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映画分析ノック⑧『魔女の宅急便』(1989)

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構成表

起「町を探して」
①:キキ13歳で独り立ちの時。魔女の修行をするために箒で知らない街へ。見送る両親。張り切るキキ。空へ。
②:飛行していると天候が悪化。走っている列車の中で雨風を凌ぐことに。しかしキキ、寝てしまう。
③:起きたキキは、遠く離れた海の見える街に着く。一目惚れし、この街で修行をすると決意する。

承1「魔女の宅急便」
④:初めて街に降り立つと、思ったより街の人はすましていて冷たい。警察には空飛ぶことを注意され、トンボにはナンパのように付きまとわれ、この街のイメージは最悪。別の街にしようかな。
⑤:パン屋のおそのさんが忘れ物を届けようとしている場面に遭遇。キキは箒で空飛び、代わりに届けてあげる。その縁でおそのさんのパン屋に住み込むことに。
⑥:パン屋を手伝ううちに「魔女の宅急便」サービスを思いつく。これが私の修行なんだ!と。早速一件の依頼が入る。
⑦:(1)黒猫の人形をプレゼントしたい女性からの依頼を引き受け、キキはジジと共に荷物を預かり空へ。
⑧:配達途中にプレゼントの人形を森の中へ落としてしまう。探していたら間に合わない。そこでキキは、黒猫のジジに人形のフリをしてもらい、宅配する。
⑨:人形のフリをしているジジを助けるため、森に落とした本物の黒猫人形を探すキキ。森の中でウルスラに出会う。黒猫の人形を返してもらう。
⑩:無事にジジを救出することに成功し、そこから宅急便の仕事が軌道に乗り始める。
⑪:(2)重い荷物の宅配、(3)にしんのパイの宅配、の2件の依頼が同時に舞い込む。さらにそこへ、トンボからパーティーの招待が。曖昧な返事をするキキ。
⑫:(2)重い荷物をなんとか完了。すぐさま(3)を受け取るべくお婆さんの家へ向かう。トンボのパーティーに間に合うか。
⑬:(3)にしんのパイがまだ焼けていない。パーティーまでは時間があるから、焼くのを手伝うキキ。出来上がりのパイを届けるが、パーティーまで時間がない!
⑭:にしんのパイを届ける途中で大雨に降られ、なんとか宅配完了。しかし、貰った本人はにしんのパイが嫌いだと言い、おまけに招待されていたパーティーには出席できず。落胆するキキ。

承2「恋の予感」
⑮:翌朝、キキは熱で寝込んでしまう。雨に振られたことと、トンボの招待に答えられなかったことが原因のようだ。おその、考える。
⑯:(4)おそのからの依頼(粋な計らい)で、パンをトンボの家に届けることに。そこでキキとトンボの交流が生まれる。
⑰:トンボの空飛ぶ夢に付き合うキキ。失敗に終わるが2人の距離は大きく縮まる。
⑱:そこへトンボの友達がやってくる。しかしキキは友達の中に入ることができず、つっぱねてしまい、自己嫌悪に陥る。

転「飛べない!」
⑲:ジジの喋る声が聞こえなくなったことに気づき、魔法が使えなくなっていることを自覚。箒で空が飛べなくなってしまった。
⑳:何度も何度もトライするがやっぱり飛べない。おまけに箒も折れてしまった。落胆するキキ。
㉑:そんなキキの元にウルスラが会いにきて、キキを励ます。森のウルスラの家に遊びにいき、語り合うことで、キキは少しずつ元気を取り戻してゆく。
㉒:(5)にしんのパイのお婆さんの家に呼ばれたキキは、お婆さんからお礼のケーキを貰い喜ぶ。しかしTVを見ると、気球船が突風に煽られて、トンボにピンチが迫っていた!
㉓:キキ、急いで現場へ直行。街の人からデッキブラシを拝借し、トンボを助けたいという思いから、再び空を飛ぶことに成功する。

結「やっと一人前」
㉔:トンボを寸前のところで救出するキキ。街の人は拍手でキキを讃える。(魔女が街の人々から認められた瞬間)。
㉕:故郷の両親のもとにキキからメッセージが届く。なんとかやっている、この街が好きになった、と。今日もキキは街の人々のために、宅急便を乗せて空を飛び回る。


映画『魔女の宅急便』分析


■主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は魔女のキキ(13)。
冒頭、キキが丘の上で寝ているところからスタート。


■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
トンボ。飛行愛好会に所属する空に憧れる青年。
キキが街に降り立ち、警官に捕まっているところを助けるシーンで登場(「承」の冒頭④)。


