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もう二度と会えなくなってしまったあの店に〈04〉

馴染みの店がなくなってしまうというのは、大袈裟に言うと親しい友人がいなくなってしまう感覚と似ている。辛い時にいてくれたあの夜。心躍った夏の思い出。共に過ごした時間や空気感は、その場からなくなってしまうともう二度と会えない。悲しくて寂しくて、でも自分一人にはどうすることができない歯痒さが残る感覚が。

今回の新型コロナ関連の倒産が12日、244件になった。中でも一番多い割合を占めているのが飲食店だ。いくらテイクアウトや配達を勧めても、利幅の大きい夜の営業ができないことや人件費との兼ね合いが難しいことが原因としてある。

自分が行きたいと思っていた居酒屋の閉店を知ったのは先月末だった。理由はコロナによるものだけではなさそうだが、結局足を運ぶこともできず、いなくなってしまった。「あの街の美味しい焼き鳥屋さんは大丈夫かな」「よく友達と訪れていたあの居酒屋さんはどうなったかな」、知らないだけでいつの間にか消えているのが一番怖い。

中国でも現在、映画館の閉鎖が相次いでいる。映画好きな人からしたらお気に入りの映画館が潰れるなんて、なんて悔しいことだろう。


人間も店も、永遠に必ずそこにあるわけではないことを今回改めて実感した。「行けるうちに行け」とはよく言うが、関係が深ければ深いほど失った悲しみは大きくなるだろう。自分一人にできることは少ない。だが、今もなお耐えている数多くの店に微力ながらも応援をし、あとはひたすら願うばかりだ。




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