大切な人が、手を伸ばせば、届く距離にいる幸せ
この世界で一番ほしいものは『自由』
子供の頃からずっと、『自由』がほしかった。
酒飲みで、感情的で、仕事をころころ変える父。
そんな父と一緒であるために、仕事と家事で息つく間もないほど忙しい母。
いつも家は窮屈だった。
早く家をでたい。
好きな時に、好きなところで、好きなことをしたい。
誰かの機嫌に左右される生活なんてうんざりだ。
『自由』がほしかった。
やっと『自由』を手に入れた
大学を卒業後、関西の実家を出て、東京で働き始めた。
はじめは会社の寮にいたのだが、半年後、1人暮らしを始めた。
やっとやっと手に入れた『自由』
自分でなにもかも決められる。
こんなに素敵なことが他にあるだろうか。
その後、退職し、アフリカでボランティアをすることになった。
学生の頃から、ずっとやりたいと思っていたことだったので、
試験に通り、アフリカに行くことが決まって、心の底から嬉しかった。
ここからがスタートだ、そんな気がしていた。
恋人の存在できづいたこと
しかし、この時の私には交際している彼がいた。
試験に合格後、アフリカに行くまでの半年間だけ、との約束でつきあうことになった彼だった。
半年が経ち、アフリカに出発する頃、「帰ってくるまで待つよ」と彼は言ってくれた。私は、自分でも戸惑うくらい、彼に惹かれてしまっていた。
私は自分の意思でアフリカに行った。全て自分の選択だ。親も何も、私を縛るものはなにもない。子供の頃から、のどから手が出るほどほしかった『自由』の中に私はいたのだ。
それにもかかわらず、私は彼が恋しくて、寂しくて、苦して、つらかった。電話で声を聞けばきくほど、メールで連絡をすればするほど、胸がしめつけられる思いがした。
だれかを好きになることは自由だけど、
だれかを好きになったら、自由でなくなる。
その人への思いに心が囚われてしまうから。
人を好きなるって、『自由』じゃなくなることなのかな?
私がこの世で一番大事だと思っている『自由』が、
彼といたらなくなるのかな?
今、『自由」より大切なこと
あれから10年。
私は今、日本にいて、夫になった彼のそばにいる。
夜寝るとき、
朝起きたとき、
いつも隣に彼がいる。
今、私には以前のような自由はない。
子供が3人いるし、するべきことはたくさんある。
好きな時に、好きなところで、好きなことはできなくなった。
でも、今の私は、『自由』を求めていはいない。
『自由」よりも、大事なものができたからだ。
大切な人が、手を伸ばせば届く距離にいる幸せ。
毎日、彼がそばにいて、手を伸ばせば握り返してくれる。
それが、今の私にとって、一番大事なことだ。
なにが今この瞬間、一番大切か、守りたいか、当然、人によって違ってくると思う。仕事だったり、恋だったり、場所だったり。それぞれを比べて、どちらがいいというものでもない。ある1人の人にとっても、同じとは限らない。だからこそ、今のこの気持ちを大事にしたいと思う。
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