、それはなぜなのかというのがよくわかる番組でした。
実はアレの影に対策班あり
ちまたには、「コロナ、困るよね!?」「日本の対策はどうかしてるよね?」というような報道ばかりが目立ちますが、これはそんな報道とは一線を画し、30人以上の感染症専門家が集まった、厚生労働省内に作られた「クラスター対策班」をひたすら追った番組です。
この番組を観て知ることは実は多くて、特に興味深いのは、「日本のコロナ対策」は、実はこのクラスター対策班の提言から来ているというところですね。
たとえば、
北海道独自の「緊急事態宣言による外祝自粛要請」も、
小池都知事が記者会見で言い出した「三密」も「ロックダウン」も、
専門家会議がいきなり言い出した「オーバーシュート」も、
都知事の、特に夜の街の業種を指定した休業要請も、
その影には実はクラスター対策班の提言があったと。
そういうことを知らないで、我々もメディアも、それを「言った人」について「パフォーマンスだ」「わかりにくい」など好きに語っていますが、実際はその裏に、色々な「戦い」があったということを、つぶさに記録した番組なんですね。
しかも、NHKスペシャルは、難しいことをわかりやすく説明できるノウハウがあるものだから、とにかくわかりやすい(下はブロックできたSARSとの違いを図示したものです)。
おそらく、こんなことができるのはNHKだけだし(そもそもNHKじゃないと取材させてもらえなかったと思うけど)、まるで同局の番組「プロフェッショナル」かというぐらい、対策班の行動をつぶさにカメラ撮影をしており、ニュースやワイドショーのように、むやみやたらに盛り上げた上に結論を視聴者に丸投げして不安にさせることはありません。
だからこそ、ただただカメラで対策班を追って、マイナスな事態が次々起きて、それを華麗に解決できるわけじゃなく、必要な解説を加えているだけなのに、観れば観るほど、気持ちが落ち着いてくるのです。
事実にフォーカスする
その理由の一つが、「どうしよう?」という不安ではなく、「こうなんです」という事実にフォーカスした番組作りですね。
番組冒頭では、各国の感染者数の比較グラフが出てきました。
これはオックスフォード大学のヨーロッパ疫病予防管理センターの、感染者数の爆発的増加数を比較したものです。
縦軸がだいぶ大雑把な目盛りになっていますが、それくらい爆発的に感染者が増える国が多く、こうしないとグラフ内に入らないからです。
そして、赤色で塗られたゾーンがいわゆる「オーバーシュート(感染爆発)」を表しています。
対して、日本およびシンガポールはそこにふくまれない、緩やかな線をたどっています。これは確かにPCR検査が少ないということもありますが、それでも、死亡者数を比較してみても、医療崩壊するほどのオーバーシュートが起きていないのは事実。
非常にわかりやすい事実の比較ですね。
そして、それはなぜかという所が、対策班の動きと戦略で語られていきます。
特に興味深いのは、対策班を率いるのが、SARSの時にWHOで封じ込めの指揮に当たった担当者、押谷仁・東北大学大学院教授。
テレビ報道にありがちな、専門家や素人の「理想論」ではなく、日本が置かれた状況と、日本ができる選択肢のバランスを取りながら、今の日本が取りうる「現実的な最善の手」を常に考えて、提言してきたことがよくうかがえるのです。
その姿はまさにもう、プロフェッショナル。
また、それでも次から次へと、高級クラブが客を守るために個人情報を言わないとか、「3密」を守らないとか、困難が襲いかかります。
そんな中で、他にも対策班のメンバーが、家にも帰らず、日本の置かれた現状と、出てくる事象を踏まえながら、刻一刻と変わる情勢に対して、あれやこれやと格闘している姿が映し出されていくわけですが、こういうのを観ていると、いかに上辺しか見ない無責任な報道が多く、それを観て終わらせてしまっている我々も問題だなという気になります。
ホントにもう、対策班のみんな倒れないでねと、こんなにまで考えてくれてありがとうという気になりますよ。
そんな時に、首相はなに優雅に茶飲んでんだよと。せめて踊れよ、格好つけずによ、という気にもなりますが・・・。
「日本独自の対策」の理由がここに
このように、実際にそれと向き合う最前線の人たちが、どういうことを考えて、「PCR検査が少ない」「自粛が要請でしかない」「緊急事態宣言が遅い」「いまだに医療崩壊が起きていない」という、どういう経緯で日本独自のやり方になったのかというのがよくわかります。
特にPCR検査について、「SARSやMERSを経験した韓国やシンガポールと元々の体制が違う」という理由が語られているのは、非常に重要。
でも、日本人ってどうしても「海外」とよく比較しますよね。
いつも海外のマネばかりじゃダメだと言っている知識人が、こういう時にはなぜか「海外と違う」ということを言ったりしていますが、実際の現場で日本の専門家たちは、こうやって必死にやって来ているんだということを、ぜひぜひ観てほしい。
海外に住む有名人よりも、つぶさに現実と向き合っている彼ら対策班の活動をぜひとも観てほしい。そして応援してほしい。
まだ観ていない人は
通常、NHKの見逃し配信サービス「NHKオンデマンド」は有料なのですが、この番組に限り、なんと4/26まで無料で視聴可能です(会員登録は必要ですが、別にNHKの契約がなくても可能)。
さすがに登録はめんどい、後が怖い(笑)という方は、再放送もありますのでそちらでも構いません。
内容が良かったせいか、当初の予定よりも再放送の回数も増えており、下記スケジュールで再放送されます。
4月16日(木)午前0:50~午前1:55(NHK総合)
※4/15水の24:50~25:55
4月18日(土)午前10:00~午前11:04(NHK BS1)
4月18日(土)午後4:55~午後6:00(NHK総合)
地域によっては異なるようなので、詳しくは下記サイトで確認して下さい
逆に、これを観ると、政府が「コロナ対策は日本独自」と言いつつ、「事業者への補償は他の国もしていないのに*日本だけするわけにもいかない」と都合の良い時だけ日本独自をアピールして、都合が悪い(支出がある)時だけ世界水準をアピールする(これをダブルバインドといいます)のも、ようするに、「日本独自」を考えているのはクラスター対策班であって、政府はそれに従っているだけだからというのが、残念ながらよくわかる。
(*ちなみに補償をしている外国もある)
さらに、そんなだから、星野源の考えた「#うちで踊ろう」企画に「国民に告知する良い機会だ!」と首相が便乗したのも、残念ながら自然なことなのかな~という気もしてきます。悪気はないのでしょうが・・・。
政府は「決める」のが仕事だから、クラスター対策班が新型コロナ対策の指針に従うのを「便乗」というのはよくないかもしれませんが、であるならば、経済対策もそれに沿ってちゃんとやっていただきたいものです。日本独自のもので。
うがった見方をすれば、だから政府のコロナ対策以外の経済対策は逆にあてにならないぞ、というNHKスペシャル報道班のメッセージかもしれませんが・・・とりあえず次回のNHKスペシャルも観てみようと思います。
noteで、ここに登場してきた押谷先生や西浦先生の配信する記事がまとまったものがありますので、そちらをチェックしていくのもよいでしょうね!
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