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映画分析ノック⑩『俺たちに明日はない』(1967)

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映画『俺たちに明日はない』ログライン

起「2人の出会い/退屈な日常からの脱却」
①:ボニーの家の車を盗もうとするクライド。止めるボニーだったが、クライドに誘われる。
②:食料品店の強盗するクライド。その様子を見ていたボニーは高揚感を覚え、退屈な日常から逃げ出せる予感。
③:…が、仕事を捨て、平穏な日々を捨てることに葛藤するボニー。クライドが説き伏せて、旅することを決める。

承「強盗団結成/犯行と葛藤」
④:喫茶店の前の車を盗み、人のいない空き家で泊まるボニーとクライド。銃の練習をしていると、家主が帰ってくる。
⑤:家主から空き家は銀行の差押えに遭ったと聞き、銀行を襲うことに。しかしその銀行も破産しており、退散する。
⑥:食料品店で強盗をするクライド。従業員に襲われ、反撃で怪我を負わせてしまう。
⑦:車の整備工・CWモスを強盗の仲間にスカウト。彼は貧しい農家の息子で、愚鈍だが車に詳しい。仲間入りするモス。
⑧:怪我をした店の従業員、病院で刑事に容疑者リストを見せられている。そこにクライドの写真が。クライドは前科持ちだ。
⑨:空き家で眠るボニー、クライド、モス。ベッドで寝ているボニーはクライドに想いを寄せ始めたことが分かる。
⑩:銀行を襲撃するボニーとクライド。車で待っていたモスが美女に目移り。逃げ遅れ、銀行員を一人射殺してしまう。
⑪:人殺しとなったクライドはボニーと別れようとするが、惚れているボニーは別れないと言う。交ろうとするが、クライドは勃たず。
⑫:兄の家に行くクライド。強盗団にクライドの兄・バックと彼の妻・ブランチが仲間入りすることに(ブランチは半ば無理矢理)。
⑬:モーテルに泊まるが、食糧配達人に通報され、警察に包囲される。銃撃戦の末に警官を数人射殺し、逃げ出す5人。
⑭:仲間割れをする5人。特に乗り気なボニーと騒ぎ立てるブランチとが相性が悪い。新聞には強盗団が世間を騒がせている、と。
⑮:湖の辺りで休憩している強盗団の車に忍び寄るヘイマー警官。クライドに捕まり、湖に流され、全国に恥を晒す。
⑯:銀行強盗をする一行。貧しい人からは金を取らない主義のようだ。
⑰:盗んだ金の分配をしている一行。騒ぐだけのブランチの分け前を巡って喧嘩。その時、車のオイル漏れが発覚する。
⑱:青年ユージンとその恋人の車を盗む一行。追うユージンだが、逆に一行に捕まる。彼が葬儀屋と聞いたボニーは彼らを下ろす。
⑲:年老いた母に会いたくなったボニーの頼みで、一行はボニーの母に会う。しかし新聞で事件を知った母はボニーをそっと拒絶。
⑳:モーテルに泊まる一行。また喧嘩となり、ブランチとモスは買い物へ。母の件で落ち込むボニー。慰めるクライド。

転「綻び/バラバラになる強盗団」
㉑:モスは食料品店で拳銃を客(警官)に見られてしまい、通報されてしまう。
㉒:夜、モーテルを襲撃される一行。逃げ出すが、バックが撃たれて死に、ブランチは失明する。
㉓:休息していた荒野で再び襲撃され、ブランチは警察に捕まり、ボニーとクライドとモスは逃げるがそれぞれ負傷。
㉔:負傷した3人はモスの実家に逃げ込み、モス・父の世話になる。彼らに好意的な態度の父だったが、裏では全く良く思っていなかった。
㉕:一方、恥を晒されたヘイマー警官は捕まえたブランチを巧みに誘導し、モスの本名を聞き出すことに成功。

結「希望の未来/突然の収束(2人の死)」
㉖:モスの家に隠れるボニーとクライドは、丘で初めて体を重ねる。もし前科が無くなったら?と希望の話をする。
㉗:警官とモス・父とのタッグによって騙されたボニーとクライドは、買い物帰りに警官らに射殺されてしまう。


映画『俺たちに明日はない』分析

■主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は、田舎町のウエイトレス・ボニーと、出所したての前科持ち・クライドのダブル主演。
冒頭、クライドに車を盗まれそうになっているのを発見するシーンから登場。
「起」①(映画の冒頭シーン)。


■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
「承」④(喫茶店の前の車を盗み、人のいない空き家で泊まるシーン)
クライドの強盗の仲間入りをするか迷っていたボニーが、退屈な日常とおさらばすることを決意する。
車を盗み、空き家に入り、銀行を襲うことで、ボニーとクライドの「共犯」が成立する。

これは【ボニーとクライドが出会い、犯行を重ねて仲間を増やし、世間に追われながら旅をする物語】である。


■物語が大きく転換しているのはどこか

転㉑:モスが食料品店で拳銃を客(警官)に見られてしまい、通報されてしまうシーン。
これによってモーテルを襲撃され、兄が死ぬ/兄の妻が失明の後に捕まる/モスの家へ隠れる3人
→強盗団がバラバラになり、クライマックスへ向けた布石が打たれる。

■クライマックスはどこか

結㉗:警官とモス・父とのタッグによって騙されたボニーとクライドが、買い物帰りに警官らに射殺されるシーン。

映画のラストシーン。この映画はクライマックスシーンでそのまま終わる。
転㉑のシーンで捕まる布石が打たれていき、希望を語り合う二人に突然訪れる死。
二人が死ぬことで、強盗事件は収束するのであった。