■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
キキが知らない街で「宅急便」を営むと決めるシーン(「承」の⑥)。
これは【見習い魔女が知らない街で「宅急便」を営みながら、人々との交流を通して成長する物語】である。


■物語が大きく転換しているのはどこか
キキが空を飛べなくなるシーン。
トンボとの恋の予感のあと、素直に友達を作れない自分に自己嫌悪。
そこで空を飛べなくなってしまい、悩むキキ。
最終的にトンボを助けたい、という気持ちが実って空を飛べるようになる。


■クライマックスはどこか
気球船の事故に遭ったトンボを、キキが空を飛んで救出するシーン。
・にしんのパイのお婆さんの家に呼ばれたキキは、お婆さんからお礼のケーキを貰い喜ぶ。
・しかしTVを見ると、気球船が突風に煽られて、トンボにピンチが迫っていた!
・キキ、急いで現場へ直行。街の人からデッキブラシを拝借し、トンボを助けたいという思いから、再び空を飛ぶことに成功する
・トンボを寸前のところで救出するキキ
・街の人は拍手でキキを讃える(魔女が街の人々から認められた瞬間)。


■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
・街が魔女に冷たい(人はすましているし、警官には怒られるし、トンボはうざいし)
・宅急便を始めるが、荷物である黒猫の人形を紛失してしまう
・黒猫のジジに人形のフリをしてもらい、人質に出す
・見つけた黒猫の人形が破けていた(ウルスラに縫ってもらう)
・宅急便の仕事が忙しく、トンボが誘ってくれたパーティーにいけない
・雨に濡れながら届けたニシンのパイは、受取人が嫌いだと言う
・風邪を引いて寝込む
・トンボと良い雰囲気になるが、素直になれず思ってもないことを言ってしまい自己嫌悪に
・箒で空が飛べなくなってしまう(箒も折れてしまう)
・ジジの言葉がわからなくなってしまう
・トンボが気球船の事故に遭う


■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・住みたい街を見つける
・パン屋のおそのさんが住み込みで働かせてくれることに
・宅急便の仕事を思いつく
・森に住む画家ウルスラとの交流
・黒猫の人形のフリをしたジジに、犬が優しい
・宅急便の仕事にやりがいを見出す
・宅急便の仕事が軌道に乗る
・ニシンのパイのお婆ちゃんとの交流
・トンボとの恋の予感
・トンボを助けることに成功


■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か
起:13才、家を飛び出すキキ〜住みたい街を発見!降り立つ。
承:街に馴染めないキキ〜トンボとの恋の予感・自己嫌悪
転:空が飛べない!〜トンボに訪れた危機
結:空を飛んでトンボを救出〜街が好きになるキキ


■三幕だとするとどこが分かれ目か
①:13才、家を飛び出すキキ〜住みたい街を発見!降り立つ。
②:街に馴染めないキキ〜空が飛べない!
③:トンボに訪れた危機と救出劇〜街が好きになるキキ


■このストーリーを3行で言うとどうなるか
13歳の魔女・キキが修行のために知らない街へ降り立ち、その街で宅急便を始めることに。宅急便の仕事を通して街の人々と交流し、恋したり自己嫌悪に陥ったり。飛べないスランプを乗り越え、街の人に受け入れられる「一人前の魔女」へと成長してゆく物語。




面白いと感じたポイント

■セリフ

○ウルスラの家
ウルスラがキキの似顔絵を描いている。
 ウルスラ「魔法も絵も似てるんだね。私もよく描けなくなるよ」
 キキ  「本当!?そういう時どうするの?」
 ウルスラ「ダメだよ、こっち見ちゃ」
 キキ  「私、前は何も考えなくても飛べたの。でも今は分からなくなっちゃった」
 ウルスラ「そういう時はジタバタするしかないよ。描いて描いて描きまくる」
 キキ  「でもやっぱり飛べなかったら?」
 ウルスラ「描くのをやめる。散歩したり、景色みたり、昼寝したり、何もしない」
 キキ  「……」
 ウルスラ「そのうちに急に描きたくなるんだよ」
 キキ  「なるかしら」
 ウルスラ「なるさ!さぁ、ほら、横むいて!」
×   ×   ×
就寝前のキキとウルスラ。
並んで布団に入っている。
 ウルスラ「私、キキくらいの時に絵描きになろうって決めたの。絵描くの楽しくてさ、寝るのが惜しいくらいだったんだよ」
 キキ  「(真剣に聞いていて)……」
 ウルスラ「それがね、全然描けなくなっちゃった。描いても気に入らないの」
 キキ  「……」
 ウルスラ「それまでがマネだって分かった。どこかで見たことあるって。自分の絵を描かなきゃって」


