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発売わずか3ヶ月で30万本の大ヒットを生んだsöpöはデータから生まれたという話

ファミリーマート限定で販売しているsöpöというブランドがあります。söpöはNOINが作っているブランドで、先日発売わずか3ヶ月で30万本の大ヒットとなっているというリリースを出したところですが、今回はそのsöpöがどのような経緯で作られたのかという点について解説したいと思います。解説なんて偉そうに言っていますが、開発に私はまったく絡んでいませんが…。マーケティング視点での施策設計や、なにより企画段階での女性からの反応をみてもsöpöは自信はありましたが、文字通り社運を賭けたプロジェクトで、ちゃんとヒットするまでドキドキが止まりませんでした。

↑ファミリーマートからのリリースです。

伊藤忠商事との業務提携

söpöの話の発端は伊藤忠商事との事業シナジーのブレストから生まれています。事業会社から出資をする場合、彼らの目的はVCとは違い、事業提携です。「事業におけるシナジーがあるのか」という点が一番の論点になります。その中で伊藤忠グループにある「ファミリーマートと何か新しい取り組みができないか」という観点で議論してきました。

コンビニはこれまで店舗拡大を続けてきましたが流石にそろそろ拡大路線としては頭打ちになっています。また、一般的にコンビニには若い人が来ないという点も課題です。来ないというのは大げさな表現かもしれませんが、来てもなかなか買ってくれないというのが正しいかもしれません

自分の経験を顧みても、かつては雑誌を読みに行ったりしていましたが、いまでは雑誌自体があまり読まれなくなったからか、雑誌コーナーにもあまり人はいません。

データを用いてヒットをつくる

「コンビニに若い女性を呼びたい」シンプルにこれがファミリーマートの狙いでした。「若い女性であればコスメで呼べる(はず)」というのが私たちからの提案でした。過去のnoteでも触れていますが、NOINユーザーは決済のためにコンビニに行っています。そしてそれは彼らが求める若い女性です。

私たちのビジネスのコアは化粧品ECですが、ECにおける化粧品の販売データから調査、分析を行うという事業も行っています。私たちのデータの価値はこれまであまりデータを使ってこなかった化粧品業界に対し、「データを用いればマーケティングは効率化できるし、ヒット商品も作れるはず」という点に尽きます。

ただ、これはいくら言ったところで実績がなければなんの説得力も持ちえません。私達自身がデータを用いて企画した商品でヒットを生み出す必要がありました。「間違いなく優秀な人」であっても実績がなければ誰も信用しないのと同じです。

仮説「コンビニでコスメは売れない」

これまで、コンビニ全体での実績としてトレンドコスメが売れた実績はあまりありません。(定番品で売れているものはちょこちょこありますが、目的買いで来るようなものはほぼありません)

①コンビニはトレンドのコスメを売る場として不適切

②コンビニに適したトレンドコスメがこれまで売られていなかっただけ

私たちは②の仮説に賭けるわけですが、事実としてこれまで前例がないので①が正しいんだとするとどうしようとなかなか不安ではありました。ただ、調べていくうちに②の仮説が正しいだろうということが徐々に分かっていきます。

コンビニでコスメを買う理由

コンビニでなぜコスメが売れないのか。これは色々な手法で調査を試みましたが一番の理由は欲しい物がないというシンプルなものでした。また、商品がないのでコスメを買う場としてそもそも認知もされていませんでした。欲しい物がない=>場として認知されない=>売れない=>売れない場だから商品が充実しないという負のフィードバックが回ってしまっています。

「売れない」とはいえ、売上は0ではありません。では、コンビニでコスメを買う場合何を買っているのでしょうか。聞き取りやアンケートなどで調べまくった結果、コンビニコスメには緊急需要しかありませんでした。

急な泊まりや忘れ物などです。急に宿泊することになり、化粧水が必要、急いで支度をしたために眉毛を書き忘れたのでアイブロウが必要。という「必要」を「緊急」で満たすための場でしかなかったのです。裏を返すと「欲しい物を買いに」行く場としては全く認知されていないのがコンビニでした。

実際、売られている商品を調べても、ブランド自体はドラッグストアでも販売されているいわば「どこでも買える」商品です。これではコンビニでコスメを買うのは「必要だから」でしかなく、目的を持って来店させることは難しいです。

söpö = メイクアップブランド

söpöはメイクアップのブランドです。「コロナで外出しないからメイクが売れなくなってスキンケアが売れている」これはよくメディアでも言われていたことです。「おこもり美容」などという言葉も生まれたくらいです。しかし、私たちはsöpöをメイクアップのブランドとして立ち上げました。

余談になりますが、個人的な考えとしてマーケティングにおいて距離は非常に重要なファクターだと思っています。一番距離が離れているものが一番信頼がなくても買ったり試すのではないでしょうか。ここで言う距離は身体からの距離です。サプリメント≫スキンケア≫メイクアップの順番で信頼(≒ブランド力)が必要なのではないかと思います。直接肌に触れるものなので信頼が重要なのは間違いないですが口に入れるのにわけわからないものは嫌だし、浸透させるスキンケアはいいものを使いたい。でもメイクなら落とすしかわいいのがいいかな。というような心理があるのではないかと思います。これはイメージの問題なので実際の価格や品質と必ずしも合致するものではありません。(これは私の考えなので間違ってたら教えて下さい)

何をつくるか(コロナ禍における商品企画)

データから何が売れるか、何がはやるかについて分析できる。これが私たちのデータのウリであることは先にも説明しました。söpöの企画で用いたデータはメイクアップ全体の需要が落ちていましたが、内訳においてリップの需要が極端に落ち、目元の商品の需要が落ちていませんでした。下はコロナ前(2019/11/1-2020/3/31)と1回目の緊急事態宣言期間(2020/4/1-2020/5/31)におけるNOINでのカテゴリ別の商品価格の比率です。コロナ前を1としてどの程度変化があったのかという形にしています。