■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
・田舎町で希望も刺激もない退屈な日々を送っている。
・強盗に入った店の従業員に反撃され怪我を負わせてしまう。
・顔と名前がバレて、犯行が世間の知ることとなる。
・銀行強盗でしくじり、行員を一人射殺してしまう(後戻りできない)。
・幾度となく居場所がバレて警官に銃撃される。
・ボニーと兄の妻ブランチの仲が悪い。
・車がオイル漏れして、動かなくなる。
・ボニーは母に会いに行くが、強盗の件で母から拒絶されてしまう。
・モスがドジで客に銃を見られてしまう。
・兄が死に、ブランチが失明。
・ブランチがヘイマー警官にモスの本名を喋ってしまう。
・モスの父がボニーとクライドをよく思っていない。
・警官とモスの父に騙され、ボニーとクライドは射殺されてしまう。


■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・食料品店や銀行の強盗に成功する。
・世間に持て囃される。
・徐々にボニーとクライドは惹かれあっていく。
・強盗団に仲間が加わっていく。
・自分達を捕まえようとしたヘイマー警官に恥をかかせ、湖に流すことができる。
・ボニーとクライドは幾度となく警官の襲撃をかわして逃げ延びる。
・ボニーとクライドは未来への希望を語る。


■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か

起:2人の出会い/退屈な日常からの脱却
①ボニーの家の車を盗もうとするクライド。止めるボニーだったが、クライドに誘われる。

③…が、仕事を捨て、平穏な日々を捨てることに葛藤するボニー。クライドが説き伏せて、旅することを決める。

承:強盗団結成/犯行と葛藤
④喫茶店の前の車を盗み、人のいない空き家で泊まるボニーとクライド。銃の練習をしていると、家主が帰ってくる。

⑳モーテルに泊まる一行。また喧嘩となり、ブランチとモスは買い物へ。母の件で落ち込むボニー。慰めるクライド。

転:綻び/バラバラになる強盗団
㉑モスは食料品店で拳銃を客(警官)に見られてしまい、通報されてしまう。

㉕一方、恥を晒されたヘイマー警官は捕まえたブランチを巧みに誘導し、モスの本名を聞き出すことに成功。

結:希望の未来/突然の収束(2人の死)
㉖モスの家に隠れるボニーとクライドは、丘で初めて体を重ねる。もし前科が無くなったら?と希望の話をする。
㉗警官とモス・父とのタッグによって騙されたボニーとクライドは、買い物帰りに警官らに射殺されてしまう。


■三幕だとするとどこが分かれ目か

第1幕:2人の出会い/退屈からの逃避/犯罪成立(後戻りできない)
①:ボニーの家の車を盗もうとするクライド。止めるボニーだったが、クライドに誘われる。

⑩:銀行を襲撃するボニーとクライド。車で待っていたモスが美女に目移り。逃げ遅れ、銀行員を一人射殺してしまう。

第2幕:強盗団を結成/犯罪者としての後悔と葛藤
⑪人殺しとなったクライドはボニーと別れようとするが、惚れているボニーは別れないと言う。交ろうとするが、クライドは勃たず。

⑳モーテルに泊まる一行。また喧嘩となり、ブランチとモスは買い物へ。母の件で落ち込むボニー。慰めるクライド。

第3幕:綻び/バラバラになる強盗団/二人の死
㉑モスは食料品店で拳銃を客(警官)に見られてしまい、通報されてしまう。

㉗警官とモス・父とのタッグによって騙されたボニーとクライドは、買い物帰りに警官らに射殺されてしまう。


■このストーリーを3行で言うとどうなるか
退屈な日々を送っていたボニーと、強盗をしている前科者のクライドが出会い、共犯関係に。
そこに仲間が加わり、強盗団として世間を騒がせながら犯行を繰り返す。
犯罪者としての後悔や葛藤を経たボニーとクライドは、最終的に警官に射殺されてしまう。


面白いと感じたポイント


■キャラクター
《主要人物》
レストラン店員・ボニー
前科者・クライド
車の整備工・CWモス
クライドの兄・バック
バックの妻・ブランチ

ーサブキャラー
ヘイマー警官
ボニーの母
CWモスの父
ユージン
ユージンの恋人
被害者の銀行員や店員たち


👉メインの人物たちは順番に登場し、徐々に強盗団の仲間に入っていく
 2時間ものは大体メイン人物は、5〜6人程度の映画が多い


■構成/ストーリー

・ボニーの葛藤に焦点が当たる構成
退屈な日常から抜け出したい←→強盗は悪いことである
ブランチは嫌い←→恋するクライドの頼みなら…
逃げ延びる生活←→母に会いたい気持ち

犯罪を犯して逃げるだけでなく、そんな逃避行に罪悪感を感じるなどの葛藤がある。


・重層的な人物の設置
殺人を犯して新聞で世間的に話題になる
強盗団に懸賞金がつけられる
その懸賞金を狙ったヘイマー警官
返り討ちにあい、強盗団によって世間に恥を晒されることに
〜〜〜(後半)
ヘイマー警官、執念の捜索
(自分が恥を晒されたことを恨んでいる)

懸賞金がつき世間の注目の的になったことを示すためのシーンとして、ヘイマー警官を登場させる。
そのヘイマー警官に恥をかかせることで、後半にヘイマー警官が強盗団を追い込む理由にしている。

クライマックス。匿う人物は、全くの他人ではなく、CWモスの父親に設定。
CWモスが強盗団の一味であることを親としてどう思っているか、など葛藤シーンを作る。
その上で警官に協力する理由を作っている。

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