銀行の民間部門に対する信用創造が与える経済のプラスの影響に関する研究論文集

銀行の民間部門に対する信用創造が経済にどのような影響を与えるかについての国内海外論文集です。
どうも信用創造の量と経済発展やGDPの関係を調べた経済学論文は少なく、まだ数えるぐらいしかないようです。

ちなみに日本は↓のような状況で信用創造が30年間停滞しています。

Bayoumi, T., & Ola, M. (2008). Credit matters: Empirical Evidence on U.S. Macro Financial Linkages, IMFWorking Paper No. WP/08/169, July.

信用が GDP の約 2.5% 減少すると、GDP の水準が約 1.5% 低下することがわかった。

Baliamoune, L. (2008). Financial development and income. International Advances in Economic Research, 14

北アフリカの3カ国をサンプルとして、4つの経済比率を用いた金融の発展と実質生産の関係を、1960 年から 2001 年にかけて議論している。1960 年から 2001年までの期間に,エジプト,アルジェリア,モロッ コの北アフリカ 3カ国を対象としたサンプルについて,4 つの経済比率を用いた金融の発展と実質生産の関係を論じている。彼らは、その関係を検証するために、VECM、共積分の方法論を採用している。その結果、金融の発展が経済成長をもたらすことが示された。

Eatzaz, A., & Fuller, M. A. (2009). Financial Sector and Economic Growth: An Empirical Analysis of Developing Countries.

GMM 法を用いて、35の発展途上国をサンプルとして、信用創造が経済成長に果たす役割を調査し、民間部門に対する国内銀行の信用が増加すれば、それは労働者一人当たりの生産高(労働者の生産性)の増加につながり、結果として長期的に経済成長を高める。

Relationship between Bank Credit and Economic Growth: Evidence
from Jordan(2016) Izz Eddien N. Ananzeh

実質GDPと説明変数である総銀行信用(TBC)、農業部門向け銀行信用(CFA)、工業部門向け銀行信用(CFI)、建設部門向け銀行信用(CFC)、観光部門向け銀行信用(CFT)との間に長期的な関係が推測されることが明らかとなった。TBC、CFA、CFI、CFC、CFTはヨルダン経済の発展と長期的な関係にあることが示唆される。
グランジャー因果性検定では、ヨルダン経済の農業および建設部門において、経済成長から銀行信用への因果関係があることが結論付けられた。また、経済発展と建設業への与信の間には、双方向の因果関係があることが示された。

植田 宏文(2009) 実物経済活動におけるマネー・ストックと総信用量

国民所得Y と最も安定した関係にあった金融指標は総信用量 L であることが確認された
企業は,銀行借入(社債発行)のかたちで必要資金をファイナンスし投資を実行する。その投資が Y と密接に関係しているため,最終的に信用量の水準が投資水準を規定することとなり,総信用量 L が Y と最も安定した金融指標として機能することとなるのである。

日本の信用創造が止まった1992年はBIS規制が始まった年で、低下し始めた1998年は金融ビッグバンの年(早期是正措置、不良債権処理)ですね。


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