魔女の生きかた/『西の魔女が死んだ』梨木香歩
魔女というのはいったい何なのだろうか。
“ファンタジー”に目がないわたしは、当然のように「魔法」がすきだし、それを使える「魔法使い」にも憧れるし、とりわけ同じ性別だからか「魔女」への憧れは気が付いたときから持っていた。
とはいえ、単純に「魔法」が使える女性の「魔法使い」だから「魔女」という感覚にはならないのはわたしだけだろうか。
「魔女」にはもっと神秘的で、もっと魅力的な何かを感じてしまう。
浅い知識なりにも魔女狩りについては本を読んでみたこともあるし、何年か前には『魔女の秘密展』なるものにも足を運んだことがある。
それでも、魔女というのは結局何だったのだろうかという結論を自分なりにも出すことができないでいる。
そんなときに、この本を読むといつも少しだけほっとするのだ。
この本には「魔女」と聞いて、想像するようなドロドロとした鍋をかき回したり、魔法をたっぷり使ったシーンも、キャラクターも、物語も登場しない。
それでも、この『西の魔女が死んだ』に出てくる魔女、主人公まいのおばあちゃんが生活しているスタイルは魔女としてのひとつの完成形だなあとしみじみ思わせてくれるのだ。
魔女ってどうなったらなれるの?と聞いたまいにおばあちゃんはこう言う。
魔女になるためにも、いちばん大切なのは、意志の力。
最初は何も変わらないように思います。そしてだんだんに疑いの心や、怠け心、あきらめ、投げやりな気持ちが出てきます。それに打ち勝って、ただ黙々と続けるのです。そうして、永久に何も変わらないんじゃないかと思われるころ、ようやく、以前の自分とは違う自分を発見するような出来事が起こるでしょう。
意志の力がとても弱くてがっかりしてしまうことが多いけれど、そんなの当たり前で変わるどこかのタイミングまでわたしは我慢できていなかったのだなと恥じた。
続けられなくなってしまったものに対しては投げやりになってしまいがちだけれど、きっとおばあちゃんなら「それならまた何度だって挑戦してみればいいでしょう」と言ってくれる気がする。
続けることは難しいけど、でもきっと一歩踏み出すことのほうが難しいから。
おばあちゃんから学ぶことがとても多く、だからこそラストはとても切なくなってしまうのだが、まいのぽつりとこぼす言葉も心に残していくものが多い。
この物語は学校に行けなくなってしまったまいが、おばあちゃんの家でしばらく過ごすなかで起きたことが描かれている。
そのなかで、まいがどうして学校に行けなくなってしまったのかをおばあちゃんに話すシーンが、いつまで経ってもわたしは頭から離れなかった。
簡単だよ。みんなでだれか一人を敵に決めればいいんだもの
それから、おばあちゃんとの生活のなかで起きる小さな事件。
その真相は結局明かされないまま終わってしまう。それに、隣人との関係性も。結局まいにはわからないおばあちゃんと彼の間には何かがあるのだろう。
それも含めて、考えることが魔女になることへの一歩なのかもしれない。
初夏から、今のように猛烈に暑い夏がやってくるとふと思い出して手に取るこの物語。
きっとこれからも何度もおばあちゃんの言葉に励まされていくんだろうなあ。
魔女のこと。
あちこち首を突っ込んで調べているからこそ、いつか自分なりの魔女の姿を結論づけたいし、あわよくば魔女になりたいし、まだまだ魔女への興味はつきそうもない。
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