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【連載小説】ガンズグロウ vol.14「コミフェス」

夏と言えば……

そう、コミフェスだ。


私は興味ないので全く行ったことはないんだけど、タツキが俄然張り切っている。

ガンズグロウのチャットでもその話題が出た。

ゆらぎは遠方なので行かないらしいが、かなり興味があるらしい。

みなもはもうどこを巡るか決めたらしい。


タツキに誘われる。

「さやかちゃんも絶対楽しいから、一緒に行こうよ!」

私はこの笑顔に弱い。

「うーん、じゃあ行こうかな?」

この返事を後に後悔することになろうとは、知るよしもなかった。



コミフェス当日。

朝6時起床。

6時って、なにかの実習じゃないんだから……


7時にタツキの家に集合。

初めて会う、みなもだ。

みなもは華奢で透き通るような少年だった。

「初めまして、さやかさん!」

人懐っこい笑顔をみせる。


しかし、みんなの格好が異様すぎる。

いつものシャツは変わらないが、いつもより大きいリュックに、キャップ帽子にタオルを首に巻いている。


「さやかちゃん、日焼け止めはしてきた?」

「うん、一応……」

「タオル、持っていったほうがいいから、貸すよ」

タオルねぇ……

「ありがと」

一応借りておく。

「あと、帽子は持ってきてないの?」

「帽子?ないけど」

「帽子もあったほうがいいから、貸すよ」

「えっ、でもこの格好に帽子とかって……」

「いいから、いいから」


かくして私たちは出発したのだ。

電車に乗ると、今日はみんな同じ格好。

不思議に思ってると、タオル組はみんな同じ駅で降りた。

なんなの?


会場に着いて私は悟ることになる。



暑いなか、何時間も並ぶ。私たちより早く来た人の数の多さに驚く。

炎天下、アスファルトの上で何時間も待ち続ける。

この時にタオルと帽子のありがたさを知った。


よこの芝生の上で暑さを避けていたら、

「芝生の上には乗らないように」

と注意を受けて、また列に並び直す。


こんなことならついてこなきゃよかったよーー(泣)


そんな私を励ましてくれるタツキ。

私はだいぶ限界に近かった。



やっとのことで建物内に入る。

すると、タツキが

「走るよ!」

と言いいきなり走り出した。

まず一つ目の本を入手するために、また並ぶ。

「ねえ、みなもは大丈夫なの?」

息を切らして言う。

「みなもとは最後の時間に待ち合わせ場所を決めてあるから大丈夫!」

一冊入手したら、次のサークルまで走る。

コスプレ女子がいたら、必ず写真撮影。


そんなことを繰り返していたら、バテてしまった。


「頑張って!とりあえずあと5サークルだから!」

訳のわからない励ましを受けて、私はまた走る。

なにかにとりつかれた者のように。


一通り回りきったのか、タツキが止まった。

「よーし、今年も制覇!」

きけば、とあるゲームをネタにした本を集めきったらしい。

リュックがずっしり重そうだ。両手に紙袋を持っていたので、一つ持ってあげた。


「どんな本か見てもいい?」

「あー、それはちょっと……」

「いいじゃん、見せてよ」

ページをめくっていく度に、私の青筋がたつのがわかる。


「お前ら、こんな本買うためにあれだけ並んでたんかいっ!!」

「普通のもあるんだよ、ほら!」

一生懸命にフォローするが、フォローにならなかった。


時間がきて、みなもを待つ。

ところが、みなもは全く姿を見せない。

心配になり、携帯を鳴らす。

すると、

「タツキさぁーん、僕売り子するはめになっちゃって。ともかく来てください!」

「売り子?なんでまた…」

サークルにつくと、みなもが女装して売り子をしていた。

「頼まれたら断れなくて……」

「行きたいところは全部回れたの?」

「はい、最後にここに来たら、人員不足とやらで……」

そんなやり取りをしていたら、サークルの人がきて、封筒を渡してきた。

みなもは着替えに行った。



封筒の中身は……一万円!

みなもは大喜びだった。


私は……朽ちて果てた。

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