■キャラクター
《主要人物》
見習いの魔女・キキ
飛行研究会の青年・トンボ
黒猫・ジジ
パン屋・おそのさん
画家の女性・ウルスラ
ニシンのパイのお婆ちゃん

ーサブキャラー
キキの両親
おそのさんの夫
ニシンのお婆ちゃんのお手伝いさん
トンボの友達たち
黒猫人形プレゼントお姉さん
重い荷物客
警官
白猫
ニシンのお孫さん

👉空飛ぶ魔女の主人公に対して、相手役を「飛行研究会に所属する(空に憧れる)青年」という設定にしたところがGOOD

・キキに興味を持つ理由になる
  →キキとトンボが触れ合うきっかけが生まれる!
・飛行船の事故に繋がる
  →キキが空を飛ぶことで助けるシーンを作るには、青年が自ら空を飛ぼうとする必要がある!

👉副主人公を考える時は…
主人公ができることができない、主人公の特性に「関連する」特性を持つ人を当てるといい。


■構成/ストーリー

・企画メイン「宅急便」のシーンは2時間で計5回
 それぞれの宅配シーンに意味を持たせる。全体の意味としては「街の人との交流」

①:黒猫のプレゼント宅配
(早速ミスの連続、だけどやりがいを感じる!)

②:重い荷物の宅配
(③と立て続けで、仕事が軌道に乗った感。そして時間がない!)
③:お婆ちゃんからニシンのパイの宅配
(お婆ちゃんとの交流はできるが、パーティーに行く時間がない上に雨に降られて風邪をひく)

④:おそのさんの粋な計らいでトンボにパンを宅配
(恋の予感シーンが始まる)

⑤:お婆ちゃんからニシンのパイのお礼ケーキを自分宛に宅配
(そのテレビに気球船の危機が映る)

👉メインの企画「魔女が宅急便を始める」を思いついた時に、
 その設定のシーンを何個入れればよいのか
  →2時間なら5回
  →1時間なら3回
   …がベストかも。

1時間もの3回なら、
失敗→失敗→成功!か
成功→失敗→成功!か、のパターンがあると考えられる


👉キーパーソンとの出会わせ方も「重層的に」がポイント
物語に絡んでくるキーパーソンとして、トンボやウルスラがいる。
キキが彼らと出会う場面は、いつも別の意図が走っているシーンがあり、ついでに出会い「も」見せている。

トンボとの出会い
 街に馴染めないキキ。
 警官にも飛ぶことを注意されている。
 そんなキキのために、トンボは警官を騙す。
 このシーンのメインは「魔女に冷たい街/街に馴染めないキキ」である。
 そんなキキを助ける人、としてトンボを登場させている。
 →のちの恋やクライマックスに繋がる

ウルスラとの出会い
 キキが始めた魔女の宅急便の最初のお仕事。
 運んでいた人形を森の中に落としてしまう。
 落としたものを探していると、ウルスラの家にあるのを発見!
 このシーンのメインは「前途多難な魔女の宅急便」である。
 荷物を落とした先でウルスラを登場させている。
 →のちのスランプシーンに繋がる

👉「別の意図を持つシーン」の途中で、
 「それ以降のシーンに繋がるキーパーソン」を登場させることで、
  物語が「重層的」に動き出す! 

・1時間地点で、1つの「承」が終わるお手本構成
最初の街を探すキキから、宅急便を始め、その仕事で喜びと挫折を経験したこと…までで「承」①が終わり、
「承」②からは、メインが「恋」と「スランプ」に移る。
👉映画用のプロットは、中盤で別のトピックを始めることが勝負の鍵となる。

■小道具
・最初の宅急便が「黒猫の人形」

ジジによく似た人形に設定することで…
 ・森の中にカゴごと落とす
 ・カゴは回収できるも、人形がない
 ・ジジに代わりにカゴに入ってもらい配達
 ・森の中へ人形を探しに行く
という展開が作れた。

別に最初の宅急便が人形じゃなくても成立はするが、
ジジが人質になる面白さや、困難が起きることと評判を保つことを両立させている。
これがジジに似た人形じゃなかった場合、宅配に遅刻して今後の宅急便の仕事が軌道に乗らない!
軌道に乗せるには、遅刻しないこと・任務を完遂することが重要なのだ。


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