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09.色の無い世界

残酷な自画像 学生時代、美術の時間が好きな人は多かったのではないか。2時間ぶち抜きで絵を描いたり、粘土こねたり、鑑賞したりと授業的な授業が行われないからだ。成績至上主義家庭の場合は如何に高い評点を得るかを考えると美術ほどわかりにくいものもないかもしれない。解釈次第で美術作品などいくらでも変わるからである。  そんな美術のなかで、必ず最初に描くのが自画像である。私はこの時間が嫌で仕方なかった。色盲だからだ。私の見える世界は一般的な見え方と比べてシンプルであり、およそ10色程度で

    • 07.エビは躍る、だから食せず

      昭和空間 私は今では稀に見るくらい昭和感の強い家族の元で育った。姉と妹がいて、従姉妹も6人いて全員女のなか、自分だけ男である。祖父からは「お前が強くあれ」と言われ、泣き虫だった坊主少年の頃から強くなるために空手を習ってもいた。泣きながら戦って、市で3位まで勝ち上がった時は両親は才能を感じたかもしれないが、自分はなぜ殴って殴られなければいけないのか疑問だった。  空手を辞めた後も度々「お前は男だから」と教育を受け、別に家族のことが嫌いとかは一切ないのだが、その瞬間はすごい嫌だっ

      • 06.今なんて?と問う眼鏡

        陰陽論争 大学時代に眼鏡をかけた人に出会った。彼はいかにも理系の人間であり、多分中国に3000万人くらいいる見た目をしている。そんな彼は、ゲームも漫画もバラエティ番組もドラマも映画にも精通していない。それはもう期待とは真反対。アイスブレイクでその辺の話を狙うのはやめておいた方が良い。彼には通じない。通じるのはダーツとEDMと中指を立てる話。そんな彼をみていると、一人で陰陽を両立しているので多分陰陽師の家系なんだと思う。なんかそんな気がする。  小さい頃に必ず通るものがいくつか

        • 05.愛、哀、藍、会

          リズム&暴力 私は大学時代にテニスサークルに所属していた。明治大学のクライス?みたいなサークルが事件を起こして、その数年後に入学したのもあってかテニサーへのイメージが悪過ぎて最初入るか迷ったものの、自分はテニスくらいしかできないし友達できそうだから入った。後悔はない。  案の定、飲み会はコールまみれで隣の人の声も聞こえない時もあるくらい煩いものだった。1年生の頃はその瞬間も大好きだった。しかし、そもそもお酒は好きではないし流石に飽きてくる。当時付き合っていた彼女に「なんでそん

        09.色の無い世界

          04.タトゥー論

          「ゥ」の使い道 私は今まで何度かタトゥーを入れたいと思ったことがある。崇高な理由はない。なんとなくファッション性が上がりそうだから。(そもそも上下するものかわからない)けれど日本社会ではまだまだ逆風のため行動には移していない。  一時期思っていたのが、言葉遊び的にタトゥーは英語表記でないとイケてないかもしれないということ。「タト」って最早「外」だし、ソトゥーに見えて仕方がない。助っ人外国人みたい。あと「ゥ」って他どこで使うのか。元々日本語の概念的に小さいウはないと思うので、そ

          04.タトゥー論

          03.金の薔薇

          フワフワな夢 私は私立文系の大学を卒業している。1年浪人し、1年海外で過ごしたため院卒と同じ年齢で社会へと出荷されたのだが、そんな私も以前は理系人間であった。中学生の時、大嫌いな理科の先生が授業中にポロッと、「大学時代に青い薔薇の研究をしていた」と言っていたのを聞いた。この人に青い薔薇が作れるなら自分は金の薔薇作れるという謎の対抗心からいつの間にか自分の夢は金の薔薇を作ることになっていた。  高校2年生の終盤にもそのことは覚えており、金の薔薇を作るために文理選択は迷わず理系を

          03.金の薔薇

          02.暇とカバンと夏休み

          夏の服 01でノスタルジーとの戦いについて述べたので、過去側への延長線上として思い出をツラツラと記したいと思う。私は大学時代とにかく服が好きだった。買うのも着るのも売るのも。それは憧れとかカッコ良いと思った人を真似るという形から入るスタートだったが、今思えば外見の自信の無さも一因としてあったのかもしれない。とにかく大学1〜2年くらいまでは服を買いまくった。ケーキ屋やガソリンスタンドのアルバイトで稼いだ賃金のほとんどがZOZOTOWNやメルカリに消えていった。Tシャツだけで50

          02.暇とカバンと夏休み

          01.ノスタルジーとの戦い

          ホラガイの音 仕事に忙殺されていることを言い訳に、文章を書くことも読むことも億劫になっているが、お盆の力を借りて最近の思いの丈をツラツラと書いて見ようと思う。初回は「ノスタルジーとの戦い」と銘打ったものの、これは直近強く感じていることで、特に社会人は誰しもが感じたことがあるのではないかと思う。いわゆる懐古である。  人間の記憶の性質上、過去の事象は美化されるというのは何度か聞いたことがある。元カレ・元カノを筆頭に(ここは如実に個人差が出そうだが)、小学校時代の駆けずり回った記

          01.ノスタルジーとの戦い