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旅立ちの日に

今月25日、双子の甥と姪が小学校を卒業した。

4月から2人が通う中学校は、町田市内にある僕の母校だ。

僕が中学を卒業したのがちょうど2000年3月。21年前の話である。僕の2人の兄も同じ中学校を卒業している。

21年という歳月にも驚くが、血の繋がった甥と姪が自分と同じ中学校に通うと思うと感慨深いものがある。

「おじちゃん、中学の卒業アルバム見せて!」

「わたしも見たい!」

先月、義姉と一緒に家に遊びに来た甥と姪が僕に言った。

自分たちが通う中学校ということもあって気になったのだろう。今では制服もジャージも時代に合わせて様変わりしているらしい。

それにしても、最後に中学の卒業アルバムを開いたのはいつだったか。

こうして誰かに見せてくれと言われない限り、開かない気がする。

同級生たちの若々しい顔写真が並んでいた。甥と姪の前でページをめくるたびに懐かしさが込み上げてきた。

甥はさっそく聞いてくる。

「おじちゃんどこ? ねー、おじちゃんの彼女だった人は誰?」

「ねー教えて!お願い! おじちゃんの彼女、教えてよー!!」

しつこく聞いてくるのはさすが年頃の少年である。

分かるぞ、その気持ちは。

彼女ができたのは中学2年生の時だ。違うクラスの子だったが、仲のいい共通の女友達が互いの気持ちを受け持ってくれた。いわゆる、恋のキューピットである。

ある日の放課後、その子を屋上に繋がる階段の踊り場に呼び出した。恋のキューピットである友人のお陰で、僕の告白は成就した。

しかしそれ以降、学生生活での恋愛はなかなか上手くはいかない。

当時、直接告白する以外に電話で伝えるケースもあった。仲の良い男友達は、自分と他の友人らが一緒にいる時に電話で好きな子に告白していた。

当時はまだ携帯が普及しておらず、電話となると自宅に電話をかけることになる。僕も経験がある。好きな子の母親が電話を取り次いくれるまでの間。耳元で保留メロディが流れるあの時間のドキドキ感は言葉で表現できない。



義姉が、甥と姪の小学校の卒業式で撮った動画を送ってくれた。

そこには間隔をあけて起立し、マスク姿の卒業生たちの姿があった。

やがてピアノの伴奏が始まった。合唱曲「旅立ちの日に」だった。

最後の2年間は同じクラスだった甥と姪は、隣同士で立っていた。

顔の半分は見えないが、マスク越しから体育館中に響き渡る卒業生の歌声に涙腺が緩んだ。妻は隣で泣いていた。

「旅立ちの日に」は、僕が中学校の卒業式で歌った合唱曲でもある。

甥と姪の2人が中学生となり、どんなふうに成長していくのか楽しみだ。

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