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呻吟

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自分の思想が滲み出たフィクション小説、『呻吟』です。 さとり世代の呻吟と思春期の葛藤を描く、ユース・サスペンスドラマ。 呻吟は”しんぎん”と読みます。葛藤の類義語です。
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#わたしの本棚

【呻吟】理の日

【呻吟】理の日

 約束の日前日。寝床にて、急に黒いナニカに襲われた。
 翌日で、彼とは二度と会えなくなるのだろうか。他人事のようだが、私が殺すことになるはずだ。
 彼が苦しむ姿を見たくはなかった。自殺同様、人を簡単に殺せるとも思えなかった。
 原因はわからないが、殺すという行為はとても恐怖に満ちていた。殺したくなくなった。

 当日、発表直前のアレと似た恐怖心が脳を支配していた。殺害方法や道具の準備を、まるでして

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【呻吟】 ユイの戯言Ⅰ

【呻吟】 ユイの戯言Ⅰ

 ここ砂丘では、時間の経過が早い。正しくは砂丘とも呼べないのかもしれないが。
 ほんのりと暖かい白のみが広がる箱。
 ある一定の距離を進むと、見えざる壁と対峙することとなるこの異次元空間は、箱である。
 広がる砂の真上には、古今東西あらゆる『美』を寄せ集めた黒い天井が存在する。唯一とも思われる丘の、隆起した頭に腰を掛けると、一望を楽しむことができる。
 砂に美しさを見出すこと、9ヶ月。9ヶ月とは、

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