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リップ、リップクリームが大きく価格が落ちている(買うものが適当になっている)のにアイブロウやマスカラは価格がほぼ変わっていません。NOIN上の商品ラインナップが変わったかというと多少変わっていますが全体的に高価な方向になっているのは間違いありません。

マスクをしているのでリップは適当でも露出する目の周りはしっかりメイクする。また、データから出しにくいのですが、売れる商品が明確に派手めなモノの人気が出ているのも分かっていました。このようなデータ(他にも色々参考にしていますが)からsöpöの第一弾は目元に絞って商品を企画しました。

söpöのウリ

企画において、こだわった点は5つで①ハイクオリティ、②ジャストサイズ、③プライス、④トレンド、⑤エクスクルーシブです。

①ハイクオリティ

ここが一番こだわっている点ですが、söpöの品質はかなり高いです。利益を出すということよりもとにかく高品質であることにこだわって作っています。söpöを使ってよかったと思っていただけるよう徹底的にこだわって企画されています。

②ジャストサイズ

カラーマスカラでこれまで販売されていた商品は「試すには大きすぎるし高すぎる」ここに小ぶりで品質のいいトレンドカラーのマスカラを投入しました。アイライナーも同様です。

③プライス

販売場所がコンビニであるというところで価格もかなり抑えています。この価格もコンビニという配荷面の大きさ(製造ロットの大きさ)により実現できています。少量生産でこの価格(1000円程度)は絶対に不可能です。

④トレンド

ここも非常に重要ですが、トレンドをガッチリ押さえた色使いやパッケージというのにもこだわっています。ダサいのはNGです。

söpöは商品ラインナップをみていただければわかるように、アイブロウ以外定番色の黒やブラウンはなく、はっきりとした発色のものばかりにしています。これはトレンドを押さえたメイクブランドであるということの表明でもあります。

⑤エクスクルーシブ

そしてsöpöはファミマ限定販売です。söpöはファミマ以外の場所ではNOINのECですら買えません。ファミマに行かないと買えない。売り場が限定されているということでファミマに行く理由を作りました。

偉そうに書いてますが商品企画に私は全くからんでおらず、CEOの渡部管轄で社長室という組織で作っています。戦略的にやりながらモノがあるの納期との戦いもあってめちゃくちゃ大変そうでした。

化粧品EC PFであるNOINがコンビニに出た理由

結果大ヒットとなっているsöpöですが、化粧品ECがメインである私たちノインがなぜコンビニという売り場に進出したのかについてもお話します。

化粧品のEC化率は非常に低く6.00%(2020年電子商取引に関する市場調査 P.52)です。これは今後大きく伸びてもなかなか50%とまではいかず、5-10年位のスパンで考えても30%程度までいけばいいところではないでしょうか。裏を返せば、ECが進んでも70%がオフラインとオフラインの重要性は依然として残ることになります。つまり、化粧品のEC化率は今後大きく伸びてもなかなか50%とまではいかず、30%程度までいけばいいところではないでしょうか。オフラインの重要性は依然として残ることになります。

ユーザー接点としてオフラインにユーザー接点を持っておくことは超重要なポイントです。全国に17,000店舗という圧倒的な場はとても魅力的です。売り場を押さえてフィジカルにユーザー接点を持つというのはNOINのプレゼンスを上げるために絶対にやるべき施策と考え、今回のsöpö企画に至っています。また、ドラッグストアも20年前はコスメを売る場としてはいまいちだったけど最近になって伸びまくっていることを考えると、認知、認識を変えることでコンビニをそのような場とすることはできると思っています。

売れるためにやったマーケティング

詳細は言えないことも多々ありますが、かなり綿密に仕掛けを仕込みました。おかげさまでメディア掲載も多く頂いていますし、初速の売上もしっかり作れています。ベーシックな施策からややトリッキーなものまで効果測定ができる形を設計して盛り込みました。マーケティングのご相談などいただければ色々とデータや事例を用いてお話します。

かんたんに触れられるところでいくとモデル選定です。今回モデルとして椎名美月さんを起用しています。ブランド認知を取ろうとして有名すぎるモデルや芸能人を使ってしまうことは芸能人のプロモーションにしかならないこともあります。設計次第では効果あるプロモーションになりえますが、今回の目的はNOINとsöpöをつなげることなので、有名すぎるモデルは不適です。ブランドイメージに合致しているモデルとして椎名さんにお願いしました。実際かわいらしさや透明感もピッタリでとてもいい選定だったとおもいます。

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一瞬で理解させるという意味において統一されたコピーも重要です。「ひとくちだけ、試してみたい、色がある」はコピーライターの小藥元さんにご協力いただいてつくりました。おかしやちょっとした食べ物のイメージがあるコンビニという場所とsöpöのこだわりであるジャストサイズトレンドのかわいらしさを表現しています。余談ですが、コピーはひねりすぎると企画会議では盛り上がるんですが、実際の場ではイマイチ伝わらないというのはよくあるので要注意です。

söpöの仕掛けや他のコンビニから顧客を誘導する施策については以前のnoteに記載していますのでよろしければどうぞ。

新商品も発売

第一弾が無事大ヒットしたので、第二弾も3月30日から発売しています。こちらも色々とこだわって作っているので是非おためしください。

そんなこんなで積極採用中です。募集しているのは下記ですが、それ以外でもご興味あれば是非ご連絡ください。



サポートいただいた場合とくに収入とするよりは書籍購入やセミナー参加等してその内容をまとめるなどの方法で還元予定です。